3
あおの寝ているベットの横にある白い棚の中には本があった。(あおの好きな本だからだった)その本の中に一冊だけ、神さまの本が置いてあった。
そら。人にはね、四つの苦しみがあるんだって、と画用紙に書いてあおは言った。
「四つの苦しみ」と神さまの本を読みながら、難しい顔をしていた(間違ってなにか変なものでも食べてしまったみたいな顔だった)そらはあおを見て言った。
生む苦しみと(生きる苦しみだったっけ?)老いる苦しみと、病気になる苦しみと、死んでしまう苦しみの四つの苦しみがあるの。とあおは画用紙に書いて言った。
「なるほど」とうんうんとうなずきながらそらは言った。
わたしは生む苦しみと、老いる苦しみは経験しないと思う。その代わりに、病気になる苦しみと死んでしまう苦しみが、普通の人よりも少しだけ大きいんだと思うんだ。わたしの余命がだいたい一年くらいだから。とあおは画用紙に書いて言った。
「それじゃあ、あおはわたしとおんなじくらいですね」とふふっと笑ってそらは言った。
え? どういうこと? とあおは(珍しく驚いて)画用紙に書いて言った。
「わたしの『活動限界期間(ロボットが動けなくなるまでの期間)』も、あとだいたい一年くらいですから」とそらは言った。
そうなんだ。ごめんなさい。とあおは画用紙に書いて言った。
(だけど、そらにはなんであおがごめんなさいをしたのか、その理由がよくわからなかった)