prologue
「おはよう、家内」
「なにやってるんですか玉波先輩…」
現在午前5時30分。なにかを感じ取ったのか早くに起きてしまった僕は1階でトイレを済ませてからまたひと眠りしようと思ったのだがまさかの客人が訪ねて来た。
「なにって、家内と一緒に学校に行こうと思って」
「一緒にって…まだ6時も来てないですよ…」
「ダメ……?」
「……」
玉波先輩は分かりやすく落ち込む。ふわふわとした髪の毛がシュンと垂れる様子はコミカルでまるで生き物のようでなんとも庇護欲をそそられる。
「分かりましたけど、多分 莉音も来ると思うでもう少し待っててください。あ、とりあえず上がってくださいね」
「莉音って、前に言ってた子よね?一緒に登校してるの?」
「ま、まぁ…一応」
「ふーん」
な、なんだか先輩の視線が痛いな?
「陽満?あんたこんな時間になにしてるの?」
「げっ!?」
「……!」
こういう時に母が出てくる。それはもうお約束といっても良い展開だが、まさか本当に起きてくるなんて…
「あら、その子は?」
「えっと!この人は学校の先輩「初めまして、お母様。私は玉波 姫と申します。陽満君には日頃からお世話になっております」
遮られた。というか、先輩対応完璧だな!?
「お、お母様……」
母がなにかプルプルと震えているが放っておこう。多分ろくな事ではない。
「ちょっと陽満この子可愛いわね!母さん気に入ったわ!」
「なんのことだよ!?」
「お母様に気に入ってもらえて私もとても嬉しいです」
なんだこれ……
「なにしてるの?」
……あ…終わった。
母さんと玉波先輩が談笑を始めた頃、2階からある人物が降りて来た。まぁ、もちろん思緒姉ちゃんなんだが…
「ハル君、お母さん…それと玉波さん。こんな早くから近所迷惑よ」
「ご、ごめん思緒姉ちゃん、起こしちゃったか?」
「大丈夫、私はとっくに起きていたから。でもなぜここに玉波さんがいるのか説明してくれるかしら」
「えっと…実は「あら、おはよう家内さん。私がここにいるのは陽満君と登校するためよ」
「……そうなのハル君?」
あれ?なんか怖いぞこの空間。
「う、うん」
「そう…気をつけてね」
思緒姉ちゃんはひとこと呟いてリビングへと入っていった。気をつけるって、なにに対しての助言なんだろう…
「と、とにかく先輩僕も準備してくるんで待っててくださいね…………!?」
早速、本日2度目となる危機。
「どうしたの家内?……あぁ」
僕と先輩の視線の先、つまりは玄関の方向にいつのまにか立っていたのは信じられないものを目撃したかのように固まった莉音の姿だった。




