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ヒミツ  作者: 爪楊枝
√学園祭
75/109

√ラン『イレギュラー』


下駄箱で靴を履き替え、人でごった返した中庭を走り抜けて学校裏にある駐車場へと急ぐ。中庭にある時計は現在15時26分……あぁ、確か引き継ぎのために5分前に集合しとくように玉波先輩も言っていた。これは怒られるぞ…息を切らしながらも駐車場へとたどり着いた僕は誠心誠意の謝罪をしながら引き継ぎ中の生徒達に声をかけた。


「す、すみません遅れました!」

「全然大丈夫ですよ〜むしろ30分までに来れてえらい!」

「……は?」


玉波先輩と仲良く30分ほどおしゃべりタイム。学園祭の合間に設けられたご褒美が楽しみで胸を膨らませていた僕のテンションが急落する。


「あれどうしちゃったの?剣崎先輩ですよ〜」

「…なんで先輩が?」

「実は玉波さんメイドカフェが忙しすぎてちょっと体調を崩してね…それで私が代わりで来たの!」

「だ、大丈夫なんですか?」

「朝から大賑わいだったから、でもまあ休めば問題ないでしょ」

「……」

「おやおや〜?玉波さんが心配ですか?」

「まぁ…そりゃ…」


玉波先輩はあまり体が丈夫ではない。確かアルビノの影響で強い日差しも辛いと以前本人が言っていた。


「ははーん、玉波さん…美人だもんね」

「…なに勝手に納得してるんですか」


この人と喋るのは苦手だ。変態だし。なんか思春期の男子みたいな感性してるし。


「ね!ね!恋バナしよ恋バナ!」

「係に集中してくださいよ!」

「だって警備って言ってもやることないしー」


まぁ、それはそうだ。基本的に警備係の仕事は校内の見回りと駐車場や校門前で突っ立ておくだけである。そしてこの駐車場の係こそ楽にサボれる唯一の場所といっていい。


「はぁ…なんか事件起きないかな〜」

「風紀委員長がなに言ってるんですか…」

「あ!そうだこれ家内君に渡しておくね!」

「……?なんですかこれ」


…え?このボタンのついたやつって…


「いつでもスイッチ入れてっ!!!」


サムズアップし、ドヤ顔で言う剣崎先輩はなんとも輝いていた。





「「……」」


あれから10分ほど経っただろうか。現在僕と剣崎先輩の間に会話はない。しかし、僕の心臓は今にも張り裂けそうなほど大きな鼓動を打ち続けていた。ズボンのポケットには先ほど渡されたスイッチが入っている。返そうとしたけど、結局受け取ってはくれなかった。セクハラで訴えたい気分である。しかしながら僕も男として、そして高校生として気になってしまう。このスイッチを入れると果たしてどうなってしまうのかが。


「……」


先ほどから剣崎先輩がチラチラとこちらを見てくる。なぜそれがわかるかといえば、僕もチラチラと見ているからだ。互いに互いを警戒し、意識するあまり会話もなくなり、変な汗をかくというまさにくだらない時間を過ごしている。


「け、剣崎先輩?」

「な、なに?」

「やっぱりこれ返したいんですけど…」

「私はもうそれ知らない。それは君にあげたの」

「……」


この人意外と頑固だな……


「ふ、風紀委員長のくせにこんなもん学校に持ってきてていいんですか?」

「ッッッッッッッッ!!!!!!」


急に剣崎先輩がブルブルと震えだした。え、怖い怖い。なにこの人……


「い、いいね家内君、なかなかいいよ」

「……?なにがですか?」

「私、Mだから!もっと言葉で攻めて来ていいよ!」

「……」


なんだかこの人にはもう風紀委員長としての威厳もなにも感じなくなってきたなあ……


「あれ?家内くーん?無視してない?先輩のこと無視してない?」

「……」

「はぁっ!無視されるのも良い!」

「逃げ道がねえ!?」

「よかった、ちゃんと私と喋ってくれるねっ」


……たまにこの人めちゃくちゃ可愛いこと言ってくるな……というか…ふつうにかわいい?……いや!いやいや騙されるな!この人は変態!この人は変態!


「うーん、あと10分くらいは引き継ぎの子たち来ないなあ…家内君〜なにか面白い話してよ〜」

「急に無茶振りするのやめてください」

「じゃあなにも言わずにそのスイッチ入れてよー」

「……嫌です」

「あれ?今間があった?なになにやっぱり興味あるの?良いんだよ正直になって、お姉さんは許してあげるよむしろ許して欲しいのはこっちだよ」

「ほんとなんで先輩みたいな人が人から信頼されてるのかサッパリですね」

「そりゃあ…だってほら私がこんなことするの君くらいだし」


……この人は変態この人は変態この人は変態……


「いい?家内君、私は真面目だ。普段はね!」

「……なるほど」

「でもドMで露出狂で、むっつりスケベでもある」

「…………なるほど?」

「そんな私が今までの人生で唯一見つけた同士が君なのだよ!」

「……は?」


やっぱり、この人は頭おかしい。


「女子の部室に侵入するなんていゃ〜なかなかできることじゃないね」

「……ほんとごめんなさい。そのことは言わないでくださいお願いします」

「……ふっふっふ…」


ニヒルな笑みを浮かべながら、剣崎先輩は僕に右手を差し出してこう言った。


変態ともだち


それを見た僕はすぐに手をとり言葉を返す。


変態ともだち


「なにしてるのハル君」

「「うひゃっ!?」」


新たな友との握手を遮り、怪訝そうな思緒姉ちゃんが立っていた。


「どどどどうしたんだ?思緒姉ちゃん」

「ハル君に会えて私は嬉しいけれど、今回用があるのはそっちのクラス委員長よ」

「え?私ですか?」

「先生が一旦全員教室に集まってくれとのことよ。もし係があるなら私が先生に伝えておくけど」

「あー……」

「剣崎先輩、行ってもいいですよ。もうじき引き継ぎのやつも来るでしょうし」

「ほんと?ごめんね?」

「えぇ」


剣崎先輩が走って思緒姉ちゃんのもとへ行く。僕はそれを見送りながらほとんどなにも考えることなく、本当に適当にポケットの中のスイッチを入れた。


「剣崎さん、貴女ハル君とそんなに仲が良かったかしら……?どうかしたの?」

「な…なんでもありません……仲良しこよしです!」

次回更新は9日18時です。

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