『全ては落下から』
この話は、フィクションです。
似たような世界観、時代背景ですが、あくまでも、同じ名前の別世界であり、登場人物などは架空のものです。実在する名前などとは一切関係ありません。
どうぞ、お楽しみください。
此処は、何処だろう?
目が覚めると、全く知らない場所にいた。
「何故だろ…?さっきまで私…家の前にいたハズなのに…?」
目の前は真っ黒な世界。
見覚えが無いどころか、恐怖すら感じてしまう。
"ズキッ"
突然、頭を激しい痛みが襲った。
「痛いっ!」
その瞬間、ある事を思い出した。
「そうだ…私…」
ーーー落ちたんだーーー
*・゜゜・*:.。..。.:*・'
彼女、藤原撫子は有名な読者モデルだった。その美貌と頭の良さから、テレビなどでも引っ張りだこである。もちろん、そんな彼女には、世間でいう、「ストーカー」なるものも付く訳で。
この日も彼女の背後には人影がいた。いつもの事であった為か、油断していたのだ。
今までのストーカーは、マンションの前で帰っていたから。きっと今日も大丈夫。彼らはボディガードに似たようなポジションにいるだけ。そう、思っていた。
今日はいつもと違う。そう確信したのは、エレベーターの前に来た時だった。エントランスの中まで入って来た後、階段を登っていったのだ。私がエレベーターに入るのを見計らって。
エレベーターに乗ると、慌てて、鞄から家の鍵を出した。上についたら、直ぐに走って行って家に入ろう。そう、心に決めて。
エレベーターが止まると、案の定、ストーカーは近くの階段の前にいた。余り刺激しないように、平静を装いエレベーターを出た。そして、方向を変えると走り出した。
家の鍵を開けた所までは良かった。しかし、追い付いてきたストーカーは彼女の手を引き、自分の方へと引き寄せた。バランスを崩した彼女はフェンスへ身を預けようとし、ある事へ思い立った。
ーーー私はどうして、今日は珍しくエレベーターを使ったんだっけ?そうだ…階段周りと廊下のフェンスが緩んでいるって回覧板が回って来たからだーーー
気付いた瞬間、彼女の身体は宙へと投げ出された。慌てて手を伸ばしたがその手はストーカーによって振り払われた。
落ちていく瞬間、「君はこれで僕のモノだ」そう、ストーカーが呟いた、気がした。
*・゜゜・*:.。..。.:*・'
「そうか…私…落ちたんだ…」
じゃあ死んだのだろうか?死後の世界って、こんな感じなの?
そんなことを考えていると、段々眠くなって来た。瞼が閉じそうだ。
そんな自然的欲求には抗えるハズもなく。諦めて、本能に任せることにして目を閉じた。
そして、目を閉じて直ぐに、意識はより深い闇へと落ちて行った。
誰かに呼ばれた、そんな気がした。