To Be Continued
歳をとると日が経つのが早い。そんな言葉も世の中にはあるけれど、僕達のような若者にとってそれはあまりに想像できない。なぜなら、よく思い返してみれば幼少期、そして現在に至るまでたった十数年間の記憶でさえ詳細に思い出すことは困難なほどにあっという間に過ぎ去ってしまったと感じてしまうからだ。そしてその法則は僕のような1人の時期が多かった小学、中学時代でも通用しうる。あまり話し相手がいなくても、なにか打ち込めるものがあれば適用される。例えばそう、学園祭。あの学校をあげてのイベントは何日も前からそれ専用の期間が設けられ、それに向かって生徒や教師、果ては地域の壁すら超えて準備して臨む。そしてそれら全てが終わった後みんな一様に口にするのだ。あっという間だったな、と。
そして今、僕はまさにそれを肌で感じていた。実行委員としての仕事はまあ、それなりだが…玉波先輩の作品作りを手伝ったりクラスの模擬店の準備を泉と共にしたりとなにかとやることがあった今年は、その実感が顕著だった。
そう、なんだかんだで気付けばもう学園祭前日だったりする。ベッドに転び、後は寝るだけであれほど嫌だった行事がやってくる。そう思うと寝付けない。遠足前のドキドキで眠れないあれではなく、寝てしまうのが嫌で寝付けない。できれば2日間とも寝ていたい。なにもしたくない。けれど真実や莉音との約束があるのでそういうわけにもいかない。
さらに今までと違うことがあるとするならば、それは僕に関わりのある人物が増えたということだ。少なくとも思緒姉ちゃんに玉波先輩、一応剣崎先輩も今年が最後の学園祭なのだ。だとすればその最後のイベントに僕が参加しないわけにはいかないではないか。先輩達の背中を押すのも後輩の勤めの一つだ。
なんてことを考えていたら、眠れなかった。朝の4時ごろに思緒姉ちゃんが部屋に入って来たときはビックリしたが、どうやら思緒姉ちゃんも僕と同じで眠れなかったらしい。いやはや姉弟とはいえよく似たものだ。
桜花妹が体育館の壇上で開会の挨拶をしている。頼りないところもあるけれどこうしてみるとやはり生徒会長としての仕事をきちんとこなしているあたり本人がかなり優秀なんだろう。
開会式を終えた生徒達が我先にそれぞれの模擬店のテントやクラス展示の教室へと移動して、30分ほど経った頃に一般客入場開始のアナウンスが流れ始めた。そしてそれから程なくして僕のスマホに着信が入る。
「もしもし」
「兄貴、どこに行けばいい?」
こうして、僕の運命を決めることになる学園祭は始まった。
次回更新はは8日0時です。




