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ヒミツ  作者: 爪楊枝
ジカクとジモン
99/109

4話『ソツギョウ②』


1階リビング、思緒姉ちゃんと玉波先輩が朝食を作っている間、僕は真実とゲームに興じていた。


「よし!また私の勝ち!」

「くっそー!もう一度だもう一度!」


よくあるタイプのレースゲームだけれど、基本僕が真実にこういった類の遊びで勝つことはない。手加減してやらないと真実が怒るからだ。だから決して、決してムキになったりしない。兄として、また男として当然のことだろう。


「だぁー!また負けた!もう一回!もう一回!」

「えー…もう飽きたから別のやろうよ」

「なっ…」


「あのふたり、仲良いわね」

「兄妹だから当たり前でしょ」

「…うーん、私が言いたいのはそういうことじゃないんだけど…まあいいや。家内、真実ちゃん、そろそろお皿の準備してちょうだい」

「えぇ!?玉波先輩でも今ちょうど良いところで…」

「はやくする!」

「あ、はい…」


朝からどこかへ行ってしまった両親、まあ…あの2人は偶に僕らに何も言わずに2人で旅行に行ったりするような人たちだから気にしていないけれど、とにかく2人がいない今日の朝食はいつもとはまた違う雰囲気で始まった。


「「「「いただきます」」」」


僕の横に玉波先輩、向かい側には真実と思緒姉ちゃんという形で席に着き、それぞれ机に置かれた料理に手をつける。


「…」


あまり気にして見たことはなかったけれど、こうして見ると食事の仕方にも人の個性というものは現れる。例えば真実は一口目を口に入れてから次入れるまでの時間が極端に短い。普段よく部活のために早起きをしているものの、ギリギリの時間に起きてしまうためご飯をかけこんでいるからだろうか。次に思緒姉ちゃんは…なんだろう、すごく普通…強いて言うなら食べる順番や量を予め決めているかのように一定のスピード、量、そして口に運ぶ料理の順番が均一だ。玉波先輩は非常にゆっくりと食事をしている。……ん?


「なに、家内」

「あ、いや…なんでもないです」


チラチラと見ていたのに気づいたのか玉波先輩が僕に視線を向ける。


「ははーん、さてはまた私に食べさせて欲しいのね」

「なっ!?」

「はあ!?どういうこと兄貴!」

「……」


食べながら器用に怒る真実を宥めながら、僕は玉波先輩を非難の目で見る。しかし先輩は特に気にする様子もなく食事を続けていた。





「ねえ、兄貴…」

「ん?」

「さっきのことなんだけど…」

「あぁ、先輩のことか…真実、お前ももう中3なんだからあんまり人の言葉を鵜呑みにしちゃダメだぞ」

「…!そ、そうだね…うん」


朝食を作ってもらった代わりに僕と真実は食器を洗っている。…真実にはこう言ったが、実際あーんはされているわけだから真実に対してなにか言える立場ではない。というか、あれは譲らなかった先輩が悪い…いや、悪くはないか?とにかく、僕は悪くない筈だ!


……それにしてもあの時…


「兄貴」

「うわっ!なんだよ…」

「うわってなにようわって…それよりちょっと相談があって…」

「相談?なんだ、やっとお兄ちゃんと結婚してくれる気になったのか?」

「キモい」


……傷ついた。妹との口喧嘩で少しは耐性がついてきたかと思ったけれど、やはり妹に拒絶されるというのは辛いものがある。


「…べ、勉強…教えてほしんだけど…ほら、高校受験の対策として…」

「…?でも真実はよく思緒姉ちゃんからよく教えてもらってるだろ?実際それで俺も受かったし多分大丈夫だよ」

「いやそういうことじゃなくて…」

「それに今勉強を疎かにしているせいか俺の成績はすこぶる悪いぞ」

「…はぁ…もういい」

「……」


……あれ、選択を間違えたか?なんだか真実の機嫌がさっきよりも悪くなったような……





「はぁー…久しぶりねこの部屋も」

「玉波さん、人の部屋に入った瞬間そうして寝転ぶのはやめてくれないかしら」

「えぇ〜いいでしょ?私にとっては自分の家よりこの部屋の方が落ち着けるのよ」

「……」

「それより家内さん、貴女こそ人の荷物ひっくり返してなにしてるのよ」

「荷物検査よ。ハル君に害を与えるようなものを持ち込んでいないか、きちんとチェックしないと」

「なにそれ…まあ好きにして」

「それにしても玉波さん、貴女また視力が落ちたの?」

「…なんで」

「今日の朝食、食べる量もそうだけれどなにより箸と料理を凝視し過ぎよ。時々掴めていなかったし」

「…どうも最近左目の調子が悪いのよ。気にすることないわ」

「眼鏡かコンタクトでもすればいいじゃない」

「嫌よ。コンタクト怖いもの。眼鏡も左右で度が違うと目の大きさが変わっちゃうでしょ?私は家内に常に一番綺麗な私を見て欲しいもの」

「……そう。ちなみに、ハル君は眼鏡をかけた女性の方がタイプだったりするわよ」

「え?なにそれどこ情報よ」

「真実がハル君の部屋から見つけ出してよく捨てる本があるのだけれど、ハル君の性癖やタイプの女性の移り変わりを調べるためにわざわざ回収してそこのクローゼットにしまってあるの」

(うわぁ…この子ヤバイわね……)

「玉波さん、貴女も見ておくことね。役立つ情報はどこから手に入るか、常に分からないものよ」

「そ、そう?じゃあ見ようかしら…一冊。一冊だけね?興味ないけどね?」



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