第八話 狡兔死走狗烹
約1週間ぶりの投稿です。遅くなってすみません。
また皆様のおかげで総合評価が2000ポイントを超えました。本当にありがとうございます。
■勇者クロード視点
なぜ、こうなってしまったのだろう・・・
今にして思えば、勇者に選ばれてから、俺の人生は間違いなく順風満帆だったはずだ。
だが、魔物討伐を完了し、王城に戻ってきてから、何かが狂い始めた。
最初は玉座の間での褒賞の伝達式だ。
同じ武勲第一等とはいえ、先に騎士団長が名前が呼ばれたのだ。
つまり、この遠征で一番の手柄を立てたのは俺じゃなく、騎士団長ってことだ。
最も危険な最前線で獅子奮迅の戦いを繰り広げ、魔物の親玉の仕留めた勇者の俺よりも、騎士団長の方がか?
だいたいアイツが一体どんな手柄を立てたと言うんだ!
俺達が魔物の巣や通り道を探し回ってる間、奥に引き篭もって大して役にも立たない作戦会を考えてただけじゃねーか!
かと思えば、前線に出たら出たで、口煩く細かい指図ばかりしやがって!
・・・本当に魔物の一匹も狩っていないアイツより、この俺が下だというのか?
全然納得いかない、アイツが伯爵サマで、俺が平民だからなのか?
平民が一番の手柄を立てたとなると、貴族連中のメンツが潰れるとでも言うのだろうか・・・
だが、そんな身分差の不当な扱いも今日までだ。
これからは俺も貴族、もう不当に扱われることはないと思っていたら、今度は宰相だ。
謁見の間での宰相との会談の事だ。
宰相からハーレムを持てないことを延々と説明された、まるで馬鹿な子供を諭すように。
たしかに理屈はそうなんだろう、だが俺の気持ちはどうすればいい? 俺の気持ちは全然納得できないでいる。
今までやって来たことが無駄だった、そうとは知らず一生懸命努力してた俺は本当に馬鹿みたいじゃないか。
だいたい俺は勇者なんだぞ! 少しぐらい特別扱いしてくれてもいいじゃないかっ!
そしてさらに、宰相のアノ言葉だ。
おかげで、俺とハーレムメンバーとの間に大きな亀裂が入ってしまった。
俺とドナが目が合ったあの瞬間、俺は本心を見透かされたと思った。
たしかに彼女達には悪いことをしたと思うが、男ならそれは仕方ないだろ!
そもそも考えてみてくれ、彼女たちの美しさは今が旬なんだ、これからは老いさらばえて、年齢と共に少しずつ衰えていくんだ。
そもそも、旬を十年も過ぎた女と、今が最も旬のもっと若い女と比べるなら、男なら誰だって後者を選ぶに決まっているだろ!
だが結局、その気まずい雰囲気を払拭できないまま、彼女達との関係は自然消滅、ハーレムも瓦解してしまった。
その後ドナとベルは王都を離れ、それぞれの故郷に帰ってしまったようだが、その中でルイだけは王都外れの木賃宿に残っていると言うではないか。その健気さに、思わずルイだけは将来のハーレムに世話役として雇ってやってもいいと思えるほどだった。
その後もハーレムを諦めきれない俺は、暇さえあれば何か方法はないか、抜け穴はないかと考え続けていた。
そして散々考えた挙句、方法が一つだけあることにようやく気付いた。
それは、俺が王に等しい、もしくはそれ以上の存在になることだ。
もちろん、女王や王太子を殺して、簒奪者になるつもりはない。
そもそも、一番の問題は俺が王女より身分が下ということなのだ。
たしかに王女の中には尊い王家の血が流れ、俺の中には卑しい平民の血が流れているのは事実だ。
そして、その王女サマのおかげで王族というこの国最高の一族になれるのだが、そのおかげで夫である俺が妻の主人ではなく従者になってしまっては意味が無い。
だがそれは、逆に俺の中の『勇者の血』が王女の『王家の血』よりも尊いものになればいいだけの話ではないだろうか?
例えば、子供がいない王太子が事故や病気で亡くなり、王女が女王になるような事があれば、俺はそれに伴い王配となる。
もしそうなったら、俺は何の力も無いお飾りの王配で終わるつもりはない。
過去にもあったという女王と共に国を治める存在、共同統治者になるつもりだ。
さらに、王女は俺が見る限り、とても政に向いてる性格じゃない。
その時は共同統治者どころか、実質的には俺が王ということになるだろう。
そうやってしばらく実績を積み、名声を得た俺が自らを王、勇者王を名乗っても反対する者は皆無に違いない。
ただの平民が勇者となり、そして王となって国を治める。
それこそが民衆の誰もが求める理想の勇者であり、物語の最高の大団円ではないだろうか。
そしてその後、ハーレムを作った俺は男たちの理想に、そして俺の妻達は女達の憧れとなり、勇者である俺は民衆から羨望される夢に体現者となるのだ。
ところで、王女が女王になる可能性についてだが、実は意外と高いかもしれない。
理由は、女王と宰相はこのところ敵が多いと聞く。
特に最近、女王が進める規制緩和は、平民の富裕層がさらに富み、民は苦しみ、貧富の格差が広がっている。
それに対して反発する貴族も多いと、この前会った貴族の息子が不平を漏らしていた。
さらに、女王の政策を継承するであろうと言われている王太子も命を狙われているという噂だ。
そんな貴族やその子弟達の話を聞いてやっていたら、いつのまにか女王達から王位簒奪の疑いを掛けられていた。
俺は、女王や王太子を殺して王位を簒奪する気はこれぽっちも無いと無実を訴えたが、聞き入れてもらえず、王宮の一室に軟禁された。
その後も、何度も尋問があったが、俺の無実は信じてもらえず、時間だけが過ぎて行った。
そして無為に過ぎてく時間の中で、俺はようやく、邪魔者になった自分が簒奪者の濡れ衣を着せられて処分されようとしている、そのことにやっと気が付いたのだった。
なんとか隙を見つけて、深夜の王宮を抜け出す事に成功した俺は、かつての仲間、ルイを頼った。
深夜にも関わらず、ルイは快く俺を迎え入れてくれて、思わず涙が出そうになった。
彼女は明日の朝一番、王都の北門が開かれたらすぐに脱出することを提案してきた。
もう夜明けまでさほど時間はないが、その脱出計画に乗る以外、他に道は無さそうだ。
そして、追手が待ち構えていない事を天に祈りながら北門へ向かい、彼女の手引きで王都から無事脱出することができたのだった。
だが、逃げたのがバレて、国中に追手が放たれるのも時間の問題だと思った俺達は、国外に逃亡するために、大陸との玄関口である港町に急いで向かうことにした。
そして旅の間ずっと追手の影に怯えながらではあったが、なんとかその港町に着くことができた。
ここまでの旅で、一度も追手に遭遇しなかったのは本当に僥倖だった。
すぐさま街に入った俺とルイは別行動となった。
ルイは脱出に利用する船の船長か船主かに渉するために、一足先に街に入って行った。
最近は大陸からの家畜の輸入が増えたおかげで、船の行き来が多くなった。
俺達はその貨物船に忍び込んで国外へ脱出する算段だ。
そして、俺の方は場末の酒場で情報収集を兼ねた食事、久々のまともな食い物を口にすることができた。
ボサボサの髪に無精髭を生やしている俺は、どこから見ても小汚い冒険者の風体を晒していた。
一応、念の為に口元はマフラーで隠しているが、それでも用心は怠らないつもりだ。
既に追手に見つけられ、泳がされているかもしれないからだ。
もしそうなら、隙を見せたその瞬間に俺たちを襲ってくるだろう。
酒場では最近立てられたお触れについて盛り上がっていた。
もちろん内容は勇者である俺の逃亡劇についてだが、姫様を裏切ったという否定的な意見や戦友でもある聖女の手を取ったという好意的な意見がほぼ半々で占めていた。
中でも気になった内容は、出頭してくれば、赦してくれるという事だが、誰が信じられるものか!
そもそも許すも何も、俺はなにもやっちゃいない、無実の罪で追われてるのだからな。
どうせどこかに幽閉して、その後で病死したことにでもするつもりだろうさ。
さらに時折話に上る、王家の寛容な態度を賞賛する声を聞くと、思わず俺が勇者である事、邪魔者として濡れ衣を着せられて殺されそうになっている真実をぶちまけたくなるが、そんな事をしても意味はなく、追手に自分達の居場所を教えるだけだと分かって居るので、ただ黙って我慢するしかなかった。
その後、食事を済ませた俺はルイとの待ち合わせ場所に向かった。
合流したルイから深夜の海岸から小舟に乗って沖に停泊中の貨物船に引き上げてもらう手はずになったことを聞かされた。
そして時間になり、指定の海岸に着くと、暗闇の海を一艘の小舟が近付いてくるのがわかった。
剣に手をかけ、小舟を警戒しながら注視していると、背中に強い衝撃が走った。
次の瞬間、俺の胸から刃は生えていた。
俺は振り向くこともできずに地面に倒れ、ルイの名を呼ぼうとするが、肺に血が入って溺れるような感覚に襲われてうまく声が出せない。
そうこうしているうちに、目の前が真っ暗になり、すぐ後ろにいたはずの彼女の安否を気にしながら、とうとう意識は永遠の闇へ堕ちていった。
前回のサブタイトルから、内容どころか今回のサブタイトルを予想できた人も多いと思いますが、如何だったでしょうか。




