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25.王子、思いつく


 マクシミリアンもグレアムも、ここ数日離宮に来ていない。

 そのことに、クリストファーは不安をおぼえた。

 もしや二人にまで見捨てられたのではないかと。

 いったいいつまでこんな日々が続くのか。自分はそこまで重罪を犯したとでもいうのか。それを考えると気が狂いそうになった。

 最近は夜もなかなか寝つけず、深酒をして意識を失うように眠りに落ちることが多くなった。

 静まり返った部屋の中、ソファに力なく座るクリストファーの頭に浮かぶのはアレクシアの顔。

 自分を愛してくれていたアレクシア。それなのに、傷つけてしまい、他の男に奪われてしまった。


(アレクシアは本当に私を愛していたのか? ……いや、人を見る目のあるマクシミリアンが言うのだからきっとそうだろう。たとえ違っていてももういいんだ。私が愛しているのだから。あぁ、会いたい。会えばすべて上手くいく。会えたら……)


 今度こそ余所見などしない。

 愛していると伝え、素晴らしい夫婦となるというのに。


(アレクシア……アレクシアアレクシアアレクシア。君にあんな男は相応しくない。私の方が何もかも上だ。一時の気の迷いで、君を失いたくない……アレクシア……)


 ミレーヌの顔すらおぼろげになってきているのに、アレクシアの顔だけははっきりと頭に思い浮かぶ。

 やはり自分が愛しているのはアレクシアなのだと確信した。


(私はここから出ることすらできない。一体どうしたらいいんだ。レニーに暗殺者を差し向ける? いや……辺境伯家は重要な役割を担っている。万が一にでも露見すれば、軟禁どころではすまないだろう。ああ、だがもたもたしていて私のアレクシアが野蛮な田舎騎士に汚されでもしたら……)


 婚約届が正式に提出されればもはや手の打ちようがない。

 一体どうしたら、と頭を抱える。

 どうにかしたいのに、どうにもできない。その事実が気力を奪っていく。


(私にはもうどうすることもできないのか……)


 テーブルの上に乱雑に積まれた本に、ふと目が行く。

 グレアムが暇つぶしにと置いて行った何冊もの様々なジャンルの本。その中でまだ読んでいないものを適当にテーブルの上に積んでおいたが、タイトルに惹かれて一冊の本に手を伸ばした。

 ページをめくるほどに、クリストファーの瞳が輝きを増す。


(ああ……そうか。この手があったか。アレクシアを正当な手段で奪い返すことはできないが、ようはレニーが自ら婚約を辞すほど恥をかくか、アレクシアがやつの情けなさを目の当たりにして見限ればいいのだ)


 クリストファーが笑みを浮かべる。


「アレクシア、君を取り戻す。そうすればすべてが上手くいく。すべてが元通りになるんだ」


 低い笑い声が、静かな部屋に響いた。

 

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― 新着の感想 ―
あ~ほんとこのバカ王子気持ち悪い
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