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不確定性原理
私の不貞を知り、女は逆上した。
その後、仕返しだと言って、自分もほかの男と関係してしまう。
私は自分のことを棚に上げ、女をひどく責めた。
「私たち、立派なおばカップルだわね。こうなったら、二人のうちどちらかが死ぬことにしようよ」
女は涙に濡れた目で私を睨み返しながら言った。
「二つのグラスのうち、一方に毒を入れたわ。もちろん私は、どちらに入っているか分かっている。だから、あなたが先に選んで」
私は躊躇わずに右のグラスを取って、一息に飲み干した。
なんともなかった。
「本当は、毒を入れたなんて嘘」
女はそう言うと、自分は飲まずに立ち去った。
そいつを金魚鉢に注ぐのは止しておこう。
――了――