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第十五話『どうやら体育祭の季節のようで』

誰かさんの方は色々充実していた数日だったんだろうが、オレとしては特に何もなく普通の学校生活を過ごしている。


「今日から体育の授業が体育祭の練習になるね」

「そういやそうか。中間テスト終わってそんなに経ってないのにもう次の行事か、慌ただしいな」


中学生の時はもっとスカスカだった気がする。

まあその分部活が忙しかったが。


「体育祭楽しみだ!」

「入学前のオリエンテーションで聞いた感じだと、結構規模大きくて盛り上がるらしいな」

「力入れているって言ってたよね。今年は何するんだろ」

「今日の一、二時間目は全校で集まって説明とかをするって言ってたな」

「いやー授業が少なくなっていいねぇ」

「それには同意する」


流石に勉強と体動かすのどっちが好きかと言われたら体動かす方だしな。



======



説明は体育館で行うということで全校生徒が体育館に集まっていた。


うーむ、全校集会の時も思うがやっぱりこんだけ人が集まると人酔いしそうだよな。

まあこの場に千人以上いるんだもんだもんな、そりゃあ多いわ。

中学の時も集まった時に貧血とかで体調悪くする人いたが、やっぱ人混みが関係してたのかね。

あれで無理ならこの場はもっと無理だろうな。



ん、並んでる間にプリントが回ってきた。

これは……体育祭のタイムスケジュールか。

ふむふむ、玉入れ、ムカデ競争……なんだこれ?

名前だけじゃわからん競技もあるな。


おお、教職員競技とか保護者競技とかある。

何やるんだろ、やっぱ大人も競技参加した方が面白いよな。


「はい、今から体育祭の説明を行います」


壇上に三年生が上がり、説明が始まった。


へぇ、先生じゃなくて体育祭委員の委員長が説明するんだ。


「手元の紙を見てください。スケジュールと各学年が行う競技が書かれています。しばらくの間体育の授業は各学年の競技や集団行動の練習となります。競技自体の説明は体育の時間に行われるため、ここでの説明は割愛します」

「体育祭は例年通り赤、青、黄、緑の四つの組に分かれて点数を競います。説明の後に各クラスをそれぞれの組に案内しますので」


前聞いたのと一緒の配色だな。

この学校は三十人の十二クラスだから分けやすい四組になってるんだろう。

三でもいいんだろうが、奇数よりも偶数の方が色々やりやすそうだ。


「雨天時は次の週に予備日を設けていますが、ここ数年体育祭に雨が重なったことはありません。今年も快晴を迎えられるといいですね」


一年生のところからおおーという声があがる。


どうやらこの高校には相当な晴れ人がいるらしいな、すげぇや。

熱中症や怪我のリスクを減らすために夏じゃなくて今ぐらいに体育祭やってるって先生言ってたっけ。

雨が降らないんなら六月でも問題ないよな。



しばらく体育祭の注意事項の説明がされる。

まあ恰好がどうとか持ち込むものがどうとかといった、よくある話だ。



「これで説明は終わりですが、組に分かれる前に校長先生からお話があります。校長先生、よろしくお願いいたします」


「はい、みなさんおはようございます。今年も体育祭の時期が――」



時間にして約三分ほど校長先生の話は行われた。



「――です。みなさん、最優先は怪我をせずに楽しむことですので。勝ち負けは二の次で存分に体育祭を楽しんでくださいね」


うん、アニメみたいに長々と話をする校長先生じゃなくてよかった。

なんか途中アツくなってたけど、校長先生運動好きなのかな。


「校長先生、ありがとうございます。では、各組の組長がクラスを呼びますので、呼ばれたクラスはグラウンドに立てられているそれぞれの色の旗に移動してください」


あれがそれぞれの組長か。


自分の組はどこだろうと各組長の話に耳を傾けるのだったが、その話は淡々とクラスを読み上げるのではなく――


「まずは赤組からだ! 俺が赤組組長だ、みんなよろしくな! 同士となるクラスは――――だ! 熱血パワーで目指せ優勝だ!」


「次は青組だ。みんなよろしく。青組に入るクラスは――――だ。注力する部分を見極めてしっかり点を取っていこう」


「次は黄組だね! 私が組長だよ、よろしく! 一緒に頑張る仲間になるクラスは――――だよ! みんなで盛り上がっていこう!」


「最後は緑組ですね~。私が組長です、よろしくお願いします~。お友達となるクラスは――――ですよ~。仲良くしていきましょうね~」


――自分の組がどこだったか忘れそうになるぐらいにはインパクトが大きかった。


う、うん……皆さんなんかキャラ濃いっすね。

気のせいか各組の色にあったキャラをしている気がする。

これが組長を任されるにふさわしい人材ってことなのか……


「では一年生から自分の組の場所に移動してください」


えっと……確かうちは黄組だったか?

じゃあ黄色の旗のところだな。



======



「組長さん達、なんかすごかったね。なんというか普通じゃないというか」

「うん……すごく個性あふれてたな」

「やっぱ組長さんがあんな感じだと組自体の雰囲気もそれに寄っていくのかな? それなら俺は緑組の方が合いそうだ。やっぱみんなと仲良くしたいし」

「孝平はきびきび動くタイプでもないしな」

「そうそう。あののほほんとした雰囲気すごい落ち着きそう。でも真人は黄組でよかったんじゃない?」

「お、当たり。やっぱ楽しむのが一番だし」


赤ほど何事も全力でっていうほど気力にあふれているわけでもないし、青みたいにガチで勝ちに行きたいというわけでもないしな。

適度にハツラツとしていて楽しめそうな黄が一番合ってそうだ。


「そうなると赤が合うヤツって誰なんだろうな」

「確かにあの組長を見ちゃうとねー。ザ・体育会系の人なんだろうけど」

「体育会系はうちのクラスにもいるんだろうが、流石にそこまではっちゃけてるヤツはまだいないもんなぁ」

「俺の仲良い人には赤が似合いそうな人いないかなぁ。佐倉さんは緑だろうし」

「あーまあそうだろうよ」


佐倉さんは絶対に緑だろうな。

孝平と似た者同士だし、本人が友達に飢えている感じだし。


うーん……いや、アイツも赤ではないだろうなぁ。

感情豊かではあるが熱血って感じではないし。

なんとなく勝ちにこだわりそうなイメージあるから青組かね。


周りを見ると黄組となったクラスが集まりつつあった。


「うーむ、流石に知らん人ばかりだ。先輩と関わることないしな」

「真人の場合先輩だけじゃなくて同級生すら怪しいでしょ」

「まぁそうだが」


いや、普通クラスメイト以外と交流しないじゃん。

同じ中学出身は何人かいるんだろうが、別に仲いいヤツいないし。


「孝平はわかる人いるのか?」

「何人かいるよ。あそこにいる人とか、あっちにいる人とか。大体クラスメイト繋がりでね」

「ふーん」


流石孝平。

オレの普通は通用しないようだ。


オレに仲が良いと言える人ってどんぐらいいるんだろ。


「イーチ、……うーん」

「何唸ってるのさ」

「……いや、なんでも」


仲が良いと言えるラインがわからん。

まあ孝平いるんだから十分だろ。


「やっぱ先輩たちは髪形も髪色も結構自由だよねー」

「先生の許可さえあれば好きにしていいって校則だもんな」

「しかも先輩達を見るにそこそこ許してくれそうよね。金髪とかはいないけど」

「それは流石にガラが悪すぎるしな」


許可さえ取れればできるんだしチャレンジした人はいそうだけど。


「なんだ、孝平ああいうの憧れてるのか?」

「うーん、いつかはやってみたいけど今はまだ勇気出ないなぁ。他の一年生もまだそういうの手を出してないし」

「この体育祭とか夏休みとかをきっかけに出てきそうだけどな。まあ孝平はまだやらなくていいんじゃないか」

「俺もそのつもり。今はそういうチャレンジしたくないしね」

「急に髪染めたら佐倉さんから引かれそうだしな」


それに、下手に髪染めたりして誰かさんに突っつかれても面倒だしな。


「そう……ってなんで考えてることばれてるのさ!」

「孝平がわかりやすいだけだ」



「はーいみなさんちゅーもーく!」



「お、組長だ」

「話聞かないとね」


姿勢を正す。

さっきまで流れていた緩まった空気が一気に真面目なものになる。


「あ、堅くならなくていいよー。そんなんじゃ心から楽しめないからね! 校長先生も言ってたように体育祭の一番の目的は楽しむことだから。はーいみんな深呼吸してーリラーックス」


組長に倣って何人かが深呼吸する。


「いいねーほら、もっともっと吸ってー」

「吸ってばかりいないで吐かせてください」


そのやりとりに周辺から笑い声が漏れ、緊張感が漂っていた雰囲気が弛緩した。


うん、この組長の元なら体育祭楽しめそうだ。


「今回みんなにお願いしたいことが二点あるの」


組長が右手の指を一本立てる。


「まず一点目は応援合戦のこと。競技に関しては別の体育の時間に説明してもらうだろうし、流れだけ確認したらそのまま本番になるだろうからこの場では特に説明しないよ。でも応援合戦は動きを覚えてもらわないといけないし、全体で合わせないといけないから今後の合同の体育で練習することになるよ。みんなの動きが揃えば揃うほど一体感が出て楽しくなると思うから、頑張って覚えてね!」


組長が話している間に配られていた紙が手元にまわってくる。


「おおーなんかすごい感じ」

「フレーフレーってやるだけじゃないんだな。なんかダンスっぽいのもやるのか」


中学ではこういうのテンプレートが決まっていたしな。

とりあえず声出しとけばいい感じだったけど、流石高校。

中学よりも自由で遊び心があふれてるわ。


「紙は行き届いたかな? 今日の後半に早速練習することになるから目を通しておいてね! まずは私達がお手本を見せるから、それを見てなんとなく理解してね」


組長は右手をそのままに左手でも指を一本立てる。


「で、二点目なんだけど」

「組長、それでは11です」

「え、細かーい。私はいつもこう数えてるでしょ」

「いえ、初めて見ます」


他の三年生も見たことないと同意する。


「むーノリが悪いなぁ。おかげで私嘘つきだよ、全く!」


その漫才みたいなやり取りでまた周囲から笑い声が漏れる。


「おっほん! で、二点目はリレーについてだよ。今年のリレーは学年対抗って形になっていて、一学年から七人代表を出して、その学年の中で競い合うことになるんだよ。各学年から三クラスずつ割り振られているから、その中から七人を決めて、他の九クラスと勝負することになるね!」


周囲がざわめく。


ってことはオレ達一年生もリレーをやるってことなのか。

三年生が走るのを見るだけかと思っていたが、各学年の活躍が見れるってことなんだな。


「いいかな? それで、せっかく今集まっているわけだから、この場でできればその七人を決めてほしいいんだよ。もちろん決められなくてもいいんだけど、リレーはバドン渡すところで連携が必要になってくるから、早いうちに決めて練習できるときに練習しておいた方がいいと思うんだよね。二週間ってあっという間だし」


まあ毎日練習できるわけじゃないだろうしな。

その組み合わせが集まらないと意味ないんだし。


「よし、話は以上かな! 大丈夫だよね? ね?」


不安そうな顔で周りに確認を取る組長。

近くの三年生が大丈夫というポーズを見せたことで笑顔が戻った。


「よしOK! じゃあ早速今から各学年でリレーの代表選手誰にするか話し合ってね! 全体集合する時間になったらまた声かけるから、一旦かいさーん!」


周りの生徒がどうしようか、と話し合い始めた。


「代表、誰になるだろうね」

「まあ陸上部だろ。短距離専門が七人いたら即決まりだな」


いくら体育祭楽しむって言っても勝ちに行くことに変わりはないからな。

専門がいるのならその人達が走るのは当然だろう。


「そんなにいるのかな?」

「ウチのクラスには……確か一人か。足りなさそうだな」

「それに短距離とは限らないもんね。色々種目あるんだし」

「いくら陸上部所属でも砲丸投げとか棒高跳びの選手が足まで速いとは限らないか」


むしろ走りに必要のない筋肉が多くて遅そうだ。


「それでも俺よりは速いだろうけどね」

「孝平はまず運動をしようぜ」

「い、いやぁ俺はその場から動かずに動物の世話とかしてるのがあってるよ」

「動物と一緒に走るとかないのかよ。ほら、犬とか走るじゃん」

「そんなアグレッシブな子は別の人に任せたいなぁ」

「少しは動けよなぁ」

「俺のことはよくて! 真人だよ真人」

「は? オレが何だって「ちょっといいか?」ん? おお、クラスの陸上部の。どうしたよ」


話をぶった切るように大声を出した孝平に驚いていると、クラスメイトが話しかけてきた。


「山口君だよ真人」


や、流石にわかってるぞ?


確か短距離専門だったよな。


「一年の陸上部と話してたんだけど、流石に短距離で七人埋まらなくてな。陸上部以外で足が速い人いないかって話になったんだけど、橘って足速かったよな」

「まあ速い方だとは思うが」

「いや速い方とかじゃなくて速いんだよ、何言ってんの?」

「お、おう?」

「だよな。体力テストの時すげぇびっくりしたし」


体力テスト……50m走のことだよな。

どのぐらいだったっけ。

いいタイム出て喜んだ記憶はあるんだが。


「絶対その顔何秒か覚えてないね。6.76秒だよ! 中学の時よりも速くなっててびっくりしたって話したじゃん!」

「あー」

「いやほんと速いな!? なんで陸上部入ってないんだよ」

「まあ事情があって」

「……まあいいや、とりあえずそんだけ速いんだしリレーの代表選手になってほしい」


マジか。

まあ断る理由はないけども。


「わかった、いいよ」

「ありがとう。全員決まったらこれからのことを決めよう」


そう言って山口は別の場所へと移動して行った。


「まさか今回も走ることになるとは」

「中学の時は毎回走ってたもんね」

「まあでもあれはクラス対抗や部活対抗だったからな。高校では人数も増えてるし関係ないと思ってたわ」


流石に同じクラスにリレー枠埋まるほど陸上部いなかったし。

速いっつっても専門には勝てないし。


「なるほどね。まあ俺は真人なら選ばれるかもって思ってたよ」

「オレは思ってなかったなぁ。まあ選ばれたからには精一杯走るさ」

「頑張ってね!」



そのまま孝平と駄弁っていると全体集合の時間になり、全体で入退場の流れの説明や集団行動の練習を行った。

その後は応援合戦の練習を行い、組長が言っていた通りまずはお手本を見せてくれた。

流れる曲や振り付けがしっかり決められていてそれだけでもすごいと思ったが、それをしっかり覚えているだけでなく大勢の前でそれを披露するメンタルがすごいと思った。


体育の時間が終わってから、明日の放課後にリレーの顔合わせと練習を行うと伝えられた。


オマケ


体育祭プログラム

競技リスト


午前の部

・応援合戦

・100m走(全学年男女)

・妨害あり玉入れ(全学年)

・UFO(一年生)

・部活行&部活対抗リレー

・教員競技

午後の部

・保護者競技

・〇×クイズ(全学年)

・ムカデ競争(三年生)

・騎馬戦(二年生男女)

・クラス対抗リレー(全学年選抜)


「……ゆーふぉー?」


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