4.海崎黒人の死的因果律決定論想(1)
4.海崎黒人の死的因果律決定論想(1)
「ねえーお兄ちゃんー、暑いー」
「俺は何も感じないから余裕」
「何も感じないってどういうことなの?」
「うわっ……また面倒くさい。感覚的過ぎて伝えられねえよ……」
「え?何も感じないのに感覚的なの?」
「…………喋りたくない」
暑くないのに暑い!
……昨日の夜、白人と散々独我論について語ったが結局言葉では情報のやり取りに限界がありーーつまりは語り得ないという結果となった。
しかし、だ。
俺が暑くないというあるはずのない感覚を感じるように、人は感覚的に世界は別に自分が死のうと続いてると理解してる。それが間違いかどうかは最早誰にも判断は出来ないけれど、致し方ない事だ。
……まあ、また一つ分からない問題が増えた事は確かだ。
そんなわけで白人がグースカと寝て、起きたらまた質問責めにあっている。そんな状況である。
因みに幽霊である俺は寝る必要は無いようなのだが、目を瞑り無心でいると自然と時間が経つらしい。何ともよく分からない仕組みである。
加えて、俺はこの白人の部屋以外出入り出来なかったりとか……実は今のこの状況も何気なく分からない事だらけで不安を抱えている。にも関わらず新たな謎を増やす我が妹はなんなのだろう……。いや、本当に。
「お兄ちゃんー、白人は夏休みに入ったらずっと家にこもるつもりなのにお兄ちゃんがいたら落ち着かないよ〜」
「んなこと言われても……地縛霊的な奴っぽいから出たくても出れんのだ」
「むー!何で死んじゃったのお兄ちゃん!」
「……分かんねえ。はあ。本当それだよな。どうして俺は死んだんだ」
「何か意味があったり……!?」
「ねーよ、偶然だよ」
だからこそ余計に嫌になる。
偶然なんてもので片付けられる俺の人生に。
「え〜、でもお兄ちゃんが幽霊にならなかったらきっと今こんな風な会話はしてないよ!」
「まあ、そりゃそうだわな。生きてりゃお前と哲学会話とか勘弁だ」
「酷いよ〜!じゃあ今、嫌な気持ち?」
「え……うーん。死んだことは複雑だし辛いよ。けど、死ななきゃ考えない事もあってさ。嫌かと言われたら微妙」
「白人は今楽しい!」
「そうかい……」
俺の人生って一体何なんだったんだろうか。
結果的に今、悪くない気分なんだとしたら死んだ事は悪くないって事か?
「もしかしたら、死んじゃって色々考える、って事が決まってたのかもよっ」
「なんだよその極論、変な結論に辿り着くなよな」
「白人はね、よく考えるの!この世界ら誰かが書いた小説や漫画なんじゃないかって!」
「なわけない、とはまたもや言えないが考えづらくないか?それは」
「白人達が漫画とかだったら面白いじゃん!お兄ちゃんが幽霊でお話しできるなんて設定!」
「いやいや、面白いかどうかで考えるなよ!……しかし」
成る程確かに。俺が突拍子も無く幽霊になるなんてそういう世界でしか考えられないのかも。
だとしたら俺は面白半分で死んだのかよ……!ふざけやがって!
……ってマジになっても仕方ない。
どこかの本で読んだ。人生はあらかじめ決まっている、と。決定論って奴だ。
何時何分あれを見てこれを食べてそれを好きになる、みたいな具合に決まってるのかもしれない。
「……何かさあ、独我論にしろ決定論にしろ、まるで今ある世界に価値が無いように思わせることばかりで嫌になるな」
「?お兄ちゃん変なの。価値なんて無いよ、元々。人間が勝手に決めたんだよ!」
「…………お前友達いないだろ」
「えっ……い、いるもん!」
どうやら図星かもしれなかった。
こんな友達俺なら嫌だからな……。
価値は人間が勝手に決めたもの……独我論……決定論。
俺は……人はどうして生きるんだろう?
俺は死んだ、けど今ここにいる。それは何故だ?
静かに俺は事故のあの日を浮かべて。
白人が寝てすぐに蓋のかかった記憶の旅へと出た。
おおよそ、見つかることはあるのか検討もつかないけれど。