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第四話 矛盾

皆さん、もう気付いておられるかと思いますが、回答編というか答え合わせです。


勇者達が宰相の案内で謁見の間に到着すると、宰相の補佐官らしき二人が既に準備万端の状態で待っていた。


「皆様、ご苦労様でした。今から今後の事についてお話させて頂きたいと思いますので、まずはお掛けください。」

と宰相は、朗らかに笑いながら席を勧めた。


「まずは、今回の魔物討伐の御成功、誠におめでとうございます。私からもお祝い申し上げます。では先に褒賞について詳しくご説明させて頂きたいと思いますので、皆様、報奨金をお受け取り下さい。」

宰相が祝辞を言うと、恩賞の説明に入った。補佐官たちが重そうな革袋を一つずつ持って、各々の目の前の置いた。


ドンと響いた革袋の音で、かなりの重さであることがわかる。


「それでは皆様、念の為、袋の中身をご確認ください。」

補佐官が声をかけると各々が渡された革袋を開け、中に入った金貨を確認し始めた。

だが、聖女の三人にはすぐに気付いた事があった。


「これ、金額多くないですか? さっき陛下の御前で言われた金額のおよそ倍はあるんじゃないですか?」

三人の中でも金勘定に慣れている薬師のベルが宰相に尋ねた。


「聖女の御三方には今すぐとは申しませんが、一月以内に王都から退去して頂きたいと思いまして、これはその・・・気持ちだとご理解ください。」


「ワタシたちは、やっと勇者様の妻になれるというのに、用は済んだらさっさと王都から出て行け!そういことですか?」

「ドナ!!」

ドナが言うと同時に、聖女の一人であるルイが強く彼女の名を呼び窘めた。


無論、勇者も黙ってられるはずもなく、宰相に噛みついた。

「彼女達には私が王族になった暁には、妻として迎え入れると約束してます。今更それを反故にするつもりはありません! なのになぜです? 私の婚約者達を厄介払いするような真似をするのですか?」


しかし、宰相は笑みを絶やさず話を続ける。

「理由はいくつかございますが、その中でも最大の理由・・・ひとつめは勇者殿は王族になるのではなく、正確には王族の配偶者になられるのです。王族の配偶者になる貴方は、王女殿下以外の妻を娶ることは許されるはずがありません。貴方に課せられた使命は、王族の血を残すことです。なのに、他の者と子を成すような真似が許されると本気でお思いですか?」


そして一端言葉を切り、今度は聖女ドナに視線に移すと、宰相は彼女に向かってゆっくりとした口調で諭すように話し始めた。

「聖女ドナ、貴女は先程、勇者殿の妻になると申されましたが、それは違います。貴方は勇者殿の妻である前に、王女殿下の配偶者の妻、つまり『王族の配偶者の配偶者』になると、そう貴女は申されてるのですよ? その意味がおわかりですか? 」


今度は、まだハーレムを諦めきれない勇者が弱々しく反論してきた。。

「で、でも、王族や貴族の中にはたくさんの妻を持っている人がいるじゃないですか。その人達が良くて、俺がダメって・・・俺とどこが違うと言うんですか!」

動揺してるせいか、先程まで一人称が『私』だった勇者は、地の『俺』に戻ってることにも気付いていない。その上、反論は的を大きく外れでお粗末なものだった。


「まだわかりませんか? 王女殿下は王位継承権をもつ立派な王族、かたや勇者殿は王族と婚姻を結ぶことでなった王位継承権の無い王族、御立場が違います。どちらが上でどちらが下か、もうおわかりになりましたよね?

さらに、王配殿下への不敬を敢えて承知で申し上げますが、エスメラルダ女王陛下の夫であらせられますフリードリヒ王配殿下が新たに第二夫人を迎えることができると、これまた本気でお思いですか? 勇者殿が先程からおっしゃられているのは、つまりそういう事なのですよ。」

捲し立てて息が続かなかったのか、宰相は一呼吸おいてから話を続けた。


「さらに二つ目の理由ですが、先程の勇者殿の疑問の回答にもなると思います。勘違いなされてるかもしれませんが、我が国では複数の妻を娶ることはできません。ただ王族や貴族に関しては、後継者を、その血を残さねばなりません。その為、正妻との間に子を授からなかった場合にには。止むを得ず側室を迎えています。今回の王女様と勇者殿の場合、もし御子に恵まれないということになれば、第二夫君を迎えるという事にはさすがに無いと思いますが、勇者殿に問題(タネナシ)があるということで別れて頂き、新たに夫を迎えるという可能性は十分あると思います。もちろんそのような場合には、勇者殿は当然、王族ではなくなりますが。」


「じゃあ・・・じゃあ、ワタシたちはクロードの妻は無理でも愛人にはなる事はできますよね?」


ドナは尚も食い下がってくるも、それを嘲笑うか如く、宰相は止めとばかりに三つ目の理由を話し始めた。


「最後に、三つ目の理由ですが・・・確かに王女殿下の御許しが出れば、愛妾として迎えることはできるかもしれません。但し、悪い風聞となる愛妾を果たして王女殿下がお認めになるのか。そもそもお許しが出るのは、いつ頃になるのか?

まず、王女殿下には少なくとも三人は御子を授かっていただかないといけません。そして、その御子達がある程度成長した後であれば、もしかするとお許しが出るかもしれません。ですがそれは、10年、15年後の話かもしれません。 聖女様方は、それまでお待ち頂くおつもりですか?」


「それは・・・」


宰相は口籠る聖女を嘲笑うかのように、今度は勇者へ視線を向けて話し出した。


「それに、勇者殿も・・・もし10年、15年後に愛妾を迎える事ができるのであれば、うら若き乙女の方がよろしいのではないでしょうか?」

宰相はニヤっと下卑た笑いを浮かべながら、勇者に水を向けるのであった。


一瞬、何を言われたのかわからないという顔をしていた勇者だが、その言葉の意味を理解すると周りを見渡し、聖女達と目が合った。

「・・・そんなことはない。」

聖女達から目を逸らした勇者は、尻すぼみに否定するのが精一杯だった。


「明後日は小さいながら戦勝パレードと王城の大聖堂にて王女殿下と勇者殿の婚約式を執り行う予定です。もし当日ご気分が優れないようでしたら、聖女の御三方は欠席して頂いても構いませんよ。欠席される場合は、場内の者を通じて私にご連絡ください。それでは私の話は以上ですので、これから先のついては各々で話し合って頂くということで、後は御退室願えますかな?」

宰相に退室を促された勇者と三人の聖女達はすごすごと謁見の間から出ていくしかなかった。

どーでもいい裏設定


⓵離婚について


まず、離婚がかなり困難な社会です。離婚の際には教会の許可が必要になります。

ですが、王族や貴族は子供が生まれないことが理由であれば、比較的簡単に離婚ができます。


しかし子供が生まれなくても、正妻の実家との力関係によっては、逆に離婚が困難な場合もあります。

そういった場合の緊急的措置として側室を迎えることができます。

また名目上は、側室は妻ではなく、家族ですらありません。

乳母が正妻に代わり乳を与えるように、側室は正妻の代わりに子を産む『使用人』です。

ただ実際は、それなりの血筋の人が側室になる為、大切に扱われるのがほとんどです。


また無学な平民の中には、貴族になればハーレムを作れると誤解してる人もいます。



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