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ヒミツ  作者: 爪楊枝
キオク
29/109

1話「アサ」


照りつける太陽の下、学校へと続く道を行く僕と莉音そして玉波先輩の3人。といってもあれから家をすぐに出て来てしまい、朝のHRまではかなりの時間があった。


「先輩、どうしますか?どこかコンビニでも寄って行きます?」

「……そうね、せっかくだし一緒に朝ごはんを食ベましょう。もう朝練をする部のために校舎の鍵も空いているだろうし、私の部室でね」

【あの…】


ここで初めて、莉音が玉波先輩に意思表示をするべくスケッチブックとペンを持った。良かった、家からここまで莉音は一度も喋っていない。否、書いていなかったのでもしかしたら体調が悪いのかそれともあの状況を見て怒ってしまったのかと心配していたのだ。


【私もご一緒しても良いのでしょうか】

「私は別に構わないわ」


あっさりの了承した玉波先輩に僕は少し驚く。


【ありがとうございます】

「ふん……」




そんなこんなで僕たちはコンビニでそれぞれの朝食を買い、再び学校へと歩き始めた。そしてその時、彼女と出会ったのだ。出会ってしまった。


「おはよう、3人とも!」


ピッタリとしたタンクトップに短パン、そしてランニングシューズといういかにも走ってますという姿で登場したのは最近クラスでも僕に良く話しかけてくれる伊藤いとうさんだった。


「伊藤さん?こんな時間になにしてるんだ?」

「見てわからないか?ランニングだ。散歩が趣味だからな」


散歩とランニング…一緒にするの少々無茶があるのではないかと思うのだけれど…


「それで、陽満達はこんな早くにもう登校か?」

「ま、まあ…」

「真面目だな、この間授業をサボった人間とは思えないぞ」

「それは関係ないだろ!?」

「ところでそこのコンビニから出て来たということは陽満の家はこの辺りなのか?」

「え?そうだけどなんで…」

「あぁ、いや!気にするな単にちょっと気になっただけだからそれじゃあ私も家に帰って準備するから!また学校でな」

「あ、ちょっと!?」


伊藤さんはそう言って綺麗なフォームで走り出した。


「なんだったんだ……?」

「あの娘、毎朝ああしているのかしら」

「どうでしょう…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


学校に着き、玉波先輩の案内で部室の奥、玉波先輩のプライベートスペースとも言える部屋へと入る。莉音はなにかを警戒しているようにキョロキョロしていたが、多分そんなに警戒するようなものはこの部屋にはないだろう。……と思いたい。


「まだ時間ありますね」

「そうね」


…………


「莉音は何買ったんだ?」

【あんパンです】


…………


空気が重い!!!!!莉音と玉波先輩の間にはほとんど意思疎通は無いし、先輩は真面目モードだし莉音もなんだか素っ気ないしで会話が続かない!なにかこの場を切り抜ける話題とかないだろうか…うーん…ふたりにも共通の話がいいだろうけれどそんな都合のいいことなんて……あっ……


「そういえば先輩は海と山どっち選びました?莉音は僕と一緒で海だよな」

「…!」

【はい!】


我ながら中々良い選択肢を選んだのではないだろうか?この話なら先輩がどっちを選ぶのかだけでなく行った時の楽しみなんかも話せる。


「私も海よ。私海好きだもの」

「おっ、じゃあ僕達と同じですね」

「そうね、私の華麗な水着姿を見せてあげるわ」

「あ、あはは…楽しみだな…」


玉波先輩と莉音の水着姿…ふむ、良いものだな。そんなことを考えながらふと時計を見ると思ったよりも時間が経っていることに僕は気がついた。


「そろそろ教室に行きますか」

「ま、まだ早くない…?」


たしかに、HRが始まるまでは結構あるが正直この場の空気にこれ以上耐えられないというのもある。できれば先輩と莉音にも仲良くして欲しいのだが、ふたりとも人見知りを見事に発揮してしまっている。今思えば中庭での件もそうだけれど僕を通しての会話はともかくそれ以外での触れ合いというのはほとんど無かったように思う。それこそ伊藤さんがイレギュラーなのだ。彼女のように誰とでも仲良くできるというのはある意味で特技とも言える。


……誰とでも仲良くか…


「…?どうしたの家内、ぼーっとして」

【どこか体調でも悪いのですか?】

「へっ!?あ!いやなんでもないよ」


一瞬、昔のことを思い出していた。できることならあの頃に戻りたい。やり直したいと思える唯一の記憶。





小学生4年生の夏、僕はたったひとりの親友と出会った。






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