第一話 婚約破棄
よくあるテンプレ展開ですが、普通に考えればおかしな事を言ってると思います。
よろしければ、一緒に推察していただければと思います。
「トーマ! ワタシ、勇者様と結婚するから、婚約はナシね!」
魔物討伐から帰ってきたボク幼馴染、ドナがいきなりそんなことを言い出した。
1年前、村一番の弓の使い手の彼女は、魔物討伐で村々を回っていた勇者にいきなり聖女認定されて、
喜び勇んでその一団に付いて行った。
千人近い兵士を引き連れていたので、特に心配してなかったが、ドナが無事に帰ってきた点については勇者に感謝してもいいと思った。
そんな事を思っていると、ドナはさらに畳みかけてきた。
「5歳の時にした約束だから、別にいいよね!」
「たしかに子供の時の約束だけど・・・1年前、村を離れる時に戻ったら結婚しようとか言ってなかったけ?」
「・・・うっ、わかったわよ! お金ね?お金が欲しいのね! はい、コレは慰謝料よ!」
ドナは懐から小さな革袋を取り出すと、中から金貨1枚を掴むとボクに突き出してきた。
「別にいいよ、こんなに早く戻ってくるとは思わなかったから、結婚の準備は何もしてなかったし。」
金貨1枚という大金にびっくりしたが、金貨を摘まんでる彼女の手をボクはどうにか押し返した。
「どうせ口約束だし、気にしなくていいよ。それよりこれからどうするの?」
「勇者様と一緒に王都に行って、女王様からご褒美をもらうの! 勇者様は王女様と結婚して王族の一員になる。そして私たちは、王族となった勇者様の側室になるの! 王城で貴族のような贅沢な暮らしをして、こんな貧乏な村の生活とさよならするのよ!!!」
「へ~そうかい、それじゃあお幸せに。ところで、その勇者様は信用できる人なのかい? 君が捨てられたりしないか心配で心配で仕方ないよ。」
半分本気で心配してるが、残り半分は、仕返しのつもりで言ってやった。
「振られたからって、勇者様を悪く言わないで! みっともないわよ! 勇者様はアンタなんかと違って強くて優しい人よ!こんな貧乏な村で何の役にも立たない玩具ばっかり弄ってる根暗とは全然違うわよ!」
「わかったよ、さっさと行けよ!」
ボクは趣味の事を馬鹿にされてカッとなり、半分残ってたドナへの心配も今の一言でどうでもよくなった。
もうこれ以上、ドナとは話したくなかったのだ。
「うるさいわね!アンタに言われる筋合いじゃないわよ!これから両親に挨拶に行くのっ!!!
自分の親より先にアンタに会いに来てやってっていうのに! 感謝して欲しいくらいだわ!」
ボクは何も答えず、回れ右をして我が家に向かって歩きだした。
「悪いがそういうことだ! できれば、恨まないで欲しいな!」
背中から、今まで黙っていた勇者の嘲りを含んだ声が聞こえたが、同じく無視した。
我が家に着くと、家には入らず、裏手にある作業場へ向かった。
村で農具等を修理する鍛冶の仕事をしていた両親は、4年前の流行り病で二人揃って他界した。
今は一人息子のボクが家業を継いでるが、暇なときは、趣味の機械弄りをしている。
それは、お湯を沸かしてそこから出る蒸気で物を動かす機械、蒸気機関だ。
もちろんボクが考えたものじゃない。
大昔のどこぞの貴族様が考えたもので、魔法を使わない機械ということで当時は脚光を浴びたと父親から聞いていた。
そして子供の頃、たまたま通りがかった旅の商人から蒸気機関の写本をタダ同然で購入することができた。
当時は、高価な本がそんなに安く手に入れられたことが不思議だったが、作ってみてその理由がわかった。
全く役に立たないのだ。
小さな模型サイズなら問題ないが、実用的な物、たとえば鉱山の排水等に使おうものなら、非常に大型になり、使用する燃料も大量になる。
ボクの計算では、蒸気機関の一日に使用する燃料は、一般的な炭鉱の採掘量の約半分に相当するのだ。
これで鉱夫の賃金など払ってたら・・・炭鉱ならまだしも他の採掘場では大赤字確実である。
薪や石炭が値上がりしてる昨今では、猶更で、牛馬を使って排水したほうが圧倒的に安上がりである。
ボクは今、燃料効率を上げようと改良を続けてるが、実用化に至るにはおそらくボクの孫の代でも無理だと思っている。
そして・・・目の前の蒸気機関の模型を何気なく眺めていると、過去の懐かしい記憶が甦った。
子供の頃、目の前の模型が動くのを見て、すごい!すごい!と褒めてくれたドナ・・・嬉しかった・・・本当に嬉しかった。
だが、そんな言葉をかけてくれるドナはもういないのだ。
幼馴染のドナに対して恋愛感情が薄かったボクだけど、あれだけ褒めてくれてた蒸気機関を馬鹿にされたのは、婚約破棄なんかより遥かにショックだった。
翌日、彼女が王都に向かったことを近所の人から聞いた。
村を去るドナに対してもう特に何も思うことはなかったが、ただ彼女の言ったことに対しての違和感、どこかに矛盾を孕んでるような気がしてならなかった。
どーでもいい裏設定
⓵結婚について
この世界では基本的に一夫一妻制です。
但し、王族や貴族の中には側室や愛妾を持っている人がいます。
平民が公然とハーレムを持つことは不可能です。
⓶王族の結婚について
この世界は同等結婚が基本で、王族は王族、貴族は貴族、平民は平民と結婚します。
但し、今回の女王が治めるこの国は周りを海に囲まれた島国で、陸続きの外国は存在しません。
その為、大陸の国々と違い、それほど他国の顔色を伺う必要がなく、
無理して王子や王女を他国に嫁がせる必要性はありません。
なので、貴賤結婚である王族と貴族の結婚はそこそこある状態です。




