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第五話 別離

■幼馴染ドナ視点


その後、クロードと会って話す機会は訪れなかった。

それどころか、他の聖女二人との会話も減ってしまった。

今までは、(あいだ)にクロードが居たからこそ三人の関係が成立していた事がわかってしまった。

そして、クロードという中心を失った三本の柱はバラバラに倒れるしまうのだろうということも。


結局、ワタシ達の誰も戦勝パレードに参加しなかった。

戦勝パレードを出席しておいて、婚約式を欠席というのはさすがに体裁が悪い、さすがにそれくらいはワタシでもわかる。ならいっその事、最初から欠席した方がマシだと思ったからだ。

パレード当日、出発前のクロードと王女のすぐ後ろに、フードを深く被った三人の修道女が遠目で見ることができた。

たぶん、あれがワタシ達の代役なんだろうなぁ~と、それ以上の興味を持つ事は無かった。


そしてその日、薬師のベルは早々に出て行った。

王城の大聖堂で婚約式が行われてる最中に、ワタシに会いに来てくれた。

「今までありがとう。それから、迎えに来るなら早めにね、でないと他の人に取られちゃうかも。」

そうクロードに伝えて欲しいとワタシに伝言を頼むと、それから王城を後にした。

これは彼女なりのクロードへの労りであり、別れの言葉だとワタシは理解した。

なぜなら、彼女は待ってるとは一言も言わなかったのだから。


彼女の言葉を伝えようと、何度かクロードを見掛けると近付こうとしたことはあった。

だがその度に、あれこれ理由を付けられて衛兵に止められてしまった。

もっともワタシ自身は、その制止を振り切ってまで、クロードに会いに行こうと思う気持ちは時と共には小さくなっていた。

あの時、宰相に言われた言葉、10年、15年待てるでしょ、本当に愛しているのなら?と言われた気がしたからだ。

そのせいで今もワタシは、クロードに対して多少の負い目を感じている。

その上、あの時のクロードの表情(カオ)を見て、10年後、15年後にはワタシ達ではなく、もっと若い女の子を選ぶと口に出さなくともわかってしまった。


ワタシはそれまで、ワタシ達聖女三人はクロードにとってかけがえのない大切な・・・そう、特別な存在だと思っていた。

だがあの時から、ワタシ達の代わりの利く存在(モノ)なのだとなんとなくだがわかってしまった。


そんな負い目と失望感の(せめ)ぎ合いもあり、とうとう期限の一月が迫っていた。


王城を去る当日、騎士団長さんが会いに来てくれたので、今までの御礼と、ベルからクロードへの伝言、そしてその言葉に便乗する形で、彼女同様ワタシも同じ気持ちだとクロードに伝えてくれるようにお願いした。


そして王城を出て行こうとすると、今まで姿が見えなかった聖女ルイが城門近くでワタシを見送りに来ていた。

ワタシは、王都に残ると言うルイに大丈夫なのかと尋ねると、大して気にした風もなく答えた。

「気にしなくても大丈夫、まあなんとかなるわ。それより、早く勇者のことは忘れて、新しい人を見つけて幸せになりなさい。」


彼女なりに励ましてるつもりなのだろうが、そんな無神経な言葉より、いつもより饒舌な彼女に少し驚きながら、ワタシは王城の北門から出て行った。


とりあえず、王都に一番近い街へ向かうことにしていた。

故郷のお父さん、お母さんには早く会いたいけど、村であれだけ大見栄切った手前、なかなか素直に戻れない。

さらに失恋して、幼馴染のトーマと同じ境遇になったワタシは、彼にどれだけ酷い事をしたか、やっとわかった気がした。

今更よりを戻すつもりなど無いけど、トーマにした事を思えば、謝りたい気持ちはもちろんある。

だけどそれ以上に、

「言わんこっちゃない、やっぱり勇者に捨てられて戻ってきた。」と嗤われるのだけは絶対に嫌だった。


クロードからはっきりと別れを言われたわけではないけど・・・いや別れたというより、実際は捨てられたということはわかっている。

その事実を認めたくないというより、考えたくないのだ。目の前に突きつけられたくないのだ。

今はただ、もう少しだけ時間が欲しい、それだけなのだ。


いっそワタシがトーマにしたように手酷く振られて、その後大泣きすれば、綺麗さっぱり忘れられて思い悩まずに済むのかな?


ワタシはまだ自分の気持ちに区切りを付けることができないでいる。


だから村にはまだ帰らない。







■勇者クロード視点


あれから一月経った。

宰相との会談以来、俺はドナ達とは話をしていない。

なぜなら、お互い気まずくて何を言っても言い訳にしかならないだろうし、今更話し合っても何も変わらないとわかっているからだ。

翌々日の戦勝パレードをドナ達は欠席した。いや本当は、メインの婚約式を出たくないからだと思った。

そして、俺の知らないうちに、彼女たちは城から退去していたことをつい先程知った。


城内でばったり会った騎士団長に、世間話をするかのように教えられた。

最初に薬師のベルが戦勝パレードを待つこともなく去った。行先は実家の薬屋に戻るそうだ。

次が、猟師のドナが三日前に王都を出て行った。彼女の話は要領を得ない内容だったらしく、少し寄り道をして故郷に帰るということだけがわかったそうだ。



最後にルイだが、元々王都に住んでいた彼女はそのまま残ったらしい。罰として報奨金は残らず没収されたが、王都のはずれ北門近くの銀の鈴というも木賃宿に泊まって、今も冒険者家業を続けているらしい。

勇者に選ばれてすぐ仲間になった彼女は、三人の中で付き合いは一番長い。

口数が少なく、少し不愛想な彼女が王都に残ってくれたことに驚きと幾何(いくばく)かの嬉しさを感じた。


その事で少し冷静になれた俺は、まだ俺の夢は完全に(つい)えたわけではないのだ、と思うことができた。


そう、俺は勇者なのだ。勇者なら例え小さくとも可能性が残っている限り諦めてはいけない!


彼女たちの想いを無駄にしないためにも俺は再び、夢に向かって前に進む決意をした。

どーでもいい裏設定


ティターニア連合王国の成立前には4つの王国が存在しました。

統一を果たした現王家のイルモア王国は、その東に一番小さいネブラ王国、北東に2番目に小さいアリエル王国、そして北東に最大勢力のエスコット王国がありました。


イルモアは最初、東隣のネブラを滅ぼし、王太子が治める公国としました。

王太子が生き残った傍系とはいえ、ネブラ王家の姫を娶ったことで反乱も少なく統治できました。

勢力図が変わり、その後アリエルが恭順の意を示し、勝ち目のなくなったエスコットが同盟という形で事実上の恭順をして統一されました。


島国であったこともあり、大陸の国々より、四王国同士で政略結婚をすることが多かったため、

統一後、アリエル王家、エスコットは公爵家となるが、両家共、既に王家の外戚関係であった。


さらに余談ではあるが、ネブラ公国を王太子が治めることが慣習となり、現在、王太子=唯一の大公となります。

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