竜の呪い
とある世界の昔に、竜と言う存在があった。
彼らは恐るべき生命力によって人々を圧倒した。
そいつらは自由気ままに家畜を攫って食い殺し、土地には魔物を降り注ぎ、挙句の果てに王族の頭上へ土を落としていったのだ。
それはもう羨ましいとさえ感じる暮らしぶり。
あの鋼の鱗にさえ勝てればと人類は渇望したのだ。
何時の日か、何処か山間の国ではそれを叶える武器を作り上げたらしい。
それはドワーフが自慢の鎚で叩いて鍛えた魔法の槍。
これを持って騎士達は「山の化け物を討つ」と張り切って山に登り、実際に竜を狩る事ができ、とても喜んで下山したと。
その日の市場には鱗が並んだ。
こんな日も長くは続かず。
竜には竜のやり方で人類は復讐された。
ある日、初めて竜を倒したあの国では病が流行っていた。
瘴気と呼ばれるものが体内で発生してしまう、誰の手にも施しようがない病で、予防すら出来ない嫌すぎる害悪。
世間では魔女の仕業に数えられる奇病。
それを国王が患ったらしく国の者達は大変困った。
だが幸いと言うべきか、竜の血には痛みや疲れを和らげる効果があったので、これを飲み、王は考える力を取り戻し。
それから、王は病を治癒する方法を模索した。
エルフの賢者や、精霊の言葉を聞いて。
そして、それは見つかった。
竜の魂を取り入れる事で病を治せると竜から教えられた。
竜の生命力は魂から来る、だから取り入れば瘴気に負けない身体になると。
それを信じられなかったが時間がなかった、竜の血を飲んでも、もう病を遅らせる程の効果を得られないでいたのだ。
王は竜の立ち合いの下に竜の魂を取り入れた。
そして儀式は成功。
人々は二度と竜を殺さないと約束して、次々に彼らの魂を受け入れ始める。
それから病が終結して、より健康となった体で日常が再開された。
その日、全てが丸く収まったと王は満足して床につく。
そして起きたら身体が竜になっていた。
自分だけではなく国民全員が竜となっていた。
その日、人の国が一つ滅んだ。