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KIZAN 学_エン 閃空時限 鬼山学園  作者: 入羽瑞己
第一章 来客歓待〈ハジマリハジマリ〉
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ヲタク共はリア充の夢を見るか②

「「「うぉ!む、胸が熱くなるな!」」」

 俺たちが入ると――いや、正確には女子の姿を確認した段階で、AG部のメンバーは沸きに沸いた。

「お、お、おい。この|インフィニティディメンション《地獄の三次元》に2D美少女が本当に実現して、俺の目の前にいるんだが」「見える。僕にも2D美少女()が見えるよ」「俺にも2D美少女とお近づきになれる機会が存在した件について」「ま、まさかポログラフ! 最近のポログラフにはとうとう質感が付いたか」「騙されるなみんな! これは孔明の罠だぁ!」「ふふふ、ならばこの俺がその罠に敢えて嵌ってやろうではないか! うぉおおお!」

 ――結局。

 礼奈とアスカは、その容姿からか、襲われかけた。とりあえず俺と龍騎が三秒でそれを阻止しておいた。

「ぬぉお!? 奴らめ、この飛○御剣流と虚○流を、良い感じでミックスした飛天虚刀流を体得した、この俺の大東流合気柔術を破るとは……徒者ではないな」「あ、謝るなら今のうちだぞ。俺の右手に宿る黒龍が暴れださんうちにな」

 誰か、助けてくれ。この人たちと、俺の住む次元の何かが確実に違う。


 とりあえず、危ない人たちを撃退した後、改めて室内を見渡してみたが……視界に入ってきたもののインパクトが強すぎた。

「あの半日、俺っちたちここで活動させて頂きたいんですが」

 ああ! 何でそんなこと言っちゃうんだよ、北条!

「ええ、別に構いませんよ。てか、新入部員は大歓迎です。ウチはただでさえ、部員が少ないですからね。あ、あと、自己紹介。副部長の藤田(ふじた)ですー」

「部長の(たちばな)よフォーエバーだ。宜しく」

 絶対厄介ごとに巻き込まれる! 俺の直感がさっきから警戒音鳴りっぱなしだ。

「何か不健全で陰湿な匂いがぷんぷんするわよ」

「私はこういうの少し苦手かな……」

 さっき襲われかけたもんな。そしてこの内装を見れば、その感想はごもっともだ。

 っていうか、非売品限定フィギュアとか、抽選配布フィギュアとか、結構なマニアしか手の出しようがないレア物とかも置いてあるぞ。わかる俺もどうかとは思うが。

「俺は少々無理だ、悟。退出しても良いだろうか」

 少々なのか龍騎!? 俺は無理。俺の知識と感性じゃヲタクには太刀打ちできない。

「な、なぁ、北条。俺たちは他の部から回りたいんだが……」

「いやー、入るとき『うぃーす』って言っちゃいましたしねー。そう簡単にはねぇー」

 そんな重要な意味は持ってないだろう!

「武、決着をさっさと付けるぞ。まぁ……なんなら貴様の試合放棄でも良いが」

 薫の目が、珍しく鋭く光る。

「遂に呆けたか、剛。いや、前からかな」

「その様子だと俺様の勝ちで良いな。俺様は巫山戯たところに居たくないんだ。帰る」

 どうしたんだ? 今日は妙にクールだな、薫。北条と会ってからか?

「帰るが良いさ。しかし、お前の負けだ」

「何だと?」

「ああ、俺らは先に帰ってるぞ、薫。少し空気が淀んできた気がしてきたし」

「心外ですなー、人を見た目で判断するというのは。それに、どこからどう観たらヲタクに見えるって言うの? 全くもって健常な高校生じゃないか」

 と、部長の橘さん。

 嘘を付け! じゃ、何で部活動の活動着でコスプレなんだ! どうしてみんなジオン軍なんだ! 研究部やらの類なら別にそんな服着なくても良いだろう。

 ちょっと、あえて、連邦じゃなくてジオンを選んだことにハイセンスさを感じないでもないが……

 それに、この部室全体に設置してあるフィギュアやらは何だ? まだ良いのは十八禁物がないことぐらい。

「まぁ、そこまで言うのなら、“薬師寺”くん。勝負しましょう」

「何で!?」

 というか、そこまでどころか、バトル発生につながるような言葉は一声一字一句申してないはずなんだが。それに何で俺の名前知ってるんだよ、橘部長?

 っていうか、そこまで自分たちは健常健全であることを証明したいですか、あなたがたAG部は。女の子を平然と襲おうとしたくせに。

 人の趣味趣向は自由です。しかし、自分たちの行動と主張には一貫性を持って下さい!

「じゃあ、ついでに。俺っちと剛の勝負も一緒にやっちゃいましょう」


 とか、何だり言った結果……

「では『AG部と北条』対『健全な一年生一同』で宜しいでしょうか?」

 なんでいつのまにか嵐が仕切ってるんだ?

「いやさぁ、こんなんじゃ、今回のバトルの定義がさぁ……だから……」

 お、何だかよくわからんが、良いぞ、藤田副部長!

「「「「オーケー!」」」」

 おそらく、藤田副部長は‘健全’というワードに着目して何かを言いたかったんだろうが、部員一同に見事に無視される。

「では、どのような方法で決着を付けますか?」

「我らAG部が普通であるというのを証明すれば良いんでしょ? ならクイズ形式で一般常識をあて合えば良いんじゃないかな?」

 とかいう藤田さんの提案に皆乗っかり、「AG部と北条」対「健全な一年生一同」のクイズ大会が幕を開けた。



「では、始めます」

 出題は嵐と龍騎が交互にやるようだ。そして、第一問の出題は嵐。

「第一問。パンはパンでも食べられないパンは?」

 ッ!? そもそも常識問題じゃねぇだろ。なぞなぞじゃねぇか。

「ルパン三世!」

「あーっと、残念。違います」

 それはないだろう、橘部長。なんか、うまい話だけどさ。

「甲板!」

 お前も馬鹿か、真志。変にひねるなよ。

「惜しい! でも違います! ヒントは堅いものです。金属が主流ですね。えと、大ヒントすぎましたか?」

 ここまで言ったらもう分かるだろう、みんな。よし、ここは俺が答えて一抜けといこう。

「フライパン」

「違います」

 …………え?

「どうしてあんな大ヒント与えたのに、そんなおかしな答えが出てくるんですか、薬師寺さん?」

 なにーッ? え、ちょ、違うの!? っていうか一番近そうな答えじゃないの、これ。だって、お前。食べられないパンって言ったら、「フライパン」で相場が決まってるだろう。

 しかも、なんでそんなみんなして「空気読めよ」みたいな顔で見るの。ちょ、止めてくれ。俺は――真実を言ったまでだぞ!

「悟、それは無ぇよ」

 うるさい。お前にだけは言われたかねぇよ、薫。

「凸版」

「正解です! 礼奈さん」

「アー、そうか、凸版かー」

「忘れてた、凸版」

 そのうっかりでした的反応。一般化されてるのか、この答え? 俺はこのなぞなぞで「凸版」なんて言葉初めて聞いたぞ。

「さーて、礼奈さんが一番に抜けましたよ」

「えへへ、一番乗り。あとは頑張ってね、みんな。それと、悟くん!」

 ……ああ。わかったよ。全く……一筋縄じゃいかなさそうだな、これ。

「ああ、やってやるよ!」

「では次は俺が出そう。第二問。ロウは気体から液体、液体から気体になると体積は小さくなる。それは逆に言えば、密度が大きくなるということだ。しかし、勿論、状態変化では、質量は変わらない。さて、これは全ての物質に共通して言えることかどうかと、その理由を簡潔に述べよ」

 よし、龍騎からはマシな問題が出た。この流れでいけばまた変な問題が出るかと思ったが、これなら!

「全ての物質に共通していることではない。水は例外であり、水から氷に状態変化するとき体積が大きくなると共に、密度は小さくなる。つまり、水は当てはまらないので、全ての物質に共通して言えることではない」

 神宮寺アスカニ先ヲ越サレマシタ。

「正解。水は例外なので全ての物質に共通していえることではない。説明は今の通りだ。中学生程度で習う問題だ。常識問題にしては易しすぎたか?」

 は、速い。速いよアスカさん。反応速度が尋常じゃなかったよ。

 なんか、人間の反応速度の限界を垣間見たような気がする……

「さてと。こんなむさ苦しい場所からはお先に失礼させてもらうわ。あ、べ、別にあんたのために答えてあげた訳じゃないからねっ! 勘違いしないでよ!」

「……はぁ」

 ここに来て無駄にツン。困惑する龍騎。

 果てさて、ということで神宮寺アスカ。二番乗り。


(はぁ……ホントに覚えてないのかしら、あいつ)

「アスカどうしたの。そんなに嬉しそうにして?」

「え!? いや、な、何でもないわよ」

「ふーん。顔赤くして可愛い、アスカ」


「さてさて、お姫様方がご退場なさったところで問題を再開したいと思います」

 突っ込みどころに迷ったが、お姫様方っていうのは、結構オヤジ臭いぞ。

「では、第三問。あまり味を体験したくないと多くの人が思うかきは?」

 カキって言ったら……

「んと……渋柿?」

「二度にわたって失望させないで下さい、薬師寺さん。何でそうなるんですか!」

 いや……なんか必死こいて馬鹿にされた気がする。何で怒られてんだろ、俺。

「じゃあ何だよ? ここは渋柿だろう。渋柿ってのは苦いんだぜ。渋いんだぜ」

「薬師寺さん。あなたは大人の渋さも良さがわからないんですね……」

 な、何だよ!? そのもう渋柿の渋さも旨さと捉えられるようになるのが‘大人’みたいな言い方。

 なら俺は大人になりたくねぇよ! 渋柿渋いモン。美味しくないモン。

「まぁ、良いですよ。はぁー、誰か分かる方いませんか?」

 溜め息をつくな! へこむんだから。

「んーっと、『無駄な足掻き』で、足‘掻き’とか?」

「正解です! AG部副部長藤田さん。よく分かりましたね」

「いや、ここは、ちょっと考えてみればそれくらいしか考えつかなかっただけだから。そんなに言われるほどのことじゃ……」

 照れてるよ。藤田副部長、明らかに。

 あまり誉められることもないんだろうなぁ。とか、思ったりもする。

「さて、双方共に正解者が出て、この常識バトルもちょっと白熱してきました」

 誰か、嵐に常識とは何なのかをレクチャーしてやってくれ。

「第四問。赤い牡丹の花と、白い牡丹の花では、その子供は、全て遺伝の法則により、優性である、赤色の花を咲かせたとすると、その子供に当たる赤い牡丹の花と、赤い牡丹の花では、その子供は何色の花を咲かせるのか?」

 へぇ、遺伝の問題か、龍騎。

「そんなの、『赤』と『赤』だから、全部赤に決まってんじゃねぇか」

 はぁー、薫。よくそんなんで鬼山学園合格できたな。

 あ、でも薫はカンニングしたんだったな。そりゃ、合格できても学力は到底追いつかないか……

「不正解だ」

「ふ、ふざけんなよ、龍騎!」

 薫は声を張り上げるが、間違ってるモノは間違ってるんだから仕方がない。

 さてと、ここらで本当に抜けさせてもらうかな。

「えっとだな。牡丹の遺伝子の優性は赤であるため、遺伝の法則により、赤の花が3、白い花が1の比率で子供がそうなる。ちなみに説明すると、遺伝というのは、俗に言うDNA……つまり、デオキシリボ核酸が絡んでいるわけだが――」


「――っていうわけだ。ま、今の説明には、まだ理論のみの部分も少なからずあるわけなんだが。とりあえずは、今遺伝子について、研究論文が出てるのはこれくらいだ」

 俺の説明や講義を聞いて、自然と皆から拍手が上がる。

「薬師寺さん、よくご存じで。まさか、遺伝子がそう言うものだなんて知りませんでした……」ありがとう、嵐。

「流石だな、見直した。普通はちょっとそんなところまで知らないようなところまで知っているんだよな」ありがとう、龍騎。

「俺たちが知らないうちに、どんどん科学は解明されてるんだな。ってか、普通は知らねぇよ、そんなことまで」ありがとう、真志。

 うん。こういう反応っていうのは、良い。好きな話題で話ができて嬉しいよ。

「ゆ、優性の遺伝子の影響を子供が受けるなんて……し、知らなかった……っていうか、優性ってなんだね、藤田くん?」

 ……橘部長? 今のは、冗談ですよね……?

「あ、でも、正解ですけど、先ほど薬師寺さんお手つきしていますから、『無効』です。長々と力説ご苦労様です」

「面白かったんだが、ルールはルールだ悟。まさに口先の魔術師らしく、完璧な正解を言っているのに、お手つきだから残留っていうのはちょっとしたイリュージョンだな」

 何だって? 嵐、龍騎。

「じゃあ、今の無効で次の問題行きますよ」

 ……えーっと、はい? お手つきだから……無効?

 ………………

 おうい!? 長々と喋ってた俺が馬鹿みたいじゃないか! 何だよ! 無効だと!? あれだけ、遺伝子について力説しても、無意味だと!?

 これが本当に無効なんだったら、まさにイリュージョンだよ! 今のが正解でないならイリュージョンそのものだよ!

 訳わかんねぇよ! どうしたら俺は常識人として認められるんだよ!

 ……いや、もしかしたら俺は、陰湿ないじめの被害にあっているんじゃないか?みんなして、俺を非常識人に仕立て上げようとしているんじゃないか?

 いじめられっ子、薬師寺悟。

 入学初日からそれは嫌すぎる肩書きだ……

「薬師寺さん。次はちゃんとお手つきしないで、答えて下さいね。それでは、第五問!」


 嵐の問題はこんなような「なぞなぞ」系が続き、龍騎は、空気を読んでか読まないでか、まともな問題(大体、中学生一般なら答えられそうな常識問題。国語、数学、理科、社会、英語を万遍なく)を出してきた。そして……

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