『此処は平安時代⁉ (3)』
ーーー撫子が奥の部屋に連れていかれたーーー
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数分後、撫子は居間に戻って来た。
着物を美しく着こなして。
「なかなか似合うじゃないか」
「ありがとうございます」
義母は白い髪紐を取り出すと、
「撫子、後ろを向いておくれ」
と言った。
義母はその紐で撫子の髪を後ろで束ねた。
そして、前髪を綺麗に整える。
「こんな事しか出来なくて悪いねぇ。これからはこの家が撫子の家だ。自由に使いなさい」
「ありがとうございます」
「さてと、私は飯の支度でもするから。何かあったら、じいさんに聞きなさい」
そう言い残すと、義母は竃のところへと行った。
「お父様、私は何をすればよろしいですか?」
「記憶がないと、色々と初めての事もあるだろう。慣れるまでは、特に何かをする必要はない。少しずつ、出来る事を探していけば良いんじゃ」
そう、優しく義父は言った。
「では、お父様の仕事を見てもよろしいですか?」
「構わんよ。ただ、撫子のような若い女子がやる仕事ではないだろう。わしらがもう少し裕福だったなら、歌などを勉強し、結婚相手を探すんじゃが…。すまんのぉ…」
「いえ、まだ私は結婚しようなどとは考えておりません」
そう言うと撫子は花が咲くように笑った。
「お父様は、この後、何をなさるのですか?」
「もう冬じゃからな…。藁を使って米俵を編もうと思っとるんじゃ」
「米俵…ですか?」
「そろそろ、年貢を納める時期じゃからな。それに間に合うようにしなければならないからの」
「そうですか」
2人は外へと出て行った。
「さぁ、平安時代の生活の始まりね」
撫子は誰にも聞こえないよう、そっと呟いた。
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