『此処は平安時代!?(2)』
ーーー新しい生活が始まるーーー
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撫子は、新しい家に着いた。そこそこ大きい家だ。どうやら、この村では有力者らしい。
「大きい家…」
「まぁ、この村では一応名の通った家じゃ。さぁ撫子、入りなさい」
「はい、お父様」
撫子は、家の中へと足を踏み入れた。
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「ばあさんや。こっちに来ておくれ」
少しして勝手の方から、年老いた1人の女性が出て来た。
「その娘さんは誰だい?」
「この娘さんは撫子といって、少し記憶のない娘さんじゃ。私達の娘として、育てる事にした。これから、色々と教えてやってくれ」
「そうかい。よろしくね、撫子」
「これから、よろしくお願いします。お母様」
「それはそうと、着替えたらどうだい?その着物はボロボロじゃないか」
よくよく見ると、制服は見るも無惨な状態であり、辛うじて身体が隠れている状況だ。ローファーは脱げたのか、無くなっている。
(だから、洋服なのに不思議がられなかったのかしら?)
「ばあさん、撫子の着物の用意と、成人を祝う用意をしておくれ。彼女は15歳くらいだそうじゃ」
「はいはい、分かってますよ」
そう言うと、義母となる女性は、奥の方へと入っていった。
「あの…成人を祝う用意とは…?」
「そうか…あまり覚えていないんじゃったな。上流階級の女性の方は、裳着の式と呼ばれる物をやられるんじゃ。それと同時に、髪上げもなさる。しかし、ここは農村じゃから…髪上げしか出来ぬ」
「(農村の成人の儀なんて習わなかったから、正しいのか分からない…)そうなんですか…あの、名が通っている家とは?」
「この家では昔、"藤原"と名乗る貴族の方を泊めた事があるそうなんじゃ。その時、先祖の方は貧しいながらも精一杯のもてなしをしたそうじゃ。それに感動したそのお方が、"藤原"の姓を名乗る事を許して下さったそうでの。それからは、国司様も、我が家に下手な事は出来なくなったのじゃ」
「という事は、私は藤原撫子ということですか?」
「まぁ、そういう事になるの」
彼女はホッとした。それなら、間違えて「藤原撫子と申します」と言ってしまう事もない。自分の本名なのだから。
「着物の用意が出来ましたよ」
奥から義母が出て来た。手にはそこそこ綺麗な着物と髪紐を持っている。
「私が昔、着ていた物だけど。今撫子が着ている物よりは良いと思うよ」
そういうと、撫子に着物と帯を渡した。
「着方は覚えているかい?」
幸い、撫子は仕事の関係で、着物の着付けを経験した事があった。
「はい、覚えています」
「じゃあ、着替えておいで」
そう言うと、撫子は奥の部屋に連れていかれた。
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実は、藤原という苗字の件云々は、ここだけ実話なんです。
私の中学時代の同級生に藤原〇〇という男子がいて、その人の苗字の成り立ちが『藤原氏を家に泊めてもてなしたことにより、名乗ることを許された』ということでした。
これを聞いた時はビックリし、少しばかり使わせて頂きました。
決して、全てが実際にありえないことで出来ているというわけではないです。
ここまで読んでくださり、有難うございます。