epilogue
屋上から、中庭を眺める。模擬店やステージの片付けを生徒や教員総出で行っており、今現在の僕の状況を示すならそれはサボっていると言うほかない。
「あ…剣崎先輩だ…あの人なんでずっとあんな感じでいられないんだ…」
……落ち着かない。当然だ。僕はここに呼び出されて立っている。あきと莉音のふたりにだ。莉音は…うん、返事をしなければならないだろう。しかしあきに呼び出されたのは意外だった。告白…されるのか?いやでもあきに告白されるような心当たりがない。たしかに普通とは言えない関係ではあるものの、それが好意からくるものかと言われればNOと言える。明らかな失態と明らかな脅しから始まった僕とあきの関係はそんな甘いものではないはずなのだ。
ひとり考えていると、後方でドアの開く音が聞こえた。足音はひとつ。迷うことなく僕の方に向かってくる。僕は後ろを振り向くことができない。あきか…それとも莉音か…そのどちらでも同じ、まだ心の準備ができていない。基本僕はダメ人間なのだ。何かの選択を迫られるとき、必ず逃げてきた気がするほどに。
僕の少し後ろで足音が止まる。
「家内」
心臓が止まるかと思った。なぜなら、聞こえた声が僕の予想とは反したものだったからだ。少し低い、けれどそれでいて落ち着く綺麗な声で、僕を呼ぶ声に思わず振り向いてしまった。
そこには、綺麗なメイドが立っていた。
純白の髪に、紅い瞳、そしてその病的なまでに白い肌をより際立たせる黒いメイド服。
少しつり上がった目頭の周りを赤く腫らし、下手くそな笑顔を浮かべた玉波先輩が僕の前に立っていた。
次回更新は11日です。




