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第一章 12

12

お姉ちゃんの気配が変わった。

そう認識したのは、術式を唱え始めた時からだった。一小節毎に何かが膨れ上がっていくのを感じた。剣を砕かれた瞬間は驚愕を隠せなかったけど、そんな驚愕を覆い隠すほどに、その何かが不味いと感じ、力任せの蹴りを叩き込んだ。

しかし、瓦礫の山に突っ込んだお姉ちゃんから、嫌な気配が消えることはなかった。直後、空気を前方に圧縮しながら、飛翔する物体。これも嫌な感じがする。

寸での所で体を捻り、それを躱すと、それはそのまま地に果てまで飛翔し、後に残ったのは膨大な衝撃波だけだった。

「な……に……?」

すぐさま、神葬を取り出すと、それが射出された地点、お姉ちゃんがいる場所を見る。既に砂埃は先ほどの攻撃で消え失せていて、お姉ちゃんと目が合う。すると、お姉ちゃんは少し息を吐き、こう言った。

「先に言っておくけど、多分、この神葬は手加減が出来ない。あんたが手を引いてくれないと、手足の一、二本持って行っちゃうかもしれない。だから、お願い。私にあんたを救わせて」

確かに、さっきの威力は馬鹿げていた。しかし、見た感じで良いのなら遠距離型の神葬だ。近接に持ち込めれば、あの威力だ。自分も巻き込むのを恐れて使えない筈。これ以上、お姉ちゃんにこんな戦いをさせたくない。

私は、お姉ちゃんの言葉に何も返さずに、真っ直ぐ跳躍し、懐に飛び込む。お姉ちゃんもそれくらい予見していたのか、驚愕は見せないが、武器のないお姉ちゃんに防ぐのは不可能。それでもお姉ちゃんは足掻こうというのか、足を蹴り上げると、地面がめくれ上がり、視界を覆う。しかし、この程度で、これほどの至近距離を外すわけがない。

貰った!!!

剣の刃を返し、峰で全力で打ち込んだ。切れなくとも、少なくない数の骨が砕けるはず。これで戦闘不能になって、私が先に進める。

しかし、剣を握る手に、返ってきた感触はお姉ちゃんのそれではなかった。いや、そもそも、お姉ちゃんに届いてすらいなかった。

剣は、お姉ちゃんの蹴り上げた地面によって阻まれていたのだ。

再びの驚愕。だが、それでも剣に全力で力を加えると、土の盾は砕け散った。破壊は出来る。けど、強度が半端じゃない。どう考えても、通常の土塊なんかではない。

物質の強度を底上げする神葬?

いくら訝しんでも、情報が足りないため、これ以上の詮索は出来ない。それに、それだけならどうにかなる。

 図らずも剣を振り切ってしまい、隙が出来る。が幸い、お姉ちゃんは後ろに飛びのいており、カウンターはなかった。

 無意識に息を吐く。剣を握る手を一度脱力し、握り直す。

 腰を落とし、大きく息を吸い込む。

 バッッッッッッ!!!!!

 瞬転。縦に振り下ろした剣が斬撃を飛ばす。直線上の全てを断裂し、その先のお姉ちゃんを捉える、

 凄まじい爆音。残ったのは、深々と切り裂かれ底の見えない亀裂と、立ち込める砂埃だけだった。

 そして、爆心地からの反撃が始まる。


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