表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダスク・シンドローム  作者: 有町 衣
はじまり
6/18

日常

「いや、いやいやいやちょっと待てい!」


「これは命令だ。二度は言わん」


「なんでじゃあ!」

 思わず立ち上がる。


 開いた口が塞がらないとはこのことだ。


 月詠お前、何言ってんだ?こちとら普通に憑かれて死にかけた素人だぞ!?


”すごいはなしだ、よかったねそうた!”


「良くねえわ!」

”そうなの……”


 月光お前、実は話良く分かってないだろ……。


 一気に脱力して、ぼすんとソファに座り直した。

 なんとかしてこの子を説得しなきゃ……。


「いや、あのな月……緋村。俺今日こいつに憑かれて死にかけたからね?流石に国の仕事は無理かなー、なんて……」



「あぁ、面倒臭いな……命令だと言っただろう?これ以上同じことを言わせるのか?お前は馬鹿なのか?私は馬鹿と雲丹がこの世で一番嫌いだ」


 露骨に顔を歪ませ、毒突かれた。


 俺の脳内で悪口と書かれた板が勢いよく滝壺へと滑り落ちていく。

 雲丹が嫌いとか贅沢な奴め!と喉まで出たけど我慢だ。


 人間同士の喧嘩を見兼ねたのか、昂炎が俺たちの間に入ってくる。


”あー……水谷クンごめんな?一応理由としては、お前さんと月光の管理を効率よくする為なんだ。その体質だとまたいつどんな霊に憑かれるかも分からんからな”


「ま、まぁそれは確かに……」


”てへへ”

”月光は褒めてないからな”


 月光がしょぼーんとして俺の膝に帰ってくる。

 俺はそれを見て、溜め息。突飛すぎる。


 体質は仕方ないけど、いくらなんでも損しすぎだ。


「だからお前はここで働け。もう言わんぞ」


”まず一週間でいい!どうしても駄目そうなら無理にとは言わねえ。高校生だしな”


「はい……」


 ぶっきらぼうな月詠と、諭すような口調の昂炎にもそもそと返事をした。


 こうして、俺の日常はおかしくなりはじめた。





「えーと……今日は水曜、だから仕事はないな」

”だねー!”


 月曜から月詠の手伝いを始めて、もう3日目だ。


 水曜日は俺の友達が全員部活が休みの日だから、交友関係を邪魔しない為だとか言って仕事を休みにしてくれた。

 仕事とは言ってもまぁ、難しそうな書類と向き合う月詠をぼーっと見てるだけなんだけど…。


 帰り支度を終えた俺に、友人の1人が話しかけてくる。


「創太ー今日は暇かよ?」


「トモ!暇だよ、どっか行くか?」


「おお、ボウリングとかどうよ?他の奴ら誘ってくるわ」

「へーい」


 手をひらひらさせて駆けていくトモを見送る。

 ここのところずっと月詠に拘束されてたからなぁ。解放感がすごい。


 まぁ、月光はいるんだけど……慣れてきたしもういいや。


”たのしそう!”

「いやー楽しいぜ?あ、ボウリングって分かるのか?球を投げて立ってるピンを倒すんだよ」


”いいなー。ぼくもぼうりんぐ、したいー”


 出来ないじゃん。

 月光を見上げた瞬間、ドタドタとトモが帰ってきた。


「っしゃー創太!久々に投げまくるぞ!」

「おっやったね!」


 どうやら1チーム分誘えたみたいだ。テンション上がってきたぜ!


「そうと決まれば早いとこ家帰って着替えねぇとな!場所はいつものとこでいいのか?」

「おーよ!じゃあ後でな!」


 鞄を引っ掴んで出ていくトモ。


 嵐のような奴だ……いい意味でな?


 俺も早いとこ帰らなくちゃ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ