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海崎白人は思考を止めない  作者: 伊鮫秋人
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5.海崎黒人の死的因果律決定論想(2)

5.海崎黒人の死的因果律決定論想(2)

海崎黒人。故・十八歳。

妹の海崎白人とは八歳離れている。

白人が生まれた時俺は小学三年生だった。だから自分に妹が出来たって事は自覚できていたし、単純に喜んだ。

今思えば白人の変人っぷりは四歳辺りから片鱗を見せていた。

「ねえねえ、お兄ちゃん。カラスはどうして黒いの?」

「えっ……そういう体質だからなんじゃないの?」

「どうしてそういう体質なの?」

「いや知らんけど……」

「えー、なんでよー」

いつもこんな調子だった。きっと俺が知らないだけで白人が考えている世の中の謎は天文学的数字にのぼるほどの数なんじゃないかと思う。

そんな白人に面倒な気持ちを持ちつつ……でも俺はこいつの兄貴だから話をずっと聞いていた。

けれど父さんや母さんは誤魔化していつも話題を終わらせていた。嘘の答えを聞いた白人が納得する姿に俺はいつも納得出来なかった。反対に、これで白人の質問する悪い癖も多少は減ると安心してた面もあった。

いつしか時が経ち俺は大学生。正直小さい頃は白人の質問はいつか終わると思ってたが終わらなかった。

むしろ大人になり始めた俺の悩み(センチメンタルになった時の哲学)と白人の質問がリンクし、余計に俺がそれに関わるから質問はヒートアップした。

そんな日々の中、もうそろそろピリオドを打つ頃だろうなんて思っていた。

あの日、俺は原付に乗って、何かを大事に抱えていた。

誰かの事を考えていた。

ーー思い出せない。

白人の質問攻めと俺の大事に抱えてた荷物は関連が、ある。そんな気がしてならない。

だが、まだ思い出せない。

十八年。あまりに短い命だった。

あの日あの時、俺があの、思い出せもしない荷物を持たなければ、死んでいなかったのかもしれない。

そして何故俺はここにいるんだろうか。

全部、決まっていた事なのか?

決定論。

どうにも頭に引っかかるワードだ。

普段ならおいおい、そんなの極端だしありえねー、うーんでもやっぱありえなくはないかも。なんて軽く考える問題なのだが、それが出来ない。

ーー俺は恐怖を抑えられない。

自分は今とんでもない妄想をしている。

海崎白人。

俺は彼女がこの世に生まれた瞬間に死が決定していたのかもしれないなんていう、本当に馬鹿みたいな事を考えていて。

きっと俺は死を受け入れきれずにいる、それは自分でも分かる。

藁にもすがる気持ちで、決定論だったら仕方ない、と諦めさせて欲しくてこんな妄想をしてる。

あの事故の日に俺がどうしても危険を犯してまで抱えた荷物。

……あれは……確か白人への……プレゼント。

全てを終わらせる為の。

その全てとはーー。

不意に頭のこめかみに痛みを感じた気がして、俺は目を閉じた。



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