『新しい生活(4)』
「もし、貴族の方がお前を養子に欲しいと言ったら、お前さんはどうしたい?」
義父は突然切り出した。
「突然どうしたのですか?」
最もな疑問である。
「お前さん程の器量なら、身分さえあれば幸せになれる」
「今でも十分幸せです」
「……そう言うと思っていた。幸せになれると云うのは……このような仕事をしなくても、婿をとる事が出来るし、お前さん程の器量なら帝にも御仕えできると云う事じゃ」
「私は、そんなに結婚したいとは思っていませんよ。でも、それってあまり良くない事なのでしょう?お義父様がその方が良いとおっしゃるのであれば、私はそれに従います」
「そうか。―――――――さて、この話は終いじゃ。帰るとしようかの、撫子」
「はい、お義父様」
そして、二人は家の中へと入っていった。
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―――その日の夜の事―――
彼ら――撫子の義父と義母である――は小声で話し合っていた。
撫子の事について、である。
「撫子は、わしの言う事に従うと」
「やはり、出来るだけ外に出した方が…」
「わしは今度、撫子を花見見物に連れて行こうと思っている」
「秋には、都で行われる祭見物ですね」
「貴族の方のお目に留まれば…」
「撫子はきっと今より幸せな生活を送れるでしょう…」
二人の話は留まることを知らずに。
夜は更けていく…。
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