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ヒミツ  作者: 爪楊枝
ナツのオワリ
42/109

4話『オモイ』


「……え?」


玉波先輩はその綺麗な紅い瞳をパチパチとさせながら可愛らしい声をあげた。


「あ、すみません…勢い任せに変なこと言っちゃいました。あんまり本気にしないでく「い!行くわ!行きます!準備してくるから!」

「え!?」


ドタドタと足音を立てながら先輩が行動を開始した。…まずいぞ……いきなり説明して父さんと母さんは納得するだろうか…ていうか、多分思緒姉ちゃんの説得ができない…いや、ウチでは裁量権は母さんが持っているし最悪母さんの説得さえできればなんとかなるか?


「い、家内!何日分くらいの荷物を持っていけば良いのかしら!?…そ、そうだなにかお母様とお父様にお土産を…」

「先輩…落ち着いてください。とりあえず母さん達に許可をもらわないといけないから一度ウチに行きましょう。準備はそれからでも」

「そ、そうね!分かったわ!」


大丈夫だろうか…心配になって来た……。





玉波先輩とともに、我が家の玄関の前に立つ。僕も、そしてなぜか先輩も緊張していた。互いの緊張が分かるレベルで表情が硬く、なにより先ほどから数分間玄関の前から動けないでいた。


「い、家内?」

「な、なんですか?」

「無理しなくても良いのよ?私は一人でも大丈夫だから…」

「……無理なんてしてないですよ」


そうだ。今は先輩をあの環境から救うことこそ優先だ。こんなところで油を「なにしてるのそんなとこで」


「うわ!?」

「きゃっ!?」

「人を見て驚かないでよ…」


僕達の後ろに立ったひとりの少女。というより妹は間抜けな声を上げた僕と玉波先輩を見て首を傾げている。


「よ、よう真実。どっか行ってたのか?」

「友達と遊んでたの。兄貴は…」

「どうも真実ちゃん、私は玉波 姫。家内君の先輩で彼には日頃から良くしてもらっているの」

「ど、どうも…」


おぉ…先輩が人前モードになった…。


「それで真実、今母さんと父さんいるのか?」

「ううん、ふたりとも出かけてるよ。多分家にいるのは思緒姉だけよ」

「そうか…」


よりによって思緒姉ちゃんだけか…


「それがどうかしたの?というかそこにいられたんじゃ家に入れないんだけど」

「あ、あぁそうだな!先輩もどうぞ中に!」

「えぇ、ありがとう」


扉を開けて中に入る。が、なんだか今日はことごとく物事が上手く進まない。


「お帰りハル君…と玉波さん」

「う、うんただいま思緒姉ちゃん…」

「思緒姉、私もいるよ!」

「真実もお帰り、それでなぜ玉波さんがいるのかしら?説明してくれるのよね、ハル君?」





「……はぁ、玉波さんの家での状況は理解したけれど私は玉波さんの宿泊には反対よ」

「……で、でも…」

「あまりよその家の事情に関わるべきではないわ。それに下手をすれば誘拐と捉えられる可能性すらあるわ」

「大丈夫よ、家内さん。私の両親がなにか訴えを起こす可能性はゼロよ」

「貴女は黙っていてくれる?私はハル君と話しているの」

「まぁまぁ思緒姉落ち着いて、そうだ!私お茶入れてくる!」


真実…逃げたな……。


「それで、ハル君。ひとつ聞いておきたいことがあるのだけど…もしかして玉波さんと付き合っているの?」

「えっ!?」

「なっ!?」

「そこまでして彼女に肩入れする意味が私には分からないわ。もし付き合っているわけではないならハル君は彼女のことが好きなの?」

「な!なにを言っているの家内さん!?」

「もし、ハル君が玉波さんのことが好きだと言うのなら私も少なからず協力して上げても良いわ」

「!?」


急にどうしたんだ思緒姉ちゃん…いつもの思緒姉ちゃんなら絶対こんなこと言ってこないのに…意地でも先輩を泊めたくないのか……?


「…先輩と付き合ってるわけじゃない……けど、先輩は大切な人…だから…」


思緒姉ちゃんの顔を見ることができない。きっと呆れているだろうから。それにこういう事を先輩の前で言うのは恥ずかしい。


先輩が僕の服をギュッと握ってくる。チラリと先輩の顔を見ると、思緒姉ちゃんの方をジッと見て動かない。


「先輩?」


顔を上げて思緒姉ちゃんを見るがいつも通りの落ち着き払った表情だ。


「……はぁ、分かったわ。私はもうなにも言わないから自分で母さん達に言うのね」

「良いのか!?」

「私自身の考えとして反対だけど、きっと聞かないでしょハル君は」

「ありがとう!思緒姉ちゃん!」


なんとか第一関門突破だ。でも本番はこれからだという事を忘れてはいけない。それでもとりあえずは一旦落ち着きたいところだ。


「玉波さん」

「何かしら」

「話があるわ。夜に私の部屋に来て」

「?…えぇ、分かった」

次回更新は明後日です。

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