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ヒミツ  作者: 爪楊枝
ヒキョウモノ
48/109

prologue


9月になって初めての月曜日、クリーニングされた制服に袖を通して学校へ行く準備をします。成長期だからと、お母さんはワンサイズ大きな制服を注文したけどまだまだブカブカで慣れません。それに…自分の胸を見て、私はため息をつきます。いつになったら大きくなるんでしょか…


部屋を出てリビングに行くと、机の上に私の分の朝ごはんが準備されていました。お母さんはもう食べたみたいです。


「おはよう…お母さん。姉さんは?」

「お姉ちゃんはもう出たわよ、貴女も早く食べなさいね」

「う、うん…」


今日も姉さんとは話せそうにありません。…どうしたらもっと仲良くなれるのでしょう。




「行ってきます」

「行ってらっしゃい」


短い挨拶だけど、お母さんは笑顔で送り出してすれます。私はそれがとても嬉しいです。9月に入っても、日差しが弱まることはなく蝉の声も聞こえてきます。そんないつもと変わらない通学路も、一月半ぶりともなると少しだけ懐かしさを感じてしまいます。


徒歩で10分程度で、私の通う学校へと到着しました。多くの生徒たちがクラスメイトや友人との再会を喜んでいるようです。…残念ながら私に話しかけてくれる子はいませんが、新しい学期の始まりというのはいつも清々しいものなのです。


…でもやっぱり、一度でいいから誰かと一緒に登校したみたいです。昨日見たドラマの話や、駅前の商店街にできた新しいケーキ屋さんの話なんかをすればきっと楽しいと思うから…




HRを終えたら、始業式のために体育館へと向かいます。ですが私は同じクラスの子達とは別の列に並ばなければなりません。本当は嫌だけど、これはお仕事なので仕方がないのです。始業式が始まり、校長先生の長いお話が始まります。いつも眠たくなってしまうので、できればもう少し短くしてほしいです…


「えぇ〜では続きまして、生徒会長より挨拶です」


その言葉にビクリと肩を震わせながら、私は立ち上がって壇上を目指して歩き出しました。へ、変なふうに見られていないかとても不安です。緊張で顔中熱いし、足の震えが止まりません。ギクシャクとした動きでなんとか壇上に上がると、この場にいるみなさんからの視線が私に突き刺さります。途端に呼吸が苦しくなり、胸の鼓動が早くなります。本当は…こんなこと絶対したくないのに…


「み……みなさん…お、おはようございます…」


自分でも分かるほどの消え入りそうな声が、マイクに拾われて体育館中に響きます。…うぅ…恥ずかしい。また男の子たちがザワザワしているし…絶対変な子だと思われてる…


私が壇上でモジモジしていると、ガラガラと扉を開けて一人の生徒が先生に連れられて体育館に入ってきました。私はその生徒を見て息を呑みます。


他の女子生徒より随分と短いスカートに着崩した制服、なによりかなり明るく染められた茶髪は目立ち、他の生徒の注目を集めてしまっているほどです。ですが…その女生徒のことを私はよく知っていました。彼女の名前は桜花さくらばな 伽耶かや



何を隠そう…私、桜花 陽京ひだかの実の姉なのです。

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