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ヒミツ  作者: 爪楊枝
新章
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4話『ハリケーン②』


人は誰しも、誰にも言えないヒミツのひとつやふたつ隠しているものだ。例えば私、剣崎嵐。クラス委員長と風紀委員長を兼任し、おまけに成績もいいこの私が今現在授業中にもかかわらず……おしっこを我慢していることを表情にも出さず過ごしていることを周りの人は誰も知らない!さらに言ってしまえば私はおしっこを我慢しているこの状況に興奮を覚えてしまっている!……でも決して笑っていられる状況とは言えない。なぜなら結構ギリギリを攻めすぎてもうかなり限界だから。授業終了と同時に号令をして教室を出てトイレに向かわなければ私はクラスメイトと教師の前でおしっこを漏らしてしまう…そ、それもいいかもしれないけど、さすがにまずい。


授業が終わるまであと30秒………20秒…10…9…8…


「あー、もう時間だな。よし、じゃあ今日はここまで。剣崎、号令」

「は、はぃ!!!起立!礼!」

「「「「ありがとうございました…」」」」


礼を済ませてすぐに席を離れて教室を出る。トイレまでは別のクラスの教室の前と階段を通り過ぎて向かわなければならず、たどり着くまでに少しだけ時間がかかる。そしてたどり着けたとしても簡単に目的が果たせるわけではない。


「……くっ…やっぱり…」


2階女子トイレの前にたどり着いた私の目に、ドアの前でたむろする女子生徒たちの姿が映る。そう、男子トイレと比べて小便器という概念がなく個室のみの女子トイレは結果として生徒の数に比べて便器の数が圧倒的に少ない。さらに一度個室に困るとなかなか出てこない生徒がいるためこうして入り口付近に生徒が溜まってしまうのだ。こうなっては最後、最悪次の授業までにトイレに入ることすらできない可能性がある。それならばどうするのか?答えは簡単!別の階のトイレを使うべし!ここは2階で1階にも3階にも行ける!しかしどう?今は火曜日の午後…1階の特別教室を使っていて生徒数が多い可能性は…他の学年の時間割なんて知らないし…かといって階段を登るのと下るのではどちらかといえば下る方が楽そう………っ…こうしてる間にも漏れそう…


「やるしか…ないわ……」


階段をなるべく体を揺らさないよう慎重に、それでいて素早く降りて1階の女子トイレに着く。しかしやはりここでも2階と同じく女子生徒の集団がトイレの前にいた。


……そんな…このままじゃ……はっ!そうだ教員用トイレ!そうよそうだわ!職員室の前まで辿り着ければ…………と、思っていた私の希望を打ち砕くように、修理中の張り紙が突きつけられた。


「……」


少し…ほんの少しだけ漏れてしまった。もうほんとうにちょびっとだけなので誰にもバレていないしバレる心配もないけど…そろそろほんとうにまずい。


……そういえば、体育館の横にもうほとんど使われていない旧校舎時代の古いトイレがあったような……






「……そんな…」


トイレはあった。でもそこには先ほどと同じ、修理中の張り紙。


「戻るしか…でももう…」


……私は張り紙が貼られた扉の横にあるもう1つの扉を見つめる。男子トイレ…男子トイレの扉には修理中と書かれた張り紙はない。使う?いやそれは流石に……一応周囲を見渡して誰もいないことを確認してから私はドアノブをひねった。


「ほほぉ〜……」


古いトイレなので仕方がないけれど、少し臭い。それに小便器の形も丸く高い位置に設置されている。漫画や動画などで見るものとは違い、非常に興味をそそられるけど今はそれどころではない。早くしなければ授業にも遅れて………………………


「小便器か…」


ダメ。ダメなことはわかってる。けど仕方ないよ。私は今まで好奇心というものに勝った試しがない。それに私はこういうこともあろうかと基本的にパンツは履いていないし。だからスカートをまくればなんとかなる!






「ふーんふーん…」


授業が終わり、僕はスキップしながらトイレに向かう。しかし自分が使う階にあるトイレでも、その上下階にあるトイレに向かうわけでもない。見つけたのは随分前、それこそ体育館に忍び込む前から存在は確認していた。しかしその独特なアンモニア臭と薄暗さから僕の楽園にはならないと判断していた旧校舎時代に建てられたトイレ。しかし最近、1人の時間がどうしても欲しくなった僕はわざわざ3階からこの体育館近くまで歩いてきては1人優雅なトイレタイムと洒落込むわけだ。


「それにこの匂いも慣れれば都…………」

「……ぁ……あ…へ…?」


下品な話ではあるけれど、聞いてほしい。いや、やっぱり聞かなくてもいい。誰にもいう必要はない。多分これは僕の心に留めておく事件だ。


いくら知り合いとはいえ、いくら剣崎先輩が変態であることを僕が知っているとはいえ、流石に男子トイレの小便器で女子が器用に立ちションをしていた場合の反応を僕は知らなかった。

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