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サマービーストフェスティバル

作者: くんちゃん

町外れの広場で開催される「サマービーストフェスティバル」は、毎年夏の風物詩だった。参加者はカラフルな動物やファンタジーキャラクターの着ぐるみを着て、ダンスやパレードを楽しむ。だが、このイベントには誰もが知る暗黙のルールがあった。「どんなに楽しくても、着ぐるみは1時間以内に脱げ」。なぜなら、噂では3時間以上着続けると「着ぐるみと体が融合してしまう」というのだ。誰も本気にはしないが、暑さでフラフラになる前に脱ぐのが賢明だった。


主人公のユウトは、高校2年生の17歳。内気な性格で、普段は目立たない存在だ。ある日、クラスの人気者・アカリに「一緒にフェスティバル出ようよ!キミ、絶対カッコいい着ぐるみ似合うよ!」と誘われ、断れずに参加を決めた。アカリが選んだのは、ユウトには少し派手すぎる「金のライオン」の着ぐるみ。ユウトは「こんなの…目立つじゃん」とブツブツ言いながらも、彼女の笑顔に押されて着ることにした。


フェスティバル当日、広場は熱気と笑い声で溢れていた。ユウトは金のライオン姿でアカリの「銀のオオカミ」と並び、ぎこちなくパレードに参加。子供たちに手を振ったり、音楽に合わせてステップを踏んだりしているうちに、意外と楽しい気分になってきた。だが、30分も経つと着ぐるみの中はサウナ状態。汗で視界がぼやけ、頭がクラクラする。「アカリ、そろそろ脱ごうよ…」と訴えたが、彼女は「えー!もうちょっと!ライオンとオオカミのコンビ、めっちゃウケてるよ!」と笑い、ユウトを引っ張り続けた。


1時間が近づいた頃、ユウトは限界を感じていた。だが、アカリが突然「ねえ、ユウト!あのステージでダンスバトルやってるよ!私たちも出てみない?」と目を輝かせた。ユウトは気弱に「いや、でも…」と口ごもったが、観客の「ライオン!オオカミ!」という声援に流され、ステージへ。ダンスは予想以上に盛り上がり、ユウトもアドレナリンで暑さを忘れた。アカリと息の合った動きを見せ、拍手喝采を浴びた。


だが、時計は無情にも進む。ダンスバトルが終わった時、ユウトが着ぐるみを着始めてから2時間45分が経過していた。「やばい、脱がなきゃ!」と慌ててファスナーを探すが、汗で手が滑り、思うように動かない。アカリも「え、ユウト、大丈夫?」と心配そうに声をかけたが、彼女自身もオオカミの着ぐるみで汗だくだった。


そして、3時間の境界線を越えた瞬間――ユウトの体に異変が起きた。全身が熱くなり、金のライオンの毛皮が皮膚に溶け込むように一体化。視界が鋭くなり、喉から「ガオオ…」と本物の咆哮が漏れた。驚いたことに、アカリも同じだった。彼女の銀のオオカミの耳がピクピク動き、瞳が野生の輝きを帯びている。「ユウト…私たち、どうなっちゃったの!?」と叫ぶアカリの声は、半分オオカミの遠吠えのようだった。


会場はパニックに陥った。他の参加者はとっくに着ぐるみを脱いでいたため、融合したのはユウトとアカリだけ。主催者の老女が静かに現れ、冷静に言った。「おや、今年も融合者が出たか。まあ、運命だねぇ」。ユウトは「ガオ!(運命って何!?)」と唸ったが、言葉は通じない。主催者はただ微笑むだけで、二人をそのまま放置して去ってしまった。


その夜、ユウトとアカリはライオンとオオカミの姿で町を抜け出し、近くの森に逃げ込んだ。人間の言葉は話せないが、なぜかお互いの気持ちは通じ合った。「どうしよう…このままなの?」とアカリがオオカミの目で訴えると、ユウトは「ガオ…(とりあえず隠れよう)」と答える。二人は森の奥で身を寄せ合い、これからどう生きていくかを考え始めた。

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