プロローグ『ウワサの転入生』
どうも、こんにちは。
新聞部の安浦葉由流と申します。
突然ですが大ニュースです!
この度、私の所属する渋谷第三魔導学園2-Aに転入生がやって来るとの情報をキャッチしました!
え、転入生ごときで大ニュースなんて大袈裟って?
ええそうです。私だってタダの転入生なら見向きもしませんとも。
大した記事のネタにもなりませんからね。
しかし今回の転入生は何やらワケありの模様!
なんでも、前の学校で何か「やらかした」ことで転校せざるを得なくなってしまったとか。
このカオス極まりない異界都市・東京で転校沙汰とは、とんでもない不良に違いありません!
関わるとロクなことにならなさそうですが、それでも首を突っ込むのが記者の卵である私の仕事!
皆さんの安心と安全のため……もとい私個人のためにも取材しまくりますとも!
本当に危なくなったら全力で逃げますがね。
ウサギの獣人である私の逃げ足にかなうはずないので。
「えー……6月中旬という中途半端な時期だが、このクラスに新しい仲間が加わることになった」
ホームルームにて担任の先生がお決まりの文句。
先生が廊下の方を向いて「入りなさい」と言うと、ウワサの転入生さんが教室に入ってきました。
「やー、みなさんオハヨーっス! 今日からこのクラスに仲間入りすることになりました、九頭龍巳禄です! よろしくー!」
何やら騒がしいというか、ノリがいいというか、馴れ馴れしい感じの人です。
青黒いツンツンヘアーに、蛇を思わせる三白眼。瞳は金色。若干チャラく見えなくもないですね。
そんなにヤバイ男の人には見えないですが、いったい前の学校で何やらかしたんでしょうか。
「5月14日生まれのおうし座……あ、今日の星占い1位っス! みんなに出会えた奇跡がラッキーみたいな? 好きな女の子のタイプは大和撫子! 奥ゆかしい女の子に支えられてえっス! あ、そんで趣味なんスけど――」
お、おお……質問されてすらないのにペラペラ自己紹介し始めましたよ、この人。
あまりの勢いにクラスメイト皆ポカーンです。先生もポカーンです。
でもこの人結構面白いのでは? 少なくともイメージしてたような恐い人ではなさそうですし、これならすぐに仲良く……
「あ、そういや俺、拳で語り合うのとか憧れてたんスよ! 気に入らなかったらカチコミかけてくれてオッケーっス! 喜んでバトるんで! っつーわけでこれからヨロシクお願いしまーす!!」
前言撤回。
戦闘マニアとヨロシクしたくありません。
この時、私たちは知りませんでした。
九頭龍くんがこのクラスの、この学園の、この世界の――そして、この私たちの英雄になるなんて。