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平安霧花  作者: 西園寺 悠里
第二話
7/15

『新しい生活(2)』

*・゜゜・*:.。..。.:*・'


「あぁ、おじいさん。撫子が布を織りたいと言っておったのでの。今、あの娘は一人で家にいるよ」

家を出た義母は義父を見つけるとこう言った。

「なぁ、ばあさんや」

突然、彼は話を切り出した。

「何ですか?突然?」

「お前さんは…竹取物語を知っているかい?」

竹取物語。それは、撫子のいた世界では『かぐや姫』と呼ばれる日本の童話だ。

「もちろん、知っていますよ。どうしたんですか?」

「わしはな…時々、撫子がかぐや姫ではないかと思う事がある」

何も言わずに、彼女はただ黙って先を促した。

「突然現れて、その家の中を幸せにし、結婚を拒み、やがて去っていく…。本当はあの話は作り物だと理解しているはずなんじゃがな」

「ほんに。それに私らがもう少し裕福な家だったなら、とも思いますよ。立派に嫁いで、幸せになれるんですから」

「まぁ、撫子はそれを望んじゃあいないみたいだがな」

彼はしみじみとそう言う。

「あの娘が幸せになれる方法はないのかね…」

彼女もそういって、悲しそうに笑う。

「あの器量なら、身分さえよければ帝のもとにお仕えすることも出来ようものを…」

きっと、帝にお仕えし、子供を産めることが、上流階級の女性にとっての一番の幸せ。

たとえ上流階級でなくても、中流階級ならば更衣としてだったり、女房として宮中の女性に仕えることができる。

しかし、彼らには身分が足りないのだ。

「彼女を養子に貰いたいと言う、貴族の方がいれば良いのに…」

養子にしてくれる人が現れれば、彼女の世界は広がる。

しかし、それは同時に、彼女の自由を奪うことにもなりかねない。

「一番良いのは、彼女の身分が低いうちに、外に出すことですね」

身分が低い人間なら、女性でも外に出る事は出来る。

そして、養子にしたいと申し出てくる人が現れたのなら、彼女の意思に合わせる。

送り出すかどうかは父親の権限なのだから、その意思を元に考えれば良い。

一番大切な事は、大事な娘の幸せを一番に考える事なのだ。

彼女の幸せになる道は何なのか。

2人はそんな事を考えながら、畑仕事をはじめた。


*・゜゜・*:.。..。.:*・'


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