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第2話『勘弁してくれ、理事長さん』

 ふっ、勝ったな。

 転入試験なんて楽勝だったぜ。


 なんせ俺は東京騎士団の団員。これでも一応は公務員なのだ。

 そんな俺にこの世界の基礎知識を問うなど愚の骨頂! 俺に嫌がらせしたいなら模擬戦闘試験でガチムチホモでも連れてくるんだな! フハハハハッ!!

 ……嘘ですやめてください頼みますマジで。



 気を取り直して試験の復習と行こう。



 まず「物質界アガルタ」と「魔法界シャンバラ」の違いを説明せよという問題。

 こんなの俺たち東京騎士団の専門中の専門だ。


 「物質界アガルタ」はこの世界のこと。

 かつては魔法など無く、人々の科学力によって支えられていた世界。「現実世界」なんて呼ばれ方もされてたみたいだけど、今では「魔法界シャンバラ」も立派な現実世界なのでそう呼ぶ人は少ない。


 それに対し「魔法界シャンバラ」は通称「異世界」とも呼ばれる()()()の世界。

 こちらが科学によって発展したのに対して、魔法界シャンバラは魔法で発展してきた世界だ。

 人間や動物のほか、魔物や精霊といったものも生息している。俗に言うファンタジー世界ってやつだ。


 この2つが何やかんやあって境界が曖昧になり、「異界門ゲート」で繋がれるようになったのが120年前。

 異界門ゲート物質界アガルタ魔法界シャンバラを繋ぐ正規ルートだが、たまに空間を突き破って侵攻してくる奴もいる。それが魔物ってわけだ。




 次に「亜人」と「魔人」の違いを説明せよという問題。

 これはもっと簡単。常識問題の類だ。


 「亜人」とは魔法界シャンバラに存在する人種で、人間族以外を一括りにまとめたもの。

 獣人だったり、魚人だったり、蟲人だったり、鳥人だったり、その種類は様々。物質界アガルタの日本で、白人とか黒人を「外人」と一纏めにするようなものだ。


 「魔人」はちょっと事情が異なる。

 純正種である亜人と違い、魔人は元々は物質界アガルタの人間だ。

 それが異物である魔法界シャンバラの影響を受けて変貌したもの。簡単に言えば「モンスター混じりの人間」のことだ。

 先天性と後天性の2種類があるけど、俺は後者だ。しかもかなり稀少なやつ。



 ほかにも色々と出題されたけど、俺にとっては常識的な問題しか出なかった。

 ほかの教科の点数に関しては……お察しください。だってノブさんから「監視官は目立つな!」と釘を刺されてるし。全教科満点は流石に不自然だ。


 あ、ちなみに俺が監視官ってことは先生にも秘密だ。

 学園内で俺の正体を知ってるのは理事長のみ。

 ここの教師だって俺の監察対象だしね。




 で、その理事長さんと1対1で面会してるのが今の俺。



 学園の理事長室で、テーブルを挟んで向かい合って座っているのだが……あまり落ち着かない。

 壁にかかった数々の賞状や、やたら高そうな壁時計、座り心地の良すぎるソファが俺の場違い感を加速させているのだ。


「こうして会うのは初めてだね。ようこそ渋谷第三魔導学園へ」


 理事長さんは穏やかそうな人だった。

 文学青年をそのまま老人にした感じ。大人しい感じで切りそろえられた白髪に丸眼鏡をかけ、細かい装飾が施された杖をついている。


「私がこの学園の理事長、草間くさま倫太郎りんたろうだ。よろしく頼むよ、九頭龍君」


「こちらこそどうも。……これから色々と手間かけますんで、先に謝っときます。すんません」


「はは、構わないさ。それが生徒の危機を救うものならね」


 おっふ、釘刺されちまったぜ。

 この人、俺が前に監察官やった時にやらかしたの知ってるんだろうなー。そりゃ不審にも思うか。


「君の話は聞いているよ。あれは災難だったね」


「あ、やっぱ知ってるんスね……ぶっちゃけ不安しか無いっスよね?」


「いや、むしろ私は君を高く評価しているよ。あの状況であの程度の被害に抑えられた君の手腕を、私は信用しよう」


 おお、なんかえらく高く評価されてんな。それはそれで緊張するわ。


「そうだ、君にこれを」


 俺が居心地悪くしていると、理事長はメモリーカードを1つ手渡してきた。

 俺はそれを小型の携帯端末に差し込み、目の前の空間にホログラムのようにウインドウを浮かばせる。

 メモリーカードの内容は、この学園の全生徒の詳細なプロフィールだった。


 本人の基本的なプロフィールから、種族、家族構成、特技、魔法適性、交友関係……洗いざらい全部だ。

 ちなみにスリーサイズは無かった。畜生……ッ!!

 

「監察官には必要だろう。本人の許可は取っていないが、致し方ない。ぜひ活用してくれたまえ」


「ありがとうございます。 あ、俺のクラスはどれになるんスかね?」


「2-Aだよ。あそこは個性の強い面白い生徒が揃っているから、君も退屈しないだろう」


 そう言われて、2-Aの生徒を確認する。

 俺が今後最も関わりが深くなるであろうメンバーだ。

 しっかり読み込んでおかなくては……ってうわぁクセが強いな!

 監察官としてクラスでは空気に徹するつもりだったけど、コレはちゃんと手綱握らないとエラいことになるぞ……!


「ガ、ガンバリマス……」


「期待しているよ、九頭龍君」


 その後、色々な手続きやら打ち合わせをしてから、理事長との顔合わせが終わった。


 どうしよう、すげえ気が重い。

 というか責任が重い。

 ついでに荷も重い。


 JKハーレム形成する前に何回死ぬかな、俺。

 まぁ、JKに殺されるならちょっとぐらいいいかな……。



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