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みんなキミに注目しはじめてるよ!?

「ごめん!! まずいことになった!!」

「……なんだよ、今度は」

「配信、切れてなかった!! あのときスマホ落としてたじゃん!? それで君の行動が見切れちゃったみたい!!」


水無瀬リオが焦った顔で捲し立てる。

俺は頭を掻いて溜息をついた。


「まあ、でも、顔が映ってるわけでもないだろ? 見切れたぐらいじゃ、たいした問題にもならないだろ」

「いやいや、かなり大事になりそうだけど!? もう、みんなキミに注目しはじめてるよ!?」

「単なる一般人が見切れたくらいで? 大げさに考えすぎだ」

「ならいいんだけど……。……それにしても、キミってすごいね。幽霊を物理で倒しちゃう人なんて、初めて出会った。とんでもない能力だよ!」

「らしいな」

「なんでもないことみたいに言うじゃん!?」

「俺には幽霊がまったく見えないから、実感がないんだよ」

「ええ!? 本当にすごいのに……!  霊感がなさすぎるせいで幽霊に対して無敵だってことなのかな……。うーん、でも、相手の攻撃をかわせるとかならわかるけど、なんで攻撃をくらわせられるんだろ」


ダンジョン内では、毎日といっていいほど、死亡事故が起こる。

そのせいもあって、心霊現象や幽霊の目撃情報は後を絶たない。

とくに深層部は、強力で厄介な霊の住処になっていることが多い。

彼らは生きた人間に対して攻撃的で、どうにかして死者の国に連れ込もうとしてくる。


取り憑かれて仲間を殺害したり、正気を失って自殺したり。

霊の力によって、命を落とす探索者がいるという話を、俺は何度も耳にしてきた。


「ダンジョンの深層部に潜る探索者たちにとって、幽霊を撃退できるキミの能力はとんでもない武器になるよ。きっと、一流の探索者たちから勧誘が殺到してるでしょ? キミが一緒にいてくれれば、心強いなんてもんじゃないはずだし」

「いや、探索者パーティーに加入するつもりはないから、この力は隠しているんだ。たまに、心霊問題で命の危険に襲われた探索者たちと出会って、手助けをすることがあるが、吹聴しないよう必ず口止めをしている。だからあんたも黙っていてくれ」

「えっ?! もったいない! その力を使えば相当重宝されるはずだよ。配信者になったら一気に人気者になっちゃうのに」

「人気だの名声だの、そういうのには興味ない。目の前の仕事を片付けるだけだ。――さてと、幽霊問題も解決したし、俺は自分の仕事がある。そっちはそっちで戻れるだろ?」


そう声をかけると、水無瀬リオは「あ……」と情けない声を漏らした。

ぺたりと座り込んだまま、俺を見上げてくる。


「……まさか、腰を抜かして動けないのか?」

「ぅぅ……だって、ガチでヤバかったんだもん……。ほんとに死ぬかと思った……」


涙目で訴えかけてくるので、つい苦笑が漏れた。


「よくそんな怖がりで、心霊配信なんてできるな」

「そこは、ほら……。『怖がりながらも挑んでる姿を応援したい』とか言われるし……。だったら、需要に応えなきゃって思うじゃん?」

「とんでもなく前向きだな」

「それは自信ある! ……って、ごめん。めちゃくちゃ迷惑かけてるのに、何言ってんだろ」


水無瀬リオは目をぎゅっと閉じ、身を縮めた。

その仕草が、反省している子犬を想起させてなんとも可笑しい。


とりあえず、この状態で放っておくのはさすがに気が引けた。

仕方ない。遺体回収は明日に延期だな。


「ダンジョンの外までは責任もって連れ帰る。そこからは自力でなんとかしてくれ」

「えっ、連れ帰るって……ど、どういう――うぎゃああっ!?」


混乱している水無瀬リオの体を抱き上げると、彼女の顔が一瞬で真っ赤になった。


「ちょ、ちょちょ!? お姫様だっこ!? ムリムリムリムリ!! 重いから!」

「これのどこが重いんだ? というか暴れないでくれ。落ちるぞ」

「ほんと、最近コンビニスイーツ食べすぎててヤバいんだって!!」


水無瀬リオがじたばた暴れた拍子に、柔らかい感触がむにっと腕に押し当てられた。


一瞬、空気が止まる。


「……」

「……」


数秒遅れて、リオの顔がぱっと真っ赤に染まった。


「ち、ちがっ、ちがうのっ!! いまのは事故! 完全に事故だから!? わざとじゃないからね!?」


早口で捲し立てたあと、自分で言って余計恥ずかしくなったらしい。


「うわぁぁぁ! 言わなきゃよかったぁぁぁ!!」


両手で顔を覆ってジタバタする。


……やめてくれ。

こっちまで意識するだろうが。


荷物みたいに持ち上げただけのつもりだったのに、こんな生々しい状況になるなんて想定外だ。


俺たちが馬鹿なことをやっている間も、水無瀬リオの手の中のスマホでは、コメント欄がカオスになっていた。


《ぎゃあああ!? 抱っこ!? お姫様だっこ!?!?》

《りおまる顔まっかwwwwwww》

《尊いの暴力(語彙消失)》

《てか誰この男!?!?!?》

《顔! 顔うつして!!》

《画角がんばれ!! 右にちょっとずれて!!》

《いやマジで男がイケボすぎるんだが……》

《顔だけずっとフレーム外とか焦らしプレイか!?》

《心霊生配信どうなった》

《突然カップルチャンネルはじまった》

《投げ銭するから顔みせて!》

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