次元 -その性質と関連現象について
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《PLEASE STAND BY》
《3,2,……》
どうも、皆さん。こんにちは、或いはこんばんは。立葵です。記念すべき第1回目、今回は第8異聞記録、DAY"BREAK"の世界観を語る上で重要な要素である"次元"というもの、その性質と関連する事象についてお話していきたいと思います。
まず最初に"次元"という言葉が一体何を指している言葉なのか、それを説明していきたいと思います。
次元、という言葉は一般的に、空間の広がりとして用いられるものです。これは数学的な考え方ですが、物理学的に考えれば、「いくつかの基本的物理量に対して、一般の物理量がどのような関係をもつかを示す式」(University of Oxford 2023:https://languages.oup.com/)となります。数学の講義を受けたことのある皆さんならば、この言葉をうんざりするほど聞いたことがあるかもしれません。ま、そちらの場合は自由度だとかそういった指標が関係する訳ですが、ここでは特に関係ないので省略しておきます。
今回取り扱う"次元"なるものは、まさに空間の広がり、それも世界の構造を示すものとして解釈される事象です。少なくともこの作品の中では簡単に「次元=世界」と捉えていただいても構わないでしょう。
では次に、この作品における"次元"の概略についてざっとお話しましょう。
まず、この作品は2つの次元を通して物語が展開されていきます。それぞれは朽湍界、そして讖湍界と呼称されています。朽湍界とは、物語の中軸である、……例えば、皆さんならばご存知であろう壬澱連邦共和国だとか、オメガ・テス共和国だとか、そういった国々が存在している世界のことです。一方讖湍界は我々にとっては馴染み深い、日本だとか、アメリカ合衆国だとか、そういった国々が存在している世界のことを指しています。
そしてこれら2つの世界は後述する性質により、決して混ざり合うことなくそれぞれ独立に存在しています。こちらの図をご覧ください。――って、やっぱり出ませんかね? 機材も古いですし、仕方ありませんね――さて、話が逸れました。こちらの図は、2つの次元を立体的に表したものです。この図に示されている球体はそれぞれの次元を示しており、これらは1本の筒状の空間によって接続されています。その外の部分は虚無空間と呼ばれており、物理学的には何も存在しないものとして認知されています。これはまるで、宇宙空間における"アインシュタイン・ローゼンの橋"のようですね。
そして、今言及したこの筒状の空間は学術的に"スレッショルド"、一般的には"ゲート"と呼称されています。実際の見た目は空間に裂け目ができたような構造をしているのですが、この空間を媒介することで2つの次元間を事物や生物が行き交うことができるようになるのです。この現象を、一般的には"転移"と呼んでいます。しかし、皆さんはお分かりかと思いますが、この図は説明のためにに簡略化されたものであり、現実に存在するスレッショルドも安定的に、また恒常的に存在しているものではありません。
それでは、その安定性の鍵を握るものとは何か、次元の性質を追うことで明らかになるでしょう。
ここまで見てきたように、2つの次元はそれぞれ独立に存在しています。それも、立体的な構造を有した状態で。では、何故これらの次元は独立して存在しているのでしょうか。いえ、ここでは存在"し得る"という表現のほうが適当ですね。……それは"次元素"というものを理解することできっとお分かりになると思います。
次元素とは、その次元を構成する素粒子のことを指しています。ですから電子やグルオン、ウィーク・ボソンだとか、果てはクォークのようなものがこれに該当する訳です。
そして、既に本編を読まれている方なら見覚えのあるであろうマナプトンもここに含まれています。
マナプトンは、朽湍界に固有の次元素です。この次元素の存在こそが、朽湍界という次元の性質を決定付け、独立した世界の存在を可能にしたのです。
異なる次元素の存在は、異なる次元間の融合を阻害します。それは次元の持つ、構造的な性質の違いによるものです。例えるなら、水と油のように。水はヒドロキシ基を持ちますが、一方で油と分類される物質の多くはエーテル結合を有しています。両者が異なる官能基を持ちながらも、互いに対応するものを持っていなかったが為に相容れない存在となってしまっているのです。
次元もこれと同様に述べることができます。ここではマナプトンとそれに融和して存在するそれぞれの素粒子の存在こそが2つの次元における異なった性質としての役割を果たし、互いに相容れない存在として2つの次元が独立に存在しているということになります。
そしてこれら2つの次元構造におけるエネルギーが不安定化、つまり次元構造間のエントロピーが増大し、両者の構造維持に関与する次元構造学的エネルギーの波長が共鳴することによってスレッショルドが発生します。この際、スレッショルドに入り込んだ事物及び生物がもう片方の世界へと転移することが可能になります。また、先述したようにスレッショルドは不安定な空間として一瞬間にしか存在することができない為に、この転移現象は常に一方向性を保っているという訳ですね。
それでは最後に、本編に関わる話を少しだけ。
今、私はスレッショルドを介した転移現象について常に一方向性を保っているという話をしました。それは互いの次元が有している次元素の差異によるものであるという話も。
それでは、朽湍界にのみ自然に存在し得る次元素であるマナプトンが転移現象を介して讖湍界にも安定的に存在することができるようになるのでしょうか?
……答えはNO。否です。まあ、皆さんお分かりかと思いますが。
実際、素粒子としてのマナプトンは讖湍界において観測例はありません。人為的にマナプトン単体を持ち込もうとする試みもその全てが失敗に終わっています。
ただ例外的に、物質の組成の一部のマナプトンが入り込んだ魔素汚染を受けた事物や生物に関しては一時的ですが存在することができるようです。しかしながら、このとき存在する被魔素汚染体は次元構造学的エネルギーが非常に不安定であり、外的刺激に曝されると即座にスレッショルドを生成する可能性を孕んでいます。
転移現象とはつまり、次元構造におけるエネルギーの安定化を目指す運動なのです。
これが示すのは、讖湍界から朽湍界への転移現象が発生する要因の1つに、讖湍界側の生物あるいは事物が魔素汚染を受けた物質に衝撃を与えることが含まれるということになります。
……では、そろそろお時間ですね。次回は、2つの次元を巡る人類の歴史について皆さんにお伝えしたいと思います。
それでは、よい1日を。
《To be continued》
(ビデオ終了)
〈引用文献〉
・University of Oxford,(2023), "Oxford Language", https://languages.oup.com/,(最終閲覧日2023年3月25日)