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低ランク冒険家は竜王様を召喚してしまいました  作者: ラストシンデレラ
第2章 泉の水竜 地鳴らすコンパロロ
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04、氷は熱に弱い?



 朝のギルド『野郎の墓場』

 

 これから迷宮へ行くギルドメンバー達は朝食を口の中へかき込んでいる。しっかり腹を膨らませ、魔物との闘いに備えるのも冒険家の仕事だ。


「おーう青の腕章(ルーキー)共! 今日は眠たそうだなてめぇら、そんなんで迷宮へ行けんのかオラぁ!」


 その傍ら、ヴェッジさんが毎朝恒例の儀式(笑)で青の腕章達に活を入れていた。


 僕は緑の腕章へランクアップしたので、もうあそこに参加することはない。


 なんとなく寂しい気持ちはあったけど、ヴェッジさんの恐ろしい表情を思い出して、それは気のせいだと思い込むことにした。


「うへぇ、朝からヴェッジは元気だねぇ。感心するよまったく」


 同じくランクアップを果たしたメルゥは、ヴェッジさんから活を入れられる事もないので、優雅に朝食のソーセージを頬張っている。


 もっもっもと頬を膨らませるメルゥはなんだかリスみたいだった。


「う~ん、ギルドのご飯は絶品だね。私が作る料理とは大違いだ」


「内のギルドを気に入ってくれてなによりですよ」


「ずっとここに居たいぐらいだ」


 なんてメルゥが言い出す理由は、現在ギルドの2階にある空き部屋を借りて、そこで寝泊まりしているから。


 メルゥの自宅は聖都の外にあるため、そこから一々ギルドへ足を運び、迷宮へ通うのは中々に不便。


 とのことで、僕が大聖堂で治療を受けている間に、ヴェッジさんへ話を通したみたいだった。


「むふふぅ~、いつまでも食べていたい!」


「ははは、大丈夫ですよ。迷宮の稼ぎをギルドに(・・・・・・・・・・入れている内は(・・・・・・・)、少なくとも食に困る事はありません」


「うぐっ!」


 ギクッとメルゥの手が止まった。


「あ」


 僕はしまったと口を塞ぐ。


「そだねぇ~。働かざる者食うべからず。当たり前だよねぇ~」


「い、いいやぁ! 何も僕はそういう意味で言った訳じゃぁ!」


「気遣いは無用だよリュイ君」


 トーンを落として呟くメルゥ。

 目に見えて顔に影が差した。


「私は……、役立たずさぁ!」


 ドサッと力なくテーブルに倒れこむメルゥ。


 彼女が何故こんなにも落ち込むのか。

 それは昨日挑んだ迷宮、エリア2『火山』での出来事が理由だ。




〇 


  


 身剥ぎの懸賞金で懐が温かくなった僕達は、装備を新たに迷宮の玄関口〈大神殿〉まで来ていた。


「このローブ、良い感じですよ!」


 身剥ぎの刃によって僕が着ていた服に穴が開いてしまったので、僕は新しいローブを購入してみた。


 それは《魔法耐性》という、魔法に対する強くなる特殊効果が付与されている優れもの。

 

 おまけに動きやすさも追及していて、その価格は10万メセル。中々にお高い防具だった。


「ふーん、私のも良い感じだよ。サイズもピッタリだし!」


 メルゥはメルゥでややサイズが大きかった防具から、メルゥのサイズにピッタリな皮の鎧(レザーアーマー)へと更新。


 こちらも僕と同じく《魔法耐性》が付与されている物だ。


 迷宮、エリア2『火山』は『森』の魔物と違って魔法を放ってくる魔物が居るらしく、こういった《魔法耐性》の付いた防具は必需品とのこと。


 そしてもう一つ。

 

 僕達の防具には《火耐性》《熱耐性》と呼ばれる特殊効果も付与されている。それは読んで字の如く、火と熱に強くなるといった効果。


 それは溶岩が流れ、火の粉が舞い、時おり火砕物が降ってくる迷宮『火山』への対策のため。


 これでいよいよ、新たな迷宮へと挑む準備が出来た。


 なんだけど……。


「さあ行きましょう!」


「う、うん……」


 メルゥの声はやや沈んでいた。


 その訳は、メルゥが操る魔法が『氷属性』という点にヒントがあった。




「く、くぅ、熱いぃ~」


「ちょ、やっぱり無茶だったんじゃ……」


 迷宮『火山』の環境はメルゥに牙を向いた。


 ここはさっきも言った通り、溶岩が流れ火の粉が舞うまさに灼熱の空間。僕はローブの《熱耐性》のお陰でなんとか平気だけど、メルゥの方はと言うと……、


「と、溶けるぅ~」


 駄目みたいだ。

 

 立ててはいるけどその足はがくがくと震え、支えが無ければまともに歩けない状態だった。今は僕の『杖』を文字通り杖として使っている。


「く、くそう。駄目、みたいだリュイ君」


「見たら分かりますよ! 急いで戻りましょう!」


「すまない。この私が足手まといに、なるとは……」


 何故、こうなってしまうのか。


 メルゥみたいな竜には『属性』をその身に宿しているらしく、メルゥの場合は『氷属性』に当たるらしい。


 ギルドの魔術師に『氷』の魔法は『火』の魔法に弱いと聞いたことがあるけど、それが氷魔法を操るメルゥにも当て嵌まるとは。


「やっぱり、無謀だったか……」


「大丈夫……じゃないですね」


 まだ入り口付近だというのに、メルゥは今にもとろけそう。


 崩れ落ちそうになるメルゥを抱えて僕は直ぐに帰還する事にした。その道すがら、僕はメルゥが以前に言っていた言葉を思い出す。


――火山って熱いのかな~なんて……


 その意味を聞いたところ、メルゥは熱に弱いと打ち明けた。それは灼熱の迷宮『火山』にメルゥは挑めないかも知れないという懸念を生む。


 それを聞いた僕は『じゃあ今まで通り森に行きましょう』と提案したところ、メルゥからは『一応、本当に駄目そうなのか確かめて見よう』と提案を返されて今に至る。


 結果は駄目だった。

 いくら《熱耐性》を持つ皮の鎧(レザーアーマー)を身に着けようが、それは変わらないらしい。


「戻るまで平気そうですか? あ、そうだメルゥ、氷魔法で自分の体を冷やしてみたら」


「……、見てくれリュイ君」


「?」


 手の平を何も無い空間に構えるメルゥは魔法を発動させる。


 放たれたのは随分と小さい氷の玉。

 勢いもなく地面に転がったそれは、ジュウゥという音と共に蒸発していった。



 




 という経緯があり、メルゥは自分を役立たずだと言って嘆いている。


「うううぅ~、ごめんよリュイ君。不甲斐ない私はただ飯喰らいだ」


「そ、そんな、謝らないで下さい。また『森』に潜ればいいじゃないですか」


「せっかくランクアップして『火山』に挑めるようになったのに? 大丈夫だよリュイ君、君は別の冒険家と組んで『火山』へ行くんだ。その方が良い」


「確かにそうですけど、いきなり別のパーティに急遽入れて貰うのは色々と支障が出ます。それに僕とメルゥはパートナーなんですから! いつも一緒ですよ! 」


「君の優しさが胸に染みるよ……」


 力なくテーブルに突っ伏し、おいおい涙を流すメルゥ。

 

 なんて声を掛けて良いか分からず、しばらく言葉を探していると、


「そうだ!」


 と、メルゥは声色を変えて顔を上げた。


「私はパートナーとして君の足枷にはなりたくない! せっかくランクアップしたんだから、リュイ君にはぜひ『火山』に挑んで貰いたいんだ!」


「は、はぁ」


「急遽パーティに入れて貰うのが難しいのなら、君にとびっきりの人材を紹介しよう。それもすっごく強くて、補助魔法を使える完璧な人材を!」


「え」


 言ったメルゥは『待ってて』と言い残し、勢い良くギルドから飛び出していった。


 



   

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