第二話 夢
ヒント出しすぎたかな? 伏線バレバレですね。
■勇者クロード視点
俺、勇者クロードは今、王都に向かっている。
いや、俺の輝かしい栄光の未来へ突き進んでると言っても過言ではないだろう。
今回の遠征で魔物達は一掃された。
魔の森のヌシ、いや王とでも呼ぶべき存在、魔物の王がついに討たれたからだ。
王を失った後の魔物達はまさに烏合の衆、王国軍兵士達の各個撃破によって次々に駆逐されていった。
これでもう、少なくとも今後何十年かは魔物の脅威に怯えることはなく、人々は安心して平穏な暮らしを送れるだろう。
そして何と言っても、この戦いで魔物の王に止めを刺した俺の功績は物凄く大きい。
武勲第一等はまず間違いないだろうし、たぶん恩賞は思いのままになるんじゃないかな?
さらに、以前から恩賞としてお願いしてる王女との婚約もこれで決して夢ではなくなったと思う。
それは、俺の夢に一歩どころか何十歩、何百歩も近付いたと事を意味するのだ。
もうそれは、俺の目の前に、すぐ手の届く所まで来てると確信していた。
そうそれは、男の浪漫、この世の天国、地上の楽園、それが俺の夢、多くの美女に囲まれるハーレムの実現である。
ようやくである、ようやくその実現に向けての最終段階に来たのだ。
後は突き進むのみである!!!
まず手始めに姫様と婚約し、そののち結婚する。
平民から王族になったところで、ドナ達を側室に迎えて、第一次ハーレムメンバーの結成である。
そしてついに平民では絶対に成しえなかった俺の夢、ハーレムの第一形態が完成するのだ。
しかし同時に、第二次ハーレムメンバーの選考を始めなくてはならない。最終的には、百人くらいを目指そうと思っているので先はまだまだ長そうだ。あと、爺になったら、瑞々しい十代の若い妻を娶るというのもなかなか楽しそうだ。
そう考えると、魔物討伐からやっと解放されたというのに、これからも多忙な日々がまだまだ続きそうだ。
俺はこれから先の事に想いを馳せながら、頬が緩みっぱなしなのを抑えることができなかった。
★魔術師ファルメール視点
私は父が遺したロクでもない研究を引き継いでいた。
父が遺した研究内容は、魔道具の中枢部品である魔石の修復再生である。
本当なら、父の助手をしていた兄が引き継ぐはずだったのだが、兄は父の死後、しばらくして失踪した。
一応捜索したが見つからず、結果、助手の助手のような立場の私に研究のお鉢が回ってきてしまった。
さらに昨今の情勢は、迷宮や遺跡から発掘される未知の魔道具の解析が持てはやされ、それに関する論文が現在の魔法学会の主流となっている。それに対して錬金術に類するような研究は異端視されている為、誰からも支援も援助も受けられず、私一人で研究を続けなければならない状況だ。
まあ、普通に考えれば、何の成果の出せずに無駄に終わるであろう研究に手を貸すより、早期に確実な成果が得られる研究に人や資金が流れるのは当然の事だと思う。私だって状況が許せばそうする。
しかし、それができない私が引き継いだ父の研究は、確かに成功すれば、莫大な富と名声を手に入れられるだろう。だがそれは、あくまでも成功したら、破損して使用不能になった魔石を修復再生ができたらの話だ。
だがこれは、もう既に博打ですらならない、ただの夢物語、仮定に仮定を重ねた妄想の産物なのである。
そもそも魔石の構造自体が未だに解明されていないのに、陶器のように破損部分にただ継ぎ足したところで元通りに稼働するはずがない、わかりきってることだ。
それでも父は、いろんなアプローチで実験を行い、その反応を調べて解析しようと試みたようだが、ほとんど全てが無駄な実験で、まさに砂漠の中から針を探すような事を延々と繰り返していた。
その上、破損した魔石はタダ同然とはいえ、成果の出ない研究を続ける事は金をドブに捨ててるのと同じ事。
そして当たり前の事だが、とうとう私の代で資金繰りに困り始め、研究そっちのけで資金繰りに奔走することの方が多くなってしまった。
そんな中、父が辛うじて出した成果の中で金に成りそうなものが一つだけ見つかった。
それは、砕いた魔石を棒状に固め、両極に魔力を流すと発熱するという代物である。
これに一縷の望みを見出し、溶鉱炉に応用できるのではないかと研究を続けたが、如何せん最高温度が低く、鉄の融解点までには届かなかったのである。
結局、研究は無駄になり、とうとう資金も底をつき、この研究の終焉を迎えた。
私の当座の生活費とできれば今後の研究費を稼ぐというささやかな夢は絶たれたのだった。
■幼馴染ドナ視点
ワタシ達、勇者クロードとその一団は王都に向かってる。
輜重兵の皆さんもいるので、ゆっくりとしたペースだ。
王都の方角を見るクロードの顔が目に入る。
クロードも王国に平和を齎した事が嬉しいらしく、終始微笑んでいる。
そんなクロードを見ながら、これまでの事を思い出していた。
ワタシとクロードとの関係・・・もちろんキスぐらいはしたけど、まだ男女の一線は超えていない。
なぜなら、クロードといい雰囲気になると決まって邪魔が入るのよ!
一人目は騎士団長のマシュー様、自分にも同じくらいの歳の娘がいるらしく心配だとかで・・・あんたはワタシのお父さんか!と言いたくなるくらいだ。
二人目は、凄腕の騎士ジャックさん、勇者様を警護するとかでいつもクロードに張り付いてくるお邪魔虫だ。
三人目は、司祭のゲイシー様、未婚の女性がその様なことに及ぶのははしたないとかお説教してくるけど、たまにクロードを見る目が熱っぽい気がしてチョット怖い・・・
あと一人、何も言ってこない魔導師ゲイン様がいるけど、凄腕の騎士さん、司祭様の3人が最初の勇者パーティーだったそうだ。
今では勇者様に選ばれた三人の聖女、ワタシと町娘の薬師ベルさんと冒険者上がりの剣士ルイの女性陣で周りを固めている。
これまでずっと邪魔されてきたワタシ達だけど、クロードと結婚したらもう誰はばかることなくず~っと一緒に居られるの!
その先の事を想像すると顔が熱くなり、思わず両手で頬を押さえてしまった。
これから、クロードはお姫様と結婚して王族になる。私たちは王族になったクロード・・・その妻になったワタシは貴族になるのかな? それとも平民のままなのかな? もしかして王族!?
どっちにしても、あの村に居たら絶対に味わうことのできない暮らし・・・朝はふかふかのベッドで目覚め、午後はいい香りの紅茶と甘いお菓子のお茶会、夜は綺麗なドレスを着て舞踏会、そんな夢のようなこれからの暮らしを想像するとワタシは嬉しくて仕方なかった。
どーでもいい裏設定
●初期勇者パーティーのメンバーの3人の名前は殺人鬼からとりました。
⓵切り裂き魔のジャックさん ⓶連続少年殺人犯のゲイ氏 ⓷遺体でモノづくりのゲインさん
戦闘時にヒャッハーするとか考えてましたが、本筋から大きく外れるので没にしました。
●監視について
何処の馬の骨かもわからない平民出の勇者なので、何か馬鹿な事かすかもしれないから、常に監視を付けています。基本はジャックさんが、さらに念には念ををということで、暗部も三交代で監視しています。
この一団の旗頭は一応勇者ということになっていますが、実際取り仕切ってるのは騎士団長です。
監視対象の報告は騎士団長へ行います。
余談ですが、今回の魔物討伐の作戦立案は騎士団長を中心とした幹部達で行われました。
●魔法について
この世界に魔法はありません。
『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。』という感じで、人々は魔法だと思い込んでいるものが存在してるだけです。
●勇者と聖剣について
王家の『聖剣』と勝手の呼んでるモノは、過去に迷宮や遺跡から発掘された剣です。
世間一般では、聖剣を使える者が勇者と呼ばれ、教会の神託は後付けで行われます。
但し、鎧兜とセットだった聖剣は既に失われており、現在の聖剣は、その後、遺跡で発掘された非常に硬いだけの剣です。
●勇者選定の儀
世間一般では、硬い石床に刺さった剣が抜けるかどうかで判定されると思われています。
実際は、事前に適正調査済みで、担当の人がタイミングを計ってロックを外して聖剣を抜かせる茶番です。
しかし、本当に重要なのは剣ではなく鎧兜の方で、パワーアシスト、暗視装置、赤外線捜索追尾システム等が搭載された優れものです。
なので、真実は聖剣を扱える人ではなく、鎧兜を扱える人が勇者と認められます。
当然そのことは秘密で、当の勇者も知りません。




