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妖精事情  作者: 前田智
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妖精事情 

妖精、サン〇イズ系ではなく脳内ではベル〇ルクのパッ〇です。サイズが手ごろだし。

 僕がこの現代において、妖精などという胡乱なものを信じることになったきっかけは、昨年末の事、我が地元で唯一クリスマスケーキなどというモノを売っている菓子店・覇王「やしき」でクリスマスケーキ(4号ホール)を勢いで購入したものの食べきれず、半分残してしまったことだった、と思う。冬場であることもあり、購入から3日経った朝に、まだ大丈夫だろうと更に半分を食べたのだけれど、その日の昼過ぎ、少々腹具合が悪くなったと感じたので薬でも飲もうと居間のちゃぶ台の上の薬箱に手を伸ばしたその時、指先に何か触れたような感触があって、思わず見返すとそこには蠢く鼠ぐらいの大きさの物体。透明な二対の羽をもった小さな女の子?? が二人いた。一人は何か苦しそうに身をかがめて、それをもう一人が庇うように僕を睨め付けながら何か捲し立てていた。

不審な何か①「何よあんた、やろうっていうの?相手してやろうじゃない。」

不審な何か②「う、いててて、何、今の?」

うーん、何だろう、これ。大きさに見合わないような音量でしゃべり始めたけど。

「何だ、お前らは?」

不審な何か①「妖精さんよ。見て判らないの?」

不審な何か②「う、いてて、お腹痛い。薬ちょうだい。う~  痛い。」

妖精?しかも、さん、て。見るのも聞くのも初めてなんだが。呆然とする僕に構わず、なおもしゃべり続けるそいつら。

妖魔?①「なによ、妖精も知らないの?これだから今のにんげんはぁ。」

妖魔?②「う・・・・。」

更にしゃべり続ける妖精?①。でも、あれ、妖精②はお腹を押さえて黙り込んだぞ。いいのかな?

「で、その妖精さんとやらが何の用だ。」

別に聞くいわれもないが、とりあえず尋ねてみる。

妖精?①「この家にじいちゃんがいたでしょ?前に来た時にお世話になったから。また助けてもらおうと思って来たのよ。そしてあたしにはシイナって名前があるのよ。そんでこっちがミイナ。ミイナが大変なのよ!」

妖精②「・・・・。」

妖精②の返事が無い。ただのしかばねにようだ。

「その大変なミイナとやらは、それ、生きてるのか?というか、お前ら生き物なのか?」

僕の冷静なツッコミに反応する妖精①.

シイナ?「え、ミイナ、ミイナぁ、目を覚まして、死んじゃやだ。そんな、あたしを遺して逝くなんて、許さないんだからぁ!」

そう言いながら肩を掴んでブンブン揺さぶっている。今にも泣きそうだが、何か嘘くさい。でもそういえば。

「腹が痛いとか言ってなかったか、そいつ。」

そう聞くとシイナと名乗ったそれは、はっとした様な顔をして、また猛然と捲し立てはじめた。

シイナ「そうよ、クスリ。薬をちょうだい。くろくてにっがいの。」

何かヤバい中毒患者のような事を言ってる。ん、黒くて苦いって、征〇丸の事か?ちょうど今、僕も飲もうと思っていたけれど。でも、そいつの口に入る大きさか?アレが?

それでもなお薬を求めるシイナを放ってもおけず(実際五月蠅い)、僕は台所に行き、小さなスプーンと小皿を用意して薬箱の中から征〇丸の瓶を取り出し、一錠を小皿の上に置いて、スプーンで16分割した。そのうえでコーヒーシュガーを皿に入れて小さく切り分けた薬の粒にまぶし、横で大人しく見ていたシイナに指し示した。すると心得た様にシイナは、倒れているミイナの鼻をつまんで口を開けさせると、開いた口の隙間にむんずと掴んだ薬を押し込みやがった」。唖然として見ていると、

シイナ「何よ、口移しでもすると思ってたの?このスケベ。」

いや、でも、それはどうなんだ?別に何か期待してたわけじゃないからな。

 そのまましばらくすると、横たわっていたミイナがぱちりと目を開けて、何事もなかったかのようにむくっと起き上がり、開口一番言いやがった。

ミイナ?「治った。」

シイナ「ミイナ、ミイナぁ。生き返った。良かったよぉ!」

いや、シイナ。取りすがって泣いて見せるのはいいが、お前の扱い方は凄いぞんざいだったぞ。それ本心か?それにミイナ、治ったって、なんて適当な体なんだ。そもそも妖精って腹壊すのか?フリじゃないのか、おい。

 そんな僕の思いをよそに、目覚めたミイナは僕を見上げながら、何か恥じらうようにポッと頬を染めてはにかんでいる。可愛いじゃないか・・・いや、騙されてはいけない。

ミイナ「ありがとう。助けてくれて。ふふふっ。」

シイナ「とりあえず、ミイナが良くなったわ。悔しいけど、ありがと。」

まあ、こんな不思議生物にでも、感謝されれば気持ちは良い物ものだ。でも、根本的な問題は何も解決はしていないんだよなあ。

「で、結局お前らは何なんだ?」

ミイナ「だから妖精だってば。じいちゃんならこれだけで解ってくれたのに。」

シイナ「何で解らないかなあ。じゃあしっかりと聞いてなさいよ。」

ともかくこのままでは埒が明かない。というか騒がしくてたまらないので、黙って二人の話を聞くことにした。それによると二人の名前はミイナとシイナといい、僕の亡くなったじいさんとは旧知の仲で、以前住まいの関係で世話になったんだとか。じいさんが亡くなったことを説明すると、

ミイナ「そういえば急に家の前に赤いサイレンの車が来てそれから姿が見えなくなったっけ。」

シイナ「だからしばらく、ここには寄らなかったんだけど。」

ミイナが突然腹痛を起こしたので、やむなく、前にじいさんが腹痛によく効くと言っていた薬を飲もうとして、ふらつきながらもようやく薬箱に手を掛けようとしたら運悪く僕の指に触れたという事らしい。

ミイナ「いやぁ、箱の中のケーキが美味しそうで、つい食べちゃったのが良くなかったのかな?」

シイナ「だから知らないモノは食べちゃ駄目って言ったでしょ。」

んん?ケーキを食った?そう聞いてちゃぶ台の上に放置していた箱の中を見ると、中身が消えている。あれ、それでも4分の1は残っていたはずだけど。ミイナの体躯と同じくらいはあったよな、呆れるぜ、という目で眺めてやると、

ミイナ「もう、そんな熱い目で見てぇ。」

シイナ「あ、あたしは一口だけだからね、食べたの。ほとんどミイナ一人で食べたんだから。」

にわかには信じられないが、そうか、残り全部、ほぼミイナだけで食ったのか。そりゃ、食い過ぎだ。コイツのどこにそんなキャパがある?そりゃ、腹も壊すってものだ。というか、いつの間に食ってたんだ?こいつら。順番おかしくないか?

ミイナ「美味しかったよ。ごちそうさま。その上助けてくれるなんて。」

シイナ「まあ、何と言うか行き違いがあったみたいね。さあもう、この話はお終い。」

「何を言ってやがる、この、富永にへきるはよう。」頭にきてつい思っていたことが口を突いてしまった。

ミイナ「せんせいじゃ無いならいいや。ダン吉さんもいないし。」

シイナ「何言ってるのよ、この年季の入ったオタ野郎。桔平でも林檎でもいいでしょうに、もうほとんど活動してないでしょ、へきへきは。」

あ、理解してやがる。シイナはかなりいける口だな。ミイナは・・・おまえ、歳いくつだ?まあ妖精(妖魔か?)っていうぐらいだからな。

ミイナ「ねえ、そんなの良いからさ。」

シイナ「良くないわよ。このままじゃ妖精の沽券に関わるのよ。」

話が噛み合わない。不毛な争いをしてるのもどうかと思うのだが。誰がタクだ。失礼な。

ミイナ「ん~それじゃぁ、・・・私の羽、触ってみない?」

シイナ「え、ミイナ待って。それは・・・」

何故かミイナが顔を赤らめながら、背中を向けてきた。その背中から伸びている羽はまるでオニヤンマのような透明さで触らなければいけないような触っちゃいけないような不思議な感覚を受けたが、つい手を伸ばして指で触れてしまった。そう、昔、庭でトンボを捕まえたように。閉じた羽をつまむように。ミイナが軽く身を震わせている。

ミイナ「あん。うふっ触ったね、私の羽に。」

シイナ「あらあら、触れちゃった。妖精の羽に。そんなにしっかりと。」

何か不穏なことを語りだす妖魔ども。聞いているうちに何か眠く・・・、あれ?

ミイナ「ゆっくり、」

シイナ「眠っちゃいなよ。」

いつの間にか、そんな声に誘われるように、僕の意識は眠りの中に堕ちていった。


・・・ぇ。」

?「ねぇ。」

ミイナ「ねぇ、起きてよ、ア・ナ・タ。」

変な声で変な事を言うヤツだ。僕の意識は急速に覚醒方向に引き上げられた。目を開けると小さな羽の生えた何かが僕の顔を覗き込むようにして・・・てめ、何してやがる。

ミイナ「んん~、サービス?」

僕はボケるミイナを無視し、大きく伸びをして身を起こした。あれ、シイナとやらの姿が見えない。これは気をつけねば。

「おいミイナ。シイナはどうしたんだ?」

ミイナ「ん~、どうしたんだろうね?私はずっとア・ナ・タを看てたから。」

ん、いないのか?でも何とも言えない胸騒ぎがする。例えば、

「そこぉ!」

とりあえず気配を感じるちゃぶ台の方を指さして大きな声を上げてみると、薬箱の後ろからシイナがひょっこり顔を出した。

シイナ「あ~びっくりした。何よ突然。・・・あら、生きてたのね。」

縁起でもないことを言うヤツだ。しかも変に顔がつやつやしている。

「お前、どこに行ってたんだよ。」

ミイナ「シイナ、お帰りなさい。」

シイナ「たっだいま~、ミイナ。おはよう、ご飯食べてきたよ。」

・・・ん、何かおかしなことを言っている。ごはんって?

「もう夕食か、早いんだな。」

ミイナ「あ~いいな。」

シイナ「何言ってるのよ。もう朝じゃない。あんた、ずっと起きないんだもん。ミイナが心配して離れようとしないから、あたしだけ偵察を兼ねて住まいに戻って、ついでに朝ごはんを食べてきたんじゃない。」

え、朝っ?そういえば腹が減っているけれど。あれ、お腹の不調が治っている?あれ?

「そういや何か腹の調子が良くなっているんだが。」

ミイナ「当たり前だよ。繋がったんだから。」

シイナ「あんた、昨日、ミイナと繋がったんだから当然じゃない。何言ってるのよ。」

はあ、繋がった?何か不穏な事を言い始めたぞ、こいつら。

ミイナ「だからもう離れないんだよ。」

シイナ「あたしは止めた気がするもんね。それはともかく、あんたたちはご飯食べないの?」

言っている事は意味不明だが、腹が減っているのは確かだ。壁の時計の時刻もそれを示している。僕はこめかみを押さえながらも台所に行き、自分の分の朝食を用意した。ミイナが飛んできて、何か期待するようにニコニコしている。レンチンのおかずをいつもより多めに(3食分だ)用意して、居間に戻ると、何故かシイナも寄ってきて一緒に朝食をつつき始めた。

「おい、シイナ。お前、飯は食ったんだろ?なにしてやがる。」

ミイナ「まあいいじゃん。みんなで食べよ。あ、シイナ、それは私のよ。」

シイナ「偵察してきたからお腹すいてるのよ。ミイナもOKしてるんだから、いいでしょ。」

納得はいかないが、まあ反論するのも面倒だ。流れに任せよう。とりあえず3人?で黙々と朝食を食べる。それにしても良く食うなこいつら。いや、考えるだけ無駄か。征〇丸で気を遣った僕が馬鹿みたいだ。

ミイナ「馬鹿なんかじゃないよ。良い子良い子。」

シイナ「変な事気にしてるのね。疲れない?」

あれ、今、口に出したかな?まあでも飯を食うのが優先だな。特に気にせず食事を続ける。今にして思えばもう少しよく考えるべきだった、のだろうか。まあ、今更か。ただ一つだけ、何と言うか、言ったら何か言われそうなので黙っているべきか、うん、でも。

「お前らな、その格好、どうにかならないか?」

ミイナ「ん、別に良いんじゃない?」

シイナ「何言ってんの?こいつ。」

ミイナ「要するにさ、私がミリキ的過ぎて、この格好が刺激的だって事なんだよ。」

シイナ「か~、この性年がぁ。何か昨日から妙にエロい視線を感じていたんだ。」

ミイナ「そんなこと言ったら可哀そうだよ。だって私がミリキ的過ぎるのがいけないんだしね。」

シイナ「う~ん、あたしもそこは反省する余地はあるかもね。」

言われ放題だ。でもそれならどうしようか?考え込んでいるとミイナがこんな事を言い出した。

ミイナ「ねえ、じゃあ何かステッキは無い?」

シイナ「あ、なら、あたしにも頂戴。」

へっ、ステッキ⁉まあ、みたいなモノでいいんなら。コーヒー用のスプーンとケーキ用の小型のフォークがあるから・・・これでいいか。

ミイナ「ま、これならいけるかな。」

と、スプーンを受け取る、ミイナ。

シイナ「まあ、これでいいわ。」

何やら誇らしげにフォークを受け取るシイナ。うん、サイズは丁度良いくらいだ。が、ミイナは普通に可愛いけれどシイナの方はミニ〇ーモンという感じで可愛いというか・・・。

ミイナ「変な事考えちゃ、ダメだよ。」

シイナ「ん、何?こいつまたエロい事考えてんの?」

ん、ミイナ何で僕がシイナの事考えてたの判ったんだ?まあどうでも良いけど。

ミイナ「まあ見ててよ。変身するから。」

シイナ「ちょっと待っててね。呪文が必要だから。」

二人はそれぞれの得物(スプーン等とも言う)を構えながら言い放った。

ミイナ「ピ〇ルマピ〇ルマ・・・」

シイナ「パラリン〇リカル・・・」

「ちょういと、待て~い!」

僕は即座に二人を止めた。いや、二人と言うより・・・。

「こら、ミイナ。おまえ、馬鹿にしているのか?」

僕の剣幕に、ミイナは身を震わせている。シイナは何か悟ったように、小さく頷いている。そうかやはり、コイツは僕と同類だ。だが。

「いいか、ミイナ!違うだろ、違うだろ違うだろ違うだろ、ち・が・う・だ・ろ。お前が使っていい呪文はソレじゃないだろ。それでも富永かぁ。今のは小〇の専売特許だ!」

シイナは我が意を得たように深く頷いている。

ミイナ「えっ、なに?」

シイナ「諦めなよ、ミイナ。世の中にはさあ、お約束という名の不文律があるのよ。あんたがミイナである以上、それは絶対なのさ。」

ミイナは不服そうながらもそれ以上何も言わずに、新しい呪文で変身を継続する。シイナもニヤニヤしながら詠唱を続ける。

ミイナ「ペ〇ッコラブリンクルクルリンクル。うぅ。」

シイナ「・・・・・・パラボラ〇ジカル。」

うん、これこそあるべき姿だな。そして二人の詠唱が終わり、一瞬辺りが眩く光ったかと思うと、いわゆる一般的な妖精が着るような(僕基準)ギリシャ風のチュニックを纏った二人の姿がそこにあった。

ミイナ「これでいいですの?」

シイナ「もう、注文が多いんだから。あとね、細かいけど、ハヤシ〇ラもあるでよ。」

知るか。まあこれで、落ち着いて御飯が食えるというものだ。別に惜しいなんて、思ってないぞ。

 しばらくは黙々と朝飯を掻き込んでいたが、そこで先ほどから気になっていたことを聞いてみた。

「僕、昨日からずっとここで倒れていたのか?」

ミイナ「そうだよ。揺ってもも起きないから、私がついていたの。」

シイナ「ミイナと繋がったんだから大丈夫だよって言ったんだけどね。感謝しなさいよ。まあ、あたしも繋がるとこを見るのは初めてだから、ミイナの好きなようにさせてたってワケ。無事で何よりだわ。」

むう、やはり何が何だか。羽をつまんだとき指に何か付いたのかな?まあいいか。気にしても仕方がない。とはいえ、心配してついていてくれたんなら一応礼でも言っておこうか。

「ミイナ、ありがとな。」

ミイナ「いいってことよ。ポッ。」

シイナ「だったら、次は私の話を訊いてちょうだい。」

ミイナの反応が可笑しくはあったが、思いの外真剣そうなシイナの表情に負けて話を聞きくに、昨日僕が倒れた後、そばから離れようとしないミイナを置いて、自分だけ二人が今住居にしている近くのお社に戻ったらしい。近所にあるその建物は築50年くらいだが造りが良く、その割には入り込む隙間も多くて、床下にはアライグマが、堂内にはクマネズミが住み着いていたのだが、数年前、屋根の雨漏りの修繕工事をしていた人間がいて、その時に二人はじいさんと知り合ったらしい。で、その修繕工事を終えた屋根裏に住み着いたのが

住いを探していた妖精どもだったというわけだ。そのころじいさんは、長年連れ添ったばあさまを亡くしたばかりでとても寂しそうだったとはシイナの弁だ。ともかくそれからは快適とまではいかないまでも、階下の動物たちとも上手くやっていた筈だったのだが、ここ最近お社の外で怪しげな気配があったのだという。

ミイナ「あれはきっと、ゴロニャンだよ!う~怖い。」

シイナ「そう、あれはゴロニャンだわ!由々しき事態よ。」

は?ゴロニャン?何だそれは。しかしミイナは顔をくしゃくしゃにして腕に縋り付いてきた。

ミイナ「ゴロニャンに見つかったら、私たち、食べられちゃうよぅ。」

シイナ「そうね、奴らには死んだふりも効かないんだから。」

シイナも血相を変えている。

「でもたかだか猫なんだろう?ペットボトルでも仕掛ければ

大丈夫だろう。」

ミイナ「ゴロニャンはそんな甘くないよ。死んだふりしても猫じゃらしで擽ってくるんだから。」

シイナ「奴らは狡猾なのよ。ああん、もう恐ろしくって、今朝だってうまく飛べなかったんだから。」

どうやら二人が怯えているであろうことは伝わってくる。だがそんな事を言っててもしょうがないじゃないか。ひとまず正確に現状を確認する事が必要なんじゃないのか。

 怯えて動こうとしない妖精たちを促して、お社というところ(多分あそこだろう)に様子を見に行くことにした。とりあえず開いているペットボトルを何本か用意して。


—余白—


特に時間もかからず、人気のない神社に着いたのだが、神社を囲う植え込みの陰に隠れお社の方をそっとのぞき込むと、そこには妖しげな猫?の着ぐるみ?を着た中年の小人の見た目をした何か、の集団がいた。

「何だ、アレは?」

ミイナ「うぅ、コワイ。」

シイナ「もう境内にまで、あんなにゴロニャン」がぁ。」

ミイナは頭を抱えて、シイナもビクビク震えながら、そいつらを見ている。しばらく様子を覗っていると、そいつらは妖しげな歌を歌いながら、何かを探すようにゆっくりと境内を歩き回っている。先頭のヤツは身長ほどもある猫じゃらしを抱えている。そのうち山の向こうから役場の昼を告げるサイレンが鳴り響くと、くだんのゴロニャンどもは一匹、また一匹と狭い通風孔からお社の縁の下に消えていった。都合10匹。あれ、縁の下にはアライグマがいたんじゃ?だが争いが起こっている様子はない。

ミイナ「アライグマ、やられちゃったのかな?」

シイナ「多分そうよ。ゴロンニャンには敵わないんだわ。あたしたちだって・・・。」

何とも言えない空気が漂っている。息苦しいような、出来の

悪い騙し絵に化かされているような。僕はその空気に耐えられなくなり、そして少々妖精どもの不安に当てられたような気分になっていた。どうするか。アライグマには特には思い入れは無い。だけど小さな妖精たちが怯え震えているのを見過ごすことは出来ない。倒せるかは判らないが今だったらやれる事はある。

「奴らはこちらに気がついていないのか?」

ミイナ「今頃は多分、縁の下で御飯を食べて、お昼寝をしている頃よ。」

シイナ「お昼寝中なら、大きな音がしても、まず起きてこないわ。」

おいおいゴロニャン。そんな事で大丈夫か?だけどそれならこっちのものだ。都合よく境内の水道も使える。

ミイナ「2時間くらいは起きないよ。」

シイナ「でも、どうする気なの?」

僕は妖精2人に縁の下の見張りを任せると、家に戻り自転車で街中のツ〇ハに向かった。そこでアレを購入すると1時間もかからずお社に戻ってきた。ペットボトル8本に水を満たす。そして、

「これで、一掃する。」

ミイナ「え、これって・・・。」

シイナ「あんた、なんて恐ろしいモノを。」

僕がツ〇ハで買ってきたブツを見て、妖精どもは恐れおののいた。

ミイナ「あ、あいつらをヤル気?」

シイナ「悪魔よ。悪魔の所業だわ。」

ぐちゃぐちゃ言う妖精どもを無視して、ぼくはまず縁の下の4つある通風孔の前にペットボトルを2つずつ置いた。そして隙間からバ〇サンを仕掛け×4つ、その場を離れた。これでしばらく待てば駆除は完了だ。

「まあまず、コレでも食って待っててみろ。」

とりあえずは腹ごしらえだ。僕はツ〇ハで購入した半額シールが貼ってあるラン〇パックを妖精たちに差し出したが、シイナも、なんとミイナですら受け取らず俯いている。

ミイナ「あわわわ・・・。」

シイナ「ガクガク・・・。」

妖精2人は動く気力もないようだ。そしてしばらく時間が流れて。よし、何も出てくるモノは無い。

 西日がお社に差し込むころ、ミイナがポツリとつぶやいた。

ミイナ「終わったの?」

シイナ「つわもの共が夢のあと、ね。」

西日が差し込む縁の下には、何かが」のたうち回ったような痕跡と、汚れた着ぐるみらしきモノが10体分、転がっていた。

「終わったな。」

ミイナ「そう、あなたのおかげ。」

シイナ「そう、終わったのよ。何もかも。」

寂寥感が僕らを包んだ。そう、脅威は去ったのだ、これで。僕は2人に言った。

「じゃあ、屋根裏に戻れよ。」

ミイナ「うん、ありがとね。」

シイナ「じゃあね。」

ブーンと音を立てて二人の姿がお社の屋根裏に入ろうとしたところで、「きいぃぃ」という声がして、入口らしき穴から獣が顔を出した。

ミイナ「あれ、アライグマちゃんだあ。」

シイナ「生きてたんだ。良かった。」

喜ぶ二人を無視するように、気配を察してか、キィキィわめきまくるアライグマ2匹。妖精どもの事は見えていないようだが。

「お前ら、知り合いじゃないの?」

ミイナ「私らの事は見えてないよ。」

シイナ「せいぜいクマネズミぐらいだからね。ここであたしらを普通に見られるのって。あ、ゴロニャンは別よ。」

ミイナ「引っ越しのあと、ちゃんと挨拶はしてなかったから・・・。」

シイナ「困ったものね。寝るところが無くなっちゃった。」

いや、もう少し粘れよ、お前ら。呆れて自転車で帰ろうとしていると、

ミイナ「良かったね、繋がっておいて。」

シイナ「一時はどうなることかと思ったけれど、何とかなるものね。」

ミイナとシイナは何食わぬ顔で僕の肩に乗ってきた。はぁ、とも思ったけれど反論するのも面倒くさい。

「じゃあ、帰るか。」

ミイナ「うん、じゃあコレ、捨てておいてね。」

シイナ「じゃあ、こっちもお願い。やっぱり後始末は大事よね。」

何かと思って渡されたモノを見ると、先ほど買ったランチ〇ックの空き袋じゃないか。お前ら、いつの間に食ったんだよ。ゴミ用のレジ袋の中には、紙パックの牛乳の空まで入っている。気づかなかった。ともかくそれらと、バル〇ンの空き箱も回収して、うん、後は忘れものはないな。

 どうやら今日から騒がしい暮らしが始まるようだ。まあ一人暮らしで暇してたからそれもいいか。昨日からどうも、自分がいい加減になってきているのを感じる。この、二人の空を飛ぶ妖精、いや妖魔か?を見つめながらまだ来ていない明日が漠然とした不安に彩られていくのを感じるのであった。






             終

彼らが歌っているのは、生きたかったら死になさい、という体操の歌ですがコロ〇ビアさんに喧嘩売るのは怖いです。でも青〇望さんの音楽は好きです。

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