prologue
自然に目がさめる。 朝、目覚ましに起こさ
学校に行く時間までは れる。お父さんのお弁
特にしなくてはいけな も作らなくてはいけな
いこともないから布団 いから、急いで支度を
の上で転んで過ごす。 始める。
布団と収納以外は殆ど 親子2人で住むには少
何もない殺風景な部屋 し手狭だけれど私には
は蝉の鳴き声も聞こえ この場所がとても心地
ないと錯覚するほど静 良く感じた。
かに感じた。
洗面所に移動して顔を こちらもやはり狭く感
洗う。鏡に映った自分 じる洗面台の前に立ち
の顔はまるで別人の顔 鏡の向こうの自分とに
のように感じる。少し らめっこを始める。急
痩せただろうか?目つ いでいてもお化粧は最
きも悪くなったように 低限しておかなければ
思う。 彼に嫌われてしまう。
あまり清々しいとは言 お弁当を作るついでに
えない朝でもお腹は減 ふたり分の朝食も作っ
る。冷蔵庫を開けてゼ て机に並べる。お父さ
リーを食べる。自分で んはいらないと言うけ
もあまりいい食生活と どきちんと食べてもら
は思えないけれど、一 わないと体調を崩して
人暮らしだとどうにも しまわないか心配にな
こういったところがお ってしまう。私にはも
ざなりになってしまう うお父さんしか家族が
ので仕方がない。 いないのだから。
シャワーを浴びてから 朝食を作り終えたら自
制服に着替えて時計を の部屋に戻って制服に
見ると、まだ少し家を 着替える。…また少し
出るまでには時間があ 胸あたりがきつくなっ
った。教科書なんかの たかもしれない。あま
準備も済ませてある。 り家計を圧迫しても困
なにかないかと部屋を るので制服を新調する
見渡しても時間つぶし わけにもいかないんだ
に使えそうなものは特 けれど…
に見当たらない。
そんな私の目に、ある 着替え終わった私は教
ものが止まった。それ 科書を鞄に入れる。昨
は小学校の頃から使っ 日は早くに寝てしまっ
ている勉強机の上に置 たからまだ準備ができ
かれていた一冊のアル ていなかった。棚から
バムだった。毎日のよ 教科書を取り出してい
うに見返しているアル いると、ふと上の段に
バムを手にとってペラ 並べれていた幼稚園か
ペラとページをめくっ ら中学校までの卒業ア
ていると自然と笑みが ルバムの存在に気がつ
溢れる。 き、思わず手に取って
しまった。
時間も頃合いになり、 時間を忘れて見入って
私は部屋を出る。 しまった私は慌てて靴
履いて扉を開ける。
「行ってきます」
返事はない。まぁ、そ 返事はない。お父さん
れも仕方がないことだ はまだ寝ている。私は
けれど。鍵を閉めたこ ドアを閉めて階段を降
とを確認してから私は りて路地に出る。今ま
今日も学校に向かう。 までとは違い、その足
足どりは軽い。 どりは軽かった。
校門の前で嫌いな奴に 校門で苦手な人に出会っ
朝から出会ってしまっ た。この人を見ると以前
た。こいつを見ている の私を思い出して嫌にな
と昔の自分を見ている る。
ようで腹が立つ。
朝からついていない。 朝から気まずい。できれ
いや、最近はずっと楽 ばこの人とは関わりあい
しいことがないなと思 たくないなと考えている
っていると と
「ふたりでいるなんて珍しいな、ふたりともおはよ」
と、私に挨拶をしてく と、いつも通りに挨拶を
る男子生徒の声が聞こ してくれる彼の声が聞こ
えた。その声を聞くと えた。私は精一杯の笑顔
少し照れてしまうけれ を見せて彼の方を向く。
ど表情には出さずに振 挨拶は1日の基本、特に
り向いて挨拶を返す。 好きな人へは欠かさない。
「おはよ、陽満くん」「おはようございます陽満君」




