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「契約結婚だって言ったよな?」「そもそも結婚って契約でしょ?」~魔術師令嬢の契約結婚~  作者: 神田柊子
第三章 ネックレスと指輪の魔術

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呪いのネックレス

「まあ! これが私?」

 ジェシカはドレスで着飾った自分を鏡に映して、胸元のネックレスを見つめた。

「魔力がいつも以上だわ。サファイアから流れ込むおかげで身体を巡回するから、治癒術に近い効果も得られているみたい。元が自分の魔力だから反発もないし」

「ジェシカ、綺麗だよ」

「……すごいわ。今ならなんでもできそう」

 両手を開いたり閉じたりするジェシカには、ユーグの誉め言葉も届かない。

「ジェシカ!」

「ちょっと! ユーグ」

 後ろから抱きつかれてうなじに軽く口づけられ、ジェシカは声を上げた。

「ネックレスがすごいのはわかったから。俺にも君を愛でさせて」

 変装の指輪を改良したウィッグの指輪は大人気だった。オンフィールド商会に委託して、専門店を立ち上げてもらい、魔術師を雇って客一人一人に合わせて微調整するオーダーメイドだった。

 メイジャーが宣言したように特許は一か月もかからずに通り、販売にこぎつけるまで三か月。商会関係者も全力で協力してくれた。

 あのとき会議室に集まっていた紳士の会の主力メンバーに指輪が行き渡ったころ、礼も兼ねてとリアス侯爵から夜会の招待状が届いた。

 指輪の使用感も聞きたいと思って、ジェシカは夜会に参加することにしたのだ。

 要らないと言ったのにユーグが作ってくれた新しいドレスは、黒に近い紺だ。裾に線と点で構成された幾何学模様が染められているが、よく見れば星座の図だとわかる。

 買い取ったスターサファイアのパリュールのうち、ネックレスとイヤリングを身につけた。

「魔力に関係なく似合っているよ」

 ユーグはチェーンに沿って、ジェシカの鎖骨をなぞる。

 魔力を吸い取るサファイアの実験は、三長老の監修、ユーグの監視の元で行われた。

 平時に魔力を溜めておいて緊急時に使うことを想定して、どれだけ魔力が込められるのかを調べた。

 実験は、ジェシカが意識して魔力を注ぐという単純なものだった。

 その結果、サファイアには上限があり、それはかなりの量だということがわかった。実験を繰り返して、ジェシカが持っている魔力の三倍ほどを貯めておくことができた。上限まで貯めれば、ジェシカを追いかけることも勝手に魔力を吸い取ることもない。

 身につけてみると、魔力を整える効果もあり、想像以上のアイテムだった。

「髪も似合ってる」

「本当?」

 ジェシカは自分用に作ったウィッグの指輪をつけていた。髪の色を元の小麦色から金色に変えている。

 ユーグと同じ色だった。

 ジェシカはユーグの手を取って、くるりと振り返り彼を見上げる。

「あなたと同じ色にしてみたの。こげ茶色と迷ったんだけれど」

「金を選んでくれてうれしいよ」

 ユーグも今日は素顔だった。

「前髪をあげているのね? あら、メガネ?」

「そう。……牽制はしたいけれど騒がれたくはないから苦肉の策なんだ……」

「牽制?」

「いや、こっちの話」

「あら、このタイピン。私のサファイアと揃えたの?」

「ああ、姉さんに探してもらったんだ」

 色が濃いからパリュールの揃いの分も集めるのに苦労したとマリアンヌから聞いたことがある。

「今日は全部お揃いなのね」

 にっこり笑うと、ユーグはジェシカの頬に手をあてた。

 口付けが降ってくる流れにジェシカは素直に目を閉じる。

 そこで、待ったがかかった。

「お嬢様、ユーグ様! そういうことは帰ってからになさいませ!」

 ずっと黙って見ていたメイドのアンだ。

「馬車が来ましたよ」

 執事のデニスもやってきた。

 ジェシカとユーグは顔を見合わせて笑う。

 彼が差し出した腕に手を預けるジェシカの胸元で、サファイアの星がきらりと瞬いた。



終わり。

何か思いついたらまた続くかもしれませんが、いったん終わります。


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