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ある日の学校で

作者: 笠間

 窓側の後ろから二番目、出席番号順に割り振られた席だ。冬は暖房から遠くて損した気分だけど、それなりに気に入っている。目線を窓に向けるとすぐ側にハンドボールコートとグラウンドがあり、毎日どこかのクラスが体育で使っている。授業中、横目に体育の様子を見ることが私の密かな楽しみだけど、今日は一日模試のため、いつもよりずっと学校は静かだ。


 みんなはあまり好きではないと言うけれど、私は模試が嫌いじゃない。いつも真面目で隙がない、平野先生の普段とは違う一面が見られるからだ。

 平野先生は担任の先生で、私たちの国語の授業を担当している。若い男の先生はジャージにサンダルという格好が多いけれど、平野先生はいつもスーツに革靴で毎日シワのないYシャツを着ている。

 授業中もHRでも必要なことだけ話してすぐに教室を出て行ってしまうため、担任だけどあまり話したことがない。


 定期考査のときはしっかり教室を巡回する先生だけど、模試の監督のときは決まって教卓の前の椅子に座り本を読んでいる。カバーがあってタイトルが見えないけれど、文庫本のようだから小説だろうか。先生の趣味が読書だと、模試を受けていて気づくなんて、なんだか面白い。


 ずっと見ていたのがいけなかったのか、眉をしかめた先生と目があった。慌てて目を逸らそうとしたけれど、その前に先生の長い指が私を指して、くるくる宙に円を描いた。なんだろう、早く問題を解けということだろうか。普段は見ないその仕草に思わず頬が緩んだ。


 先生はいつもどんな本を読んでいるんだろうか。

 帰りに聞いて私も今度読んでみよう。

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