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すみっこのすき  作者: ミノマ
 
9/17

住田さんと四郎くんがうだうだするだけのおまけショート集

本編以上にこっ恥ずかしい内容となっていますのでご注意ください。

一 正解例;

「今日はスカートだね(一点)」

「今日はスカートで可愛いね(三点)」

「今日はいつもより可愛いね(三点)」

「いつも可愛いけど、今日はいつもより可愛いね(七点)」

「どうしたの、今日スカートで、いつも以上にすっげえ可愛い、いや、いつも可愛いけどさ(十点)」


 「四郎くん」

 「はい」

 「今日、どう思いますか?」

 「…………え、何が?」

 「どう思いますか?」

 「何、を?」

 「何か変わったところはないですか?」

 「え〜〜〜〜〜」

 「ないですか?」

 「……………………そう言って何か変わっているように見せかけて実は何も変わっていない!」

 「もういいです」

 「うわ、ごめん、何?正解何?ごめん」





二 「史緒里ー電話鳴ってるよー」

「えー何なんて言ったー?」

「早くしないと出ちゃうよー」

「えっ何?何のこと?ちょっと待って今行くから何もしないで待って」


 「あ、もしもし、住田さん?」

 『もしもし、四郎くん』

 「あれ、どうしたの、今日、なんか機嫌いいの?」

 『そう聞こえる?』

 「うん、なんとなくだけど」

 『それより四郎くん、史緒里のこと、どれくらい好き?』 

 「……えっ。どうしたの」

 『いいから答えて。どれくらい好き?』

 「えーっ。えーとね………」

 (なんだ、なんでいきなりこんなこと聞かれてるんだ?今日はただ土日に出かけようって思って電話しただけで…。なんだっけなんだっけ、)

 『はいー、さん、に、いち』

 「あ、あの、一緒に植物園行きたいくらい!!」

 『………はあ?』

 「え」

 『なんだよそれ、全然じゃん。植物園くらい誰とでも行けるっつーの。てめえの愛ってそんなもんかよ。つーか遠足かって、植物園とか。もっといいとこねーのかよ』

 「え、…住、田さん?」

 『ハーイ、住田でございます』

 「……………えっと、真澄、さん?」

 『史緒里のご機嫌な声が聞きたいなら会うたびに格好でも褒めてやれ、この甲斐性なし!』

 「お」

 ブツッツーツー

 「…………………」


 「…はい、もしもし」

 『四郎くん?ごめん、さっきは』

 「………あ、…えっと、史緒里、さん?」

 『うわ……は、はい、史緒里、です』

 「…………ちょー怖かったんですけど」

 『ごめんね、真澄が勝手に電話とっちゃって。なんか言われたかもしれないけど、気にしないで』

 「声、似てるんだね…」

 『顔も性格も似てないんだけど、声だけはね…』

 「住田さんさ、おれのこと、どれくらい好き?」

 『……なにか、真澄に言われた?』

 「いいから、どう?」

 『………高校のときから、ずっと忘れられないくらい?じゃ、足りない?』

 「そういうふうに言えば良かったのかー」

 『もう、気にしなくていいってば』

 「あのさ、植物園、行かない」

 『お、いいねえ、行こう行こう』




三 「しーちゃんさあ、あいつで本当にいいの」

「んー、四郎くん?」

「私はさあ、むかついたらすぐに男は切るからあれだけど、史緒里はすごい大事にしてるじゃん」

「う、うん」

「その相手があれでいいのかなあと思って」

「あ、あれ呼ばわりですか…」


 「おはよう、史緒里さん」

 「え、あ、おはよう、四郎くん」

 「…史緒里さんだよね」

 「どうしたの、急に」

 「いや、本当にいつ真澄さんに代わってるか怖くて」

 「顔似てないって言ったじゃん」

 「……」

 「どうしたの?」

 「あのさ、あのお…」

 「うん」

 「…あのいつものジーンズもいいけどさ、今日の短パンもすげえ似合う、と、思います」

 「………やっぱりね、ちょっとセクハラくさいんだよねえ」

 「え、嘘」

 「嘘嘘、嬉しい、本当に」

 「いや、変な意味じゃねえよ、いや、多少はそりゃ、女の人の足が気になるとかはあるけど、さっきのはそんなんじゃなくて」

 「初めて褒めてくれたよねえ」

 「…あ、ご機嫌な声」

 「ん?」

 「いや、真澄さんは偉大だわ」




四 


 「あれ、住田じゃん」

 と、声がかかって、わたしは振り向いた。見たことある顔がそこにいる。

 「俺、高三のとき一緒だった」

 言われて思い出した。

 「あーっ、香川か」

 名前が出ればあとは芋づる式に話は盛り上がり、立ち話もなんだしとりあえず、と近くの居酒屋チェーンに入ることになった。

 その居酒屋は全席個室を売りにしていて、靴を脱いで掘りごたつの座敷に上がる。のれんがかろうじて客の顔を隠していた。

 とりあえずビールで、乾杯。まわりの同級生たちの近況を話して、意外な進路や結婚の知らせに一喜一憂しつつ、ふうと一息つく。

 高校の同級生か…。

 わたしは考える。近頃姉の史緒里が同級生と付き合いだして、とても仲が良い。ああいうほのぼの恋愛、したいなあ。

 目の前の男を観察する。

 ばかキャラだったはずだけど、なんかおとなしくなってるし、まあ容姿も、見てられないレベルじゃないし、話は合ったはずだよな、確か。

 そういう打算を抜きにしてももう少し話したかったのは事実なので、二軒目に誘ってみることにした。

 「ねー今夜、ひま?このまま付き合ってよ」

 「えっ!」

 瞬間、声が聞こえて、通りがかりらしい男が顔を突っ込んできた。

 なんだこいつ。人の座敷を勝手に覗き込んで。しばらく座敷の中を観察したあと、ばつが悪そうに頭を下げた。

 「…すみません、人違いでした」

 唖然として見送るわたしたち。男は首を振りながら歩き去ろうとする。

 人の良さそーな男。そういえば、見たな、見たぞこいつ。何かの写真だ。

 「わかった、四郎だ!!」

 のれんから頭を出して叫ぶと、え、と男が振り向いた。間違いない。史緒里の卒業アルバムを無理矢理見せてもらったことがある。

 「四郎だろ、あんた!わたしと史緒里の声聞き違えたんだろ!懲りねーな」

 酔っぱらいの大声に慌てて戻ってきた男は、まじまじとわたしを見つめた。

 「……真澄、さん?」

 「自分の彼女の声くらいちゃんと聞き分けられるようになれよ、甲斐性なし」

 「ああ、真澄さんだ…」

 記念にアドレス交換してやった。その声で違う男誘ってるの聞きたくなかったと言われた。何度も言うが、間違えるのが悪い。

 同級生の香川とは三軒飲み屋をはしごしたが、先に彼のほうが酔いつぶれた。ちょっとげんなりしたが、珍しく、もう少し付き合ってみてやってもいいと思っている。



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