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偏見(千鶴)

作者: 狼花

  「さぁ、今日もいっぱい取るぞ!!」

休日のある日。

ショッピングモールのゲームセンターにて桃花が張り切っている。

クレーンゲームが得意な子だからまたぬいぐるみを取りに行くのだろう。

「だから取らなくていいわよ」

・・・ また部屋が物であふれるんだから ・・・


 「お母さんはそこで待ってて」

「はいはい」

そう言われて私は近くの休憩所でスマホを片手に待つことに。

ニュースを見ると『マナー違反のカメラマン。田畑を荒らす』という記事が出ていた。


 風景画を取るためにカメラマンが耕した畑などを踏みつけ三脚などを置いたという内容だ

前にも撮り鉄の男性が撮影を邪魔する親子と揉めたという記事があったような。

・・・  そこまでして取る写真にいくらの値打ちがつくのやら。  ・・・


 カメラマンの間でもある程度のマナーがあるというのにこれではカメラマン全体のイメージが悪くなりそうだ。

・・・ 好きなことに没頭すると周りが見えなくなる人っているのよね ・・・


 ふと目の前でクレーンゲームをしている桃花に目を向ける。

あの子も大人になったらこんな大人になるのかもしれない。

集中しすぎて人の声が届かない時もあるし。

気に入らないことがあると相手の立場を考えずに文句をいうし。

自分の娘だというのに少し不安になってきた。


 「うわーん、バイキンマン、バイキンマン取ってよ」

しばらく様子を見ていると桃花の隣の台でクレーンゲームをしている親子の子供が泣き出した。


「ごめんね。やっぱりママじゃバイキンマン取れなかったよ。ごめんね」

母親が必死に子供をなだめているが手のつけようがないようだ

手に入らないと知ると男の子はさらに激昂して泣き出した。

・・・ 私も桃花が小さいときはあんな感じで手を焼いたっけ ・・・


 その様子を隣で見ていた桃花が親子に近づき何やら話しかける。

・・・  ここからは聞こえないわね。 ・・・


 桃花のいるゲームセンターと私の休憩所は小学校の教室ひとつ分くらい距離が離れている。

親子と何やら話していると言うのわかるがその内容を聞き取ることまではできない。

・・・  何を話してるのかしら  ・・・


 しばらくすると桃花がその母親の代わりにクレーンゲームを行った。

桃花がクレーンゲームをやってるところしかここからでは伺えないがしばらくすると親子の間で喜びの声が上がり、そばにいた若い学生くらいの店員も拍手をしている。

バイキンマンが取れたのだろう。

・・・ それにしてもアンパンマンよりバイキンマンを選ぶ子がいるのね… ・・・


 その後、親子は笑って帰っていった。

側で見ていた私も少し誇らしげな気持ちになり

 

 さきほど不安を抱いたのが馬鹿馬鹿しくなった。

・・・  その優しさをずっと持っててよ  桃花 ・・・


 しばらくして私のとこに桃花が戻って来る

「いいことしたわね」

「うん、まぁね」

桃花は買ってきたコーラを飲んでいる。

・・・  一休みといったところか ・・・


 しばらくするとさっきまで桃花が遊んでいたクレーンゲームのほうにいかにも品の悪いおじさんが現れた。

そのおじさんもクレーンゲームをやっているがなかなか取れず、イライラしているのかガラスを揺らしたり蹴ったりしている。

・・・  ああいう困った大人もいるものね  ・・・

学生店員は走って何処かに行ってしまった。


 「ちょっといって来るね」

その様子を見た桃花はその怖そうなおじさんのところに行こうとする。

「ば、馬鹿やめなさい」

トラブルになるのは間違い無いでしょう。

私が止めるのを聞かずに桃花は問題のおじさんのとこへ向かう。


 桃花はクレーンゲームのおじさんと話すと先ほどの親子のように操作を代わりお目当の物を取ってしまったらしい。

途中、店長と思われる人を連れてきた店員も騒動を聞きつけてきたのだが桃花は無視して黙々とプレイしていた。

取れた後はそのおじさんも喜んでおり、いまはゲームセンターの店長に少し注意を受けている。



 無事に問題が解決してけろっとした顔で戻って来る桃花

「あのおじさん。入院してるお孫さんのためにやってたんだって。ありがとうって何回も言われちゃった♬」

「あんた、怖くなかったの?」

「全然、イライラするときは誰でもあるしね」

・・・ 見てるこっちはハラハラしたわよ。 ・・・


 「危険だから、ああいう人には近づいちゃダメよ」

「え、なんで? 困ってる人に優しくしたらいけないの?」



    娘の問いかけにどう返せばいいか困る私だった。


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