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平安霧花  作者: 西園寺 悠里
第二話
6/15

『新しい生活(1)』



私がこの世界に来て、どれくらいたったのだろう。

カレンダーも時計もないこの世界では、日にちの経過が分からない。

何となく、三か月間ぐらい経ったかな?という程度の認識だ。

そろそろ、桜の開く季節も近いのかもしれない。

とりあえず、この世界で1つ、確実に成長したことがある。

星座がある程度分かるようになった。

名前を知らずとも、形、配置を知っているだけで、大きなメリットになる。

何せ、この世界の暦――――――太陰暦は不正確なのだ。

月の満ち欠けによる暦なんて、分かりにくい。

月が28.5日を周期としている以上、ズレるのが当たり前なのだから。

日にちは忘れてしまったとしても、季節がなんとなく分かっていれば、まぁ及第点ではないだろうか?


*・゜゜・*:.。..。.:*・'


私が来てから、生活が苦しくなったようだった。

もともとから、この時代の農村はあまり裕福ではないはずなのだ。

税の負担から逃れるために、貴族に土地を進呈した農民だっている。

そんなところに私は来たのだ。

人数が増えれば、もちろん出費も増える。

いくら、そこそこ裕福な名の通った家だとしても、辛い事にかわりないはずだ。

しかし、私が何か畑仕事を手伝うと言えば、危ないから構わないとかえってくる。

だといって、何もしないのも居心地が悪い。

何か、私に手伝える事はないのだろうか・・・?

そう考えていたとき、お母様が織っていた布が目にとまった。


*・゜゜・*:.。..。.:*・'


「お母様、布を織っているのですか?」

撫子は突然話しかけた。

「ええ、納めなければならないから」

そんな突然の問いにも、しっかりと答えてくれる。

「余った布や、糸はありますか?使いたいのです」

「布は少ししかないけれど、糸なら沢山ある。そんなに危険な作業でもないから、私が使わない時は、自由に使うといい。布の織り方は分かるかい?」

「ええ、分かります。お母様が織るのをずっと見ていましたから」

まさか、あっさりと返事がもらえるとは思わず、少し撫子は驚いた。

しかし、そんな驚きに義母は気付かずに

「糸を作る作業は大変だし、危険であるから私がやろう」

どこまでも過保護な義母である。

それでも、布を織る許可は撫子を喜ばせた。

正直なところ、何もしないこの数か月間、暇で暇で仕方がなかったのだ。

「さてと、私はおじいさんの手伝いをしてくるよ。ついでに糸の材料もとってくる。今日はもう使わないから、自由に使うといい。ところで撫子、これから少しの時間、家に1人になるから気を付けるんだよ。お前は綺麗なんだから」

「大丈夫ですよ。心配のしすぎです。襲われたりなんかしませんから」

「それでも、気を付けるにこしたことはないよ」

義母はそう言うと、外へとでていった。

撫子は、義母が出ていくのを見送ると、座って布を織り始めた。

起用な撫子は、義母を遥に上回るスピードで布を織っていく。

撫子の周りには、早くも布の山ができていた。


*・゜゜・*:.。..。.:*・'

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