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ヒミツ  作者: 爪楊枝
√学園祭
78/109

√リオン②『ジャマ』


「あ、どこ行ってたんだい野美乃さん」

「ごめんなさい吉井君、少し休んでました」

「どこか体調でも悪いのかい?それなら保健室に…」

「だ、大丈夫ですから…」

「そうかい?無理してはダメだよ?」

「あー…えっと野美乃さん、よければ今から模擬店一緒に見に行かないかい?もう片付けてるとこもあるけど…クラスのみんなに差し入れでも買いに行こう」

「…?いいですけど…」

「本当かい!?そ、それじゃあ早速行こう」

「……」

「……」


私は何をしてるんだろ。もうすぐ約束の時間なのに…また緊張して来た…落ち着かなきゃ…ただの噂なんだから…もし上手くいかなくても今回が最後じゃない。


「そ、そういえばあの家内君だったっけ?」

「…?」

「彼、あまりいい噂を聞かないよ。なんでも風紀委員長に目をつけられるほど普段の行いが悪いらしい」

「……は、はぁ…」

「野美乃さんも気をつけた方がいい。どうやら仲が良いようだけれど、ああいう奴に関わると碌な目に遭わないよ」

「……そうでしょうか…」


陽満君のことを何も知らないくせに……


「それよりみんなには何を買おうか」

「そうですね、お手頃なサイズのもの…まだ残ってるものだと1年生がやっていたベビーカステラなんて良いんじゃないですか」

「う、うん!それが良い!あ、お金は僕が出すから!気にしないでね」

「……はい…」




「はい、野美乃さんのぶん」

「あ、ありがとうございます」

「熱いから気をつけてね……」

「どうかされましたか?さっきから時計を気にしてますが」

「い、いやなんでも!」

「……」


もう、もう行かないと……


「あの、私少し行かないといけない所があるので…」

「えっ…ちょっと待って!」


その場を離れようとした私の腕を、吉井君が力強く握る。


「ちょっ…い、痛い…」

「ご、ごめん…」

「な、なんですか?」

「え、いやほら…」

「……?」

「も、もう少し一緒にいたいというか…その…」

「で、でも私約束が…」

「家内の所だろう!」

「……え…」

「あ…急にごめん、大声出して…」

「……」

「でもほら、さっきも言ったようにあいつは問題児だ。君には釣り合わないよ」

「……なにが言いたいんですか」


こんなことしてる場合じゃない。


「だから…君にはもっとふさわしい人間が…」


この人も多分、知っているんだ。あのウワサの事を…気持ち悪い。


「ごめんなさい、私もう行かなきゃ…」

「……っ!待てって言ってるだろ!」

「っ!?」

「なんであいつなんだ…そ、そうだ!確かあいつ…あの同じクラスの実行委員と付き合って…」




彼が言葉を全て吐き出す前に、私の手が先に出ていた。


「……!?な、なんで!」

「私の前で、ハルちゃんの悪口言わないで…」

「の、野美乃さん?」

「私嫌いなの、貴方みたいな人」

「は、は?なに言って…」

「さよなら」

「ま、待てよ!色々してやったろ!?クラスで浮いてた君を実行委員に推すのとで引き合わせてやったのはこの僕だぞ!」

「……サイテー…」

「くっ!?」


最悪だ。ハルちゃんの前に行くまでは…本当の気持ちを伝える前にこんな嫌な気分にされるなんて…


「どこが、どこがいいんだあんな奴の!」

「……」

「君があいつにご執心なのは前から知ってた、だから調べたけど成績も良くないし授業態度や素行もいいわけではない。あんな奴の…」

「……全部」

「…は?」

「昔から…今日まで、私はハルちゃんの全部が好き」

「…………」

「だからもう、私に関わらないで…迷惑だから」

「……立花あき」

「……」


…………え?


「家内陽満と立花あきは付き合ってる。さっきの女との噂と違ってこれには証拠がある…あいつは君が思ってるような人間じゃない、だから…」

「うるさい!」


違う、嘘だ。ハルちゃんと…あきちゃんが……ありえない。だって…真逆だから……


「嘘じゃない!なんならその証拠を見せるよう知人に…」

「はい、そこまで」

「うっ!?」


突然、吉井君が地面に這いつくばったと思ったら、その腕を締め上げて彼の上に乗る伊藤さんの姿が目に入る。


「やあ、ヤミちゃん」

「ヤミ?」

「名前呼ぶの初めてだったか?まあ、私達自身は仲良くないしな。野美乃だからヤミちゃんな」

「…なに、してるんですか」

「見ての通り、暴漢を抑え込んでるんだけど」

「は、離せ!なぜ君が僕を!」

「黙って今日は帰ったほうがいいぞ吉井君。君とヤミちゃんの会話は録音させてもらった。女子生徒に無理やり迫るなんて、教師にバレれば退学かもな」

「…なに言って……お、お前が僕に家内の情報を……」

「あんなの嘘に決まってる。なんでも信じちゃいけないな」

「なっ……」

「ほら、もう行くといい」

「く、くそっ!許さない…許さないぞ!」

「結構、結構」


吉井君が走り去る。この場に残ったのは私と伊藤さんだけだ。


「さて、えーとヤミちゃん、君ももう行っていいよ。私の目的はもう済んだし」

「え……?」



その時、チャイムが鳴った。


「ごめんな、でも今日だけは譲ってやってくれ」

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