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第32話 新学期?そんなことよりバイトだ

 春休み突入───まで秒読み段階。


 まぁ、進級に関しての不安などはない。

 クラス分けも、それほど気にすることでもない。

 一説には、そのまま持ち上がりでクラス替えは無いのじゃないかという噂もある。

 担任……、別に誰でも。

 僕には、そんなことは些細な問題だ。


 ───それで良いのか!? 高校生!!

 いいんです。


 僕にとって、今の課題は「契約」と先生、そして研究所なのだ。


 この前、買ってきた食材は無事に研究所の冷蔵庫へと収まった。

 そして、明日には物資の第二弾が届けられることになっている。




 今回の物資は、少々量が多い。

 予定通りなら、重機まで運ばれてくるのだから。


 昨日までで、ぎりぎり通れるくらいの草刈りと枝払いは済ませておいた。

 そして、監視装置である、対人対物センサーも設置済み。


 センサーによる防衛ラインは三段階。


 第一は、例の「この先私有地」の立て札のある私道への入口の部分。これは南と北二箇所に設置してある(源さんが設置してくれていたものだ)。


 第二は、鉄門扉のある敷地への導入路のところから、門扉の直前まで。

 ここは、センサー類を重層的にセットしてあって、浅い部分だけだと反応しないが、門扉に明確に近づいてくる動きを察知した時点で警告を発するようになっている。子供や、通りすがりの人間のいたずらを防ぐために、敷地に踏み込んだ場合スピーカーから音声による「機械警備中です、ご退出ください」のメッセージも流れるようにしてある。


 監視カメラも設置してあるが、これは電源が届いていないためまだ稼働はしていない。カメラの映像は、研究所内から常時確認できる他、録画もされている。スマートフォンからも確認できるようにしてあるが、これは録画記録から呼び出しているだけなので、リアルタイムではなく10秒ほどのタイムラグがある。


 第三段階は、壁の内側。

 壁の内部に侵入を感知した場合、スマホのブザーが強制的に鳴るようにしてある。さらに、直接源さんにも連絡が飛ぶようにしてある。すぐに駆けつけることは出来ないだろうが、非常事態用に現地で動ける人間を何人か待機させているということは教えてもらっていた。


 だが、ここまで侵入された場合、ほぼ「詰み」という扱いだ。


 侵入者を物理的に排除する、という手段は本計画では行わないという方針を、この前の話し合いで決めていた。

 理由はどうあれ、傷害事件など起こしてしまったら、その時点で計画は水の泡だからだ。


 あとは、日々のメンテナンス。

 機材のバッテリー確認と、壁の綻びのチェック。

 周囲の道路から目線が通る所がないか、など。

 僕の作業は、多岐にわたる。


 そして、先生のサポート、体調管理………、そして()()()()

 これらは……、僕の最大の役割である。

 こんなはずじゃなかったのに……しくしく。


 …………………


 明日は、春休み突入前の最後の週末。

 その次の週が終われば、僕は研究所へ泊まり込む日々が始まる。


 できれば、春休み中に大掛かりな工事は済ませてしまいたい。

 それが無理なら、せめてお風呂とトイレくらいは……。

 いや、台所のほうが先かな……。


 資材の搬入スケジュール次第だが、それらが終わってしまえば、僕の任務は半分終わったようなものだ。後は、日々のメンテナンス……そして、……福利厚生。


 う~ん……。

 だが、目下の課題は地下水槽だ。


 一度、先生に地下への入口を開けてもらって、水槽の確認をしたのだが、水量が多く汲み出すのは一苦労だろう。見たところ、青く透き通っていて、そのままでも十分使えそうなものだが、一応井戸の再生のセオリーに則って、一旦全部汲み出し清掃して、改めて水が貯まるのを待つ、という手順を踏むことにする。

 その後、先生に水質の検査をしてもらって、問題なければ運用開始、という具合だ。化学系の研究所だったこともあって、水質検査などはお手のものらしい。


 水が自由に使えるとなると、次に問題になるのが排水だ。


 上水だけ生きている、という状況は、考えようによっては下水だけ生きているというより厄介だ。使った分の処理が一切できないからだ。

 これは早急に取り組まねばならないだろう。


 僕の、工事現場スキルがどこまで通用するのか、不安もあるが楽しみでもある。

 それらがうまく運用できれば、今後の作業にもはずみが付くだろう。


 源さんの方の手配が順調なら、最初に油圧パワーショベルと浄化槽本体、汲み上げポンプ、それとセメント類と工具類、それから、待望の電源装置が届くはずだ。

 軽トラックは、積めるようなら積んでくる、的なことを言っていた。

 大型積載車一杯に物資を搭載してくるのだから、さすがに自動車までは難しいのかもしれない。


 そして、実際に重機が来ても動かしてみて周囲に気取られるほどの騒音を出すようなら、一旦考え直さなければならない。

 実際のところは、それほど気にしなくても良いとのことだったが、騒音を撒き散らしていいという意味ではない。物がモノだけに、目立つことこの上ないのだ。届け出している現場でもないため、労働監督署の査察が入る恐れすらあるのだ。


 そして、燃料──。


 これは、今回の輸送で最も憂慮する部分でもある。

 今回はドラム缶に詰めて積載してくると言っていた。

 研究所まで届けばそれほど問題ではないのだが………。はっきり言って、()()()()()()()()()()()()()運搬方法だからだ。具体的に挙げるのも馬鹿らしいくらい。

 そのため、有事に備えて5名体勢で輸送してくると言っていた。


 ……具体的な方法は、聞くな。

 源さんはそう言っていた。


 申し訳ないが、ここはおまかせするしか無いだろう。

 無事を、祈っております───。


 …………………

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