ぱぱぱ、パンケーキ!
がんばっちゃったよーん!
パカッ
シャカシャカシャカ
てろー
ジュワアアアアアアアアア
大きなキッチンに耳に心地よい音と小麦粉と卵の甘いにおいが広がる。
「のう、ユキは何を作っているのじゃ?」
「ふふふ、その名もパンケーキ!とってもおいしいんだよ!」
「パンケーキとな。ふーむ・・・このわらわでも聞いたことのない菓子名じゃのう」
「これはボクの故郷で最も作りやすい、かつおいしいおやつに分類されるんだ!」
「ほう!」
「もうちょっとだよー風穴極弱!!」
ここにはベイキングパウダーはないからね。自分で空気を送ればいい話。あっという間にふかふかのパンケーキの完成さ!
「最後にメープリルシロップをかけて・・・と」
「わあああああ!!すごいのじゃ!!!」
「お、お、お、お、お、俺にも一口!!!!」
「ダイラ、待てだよ?ステイ!!」
「ぼくもたべるー!!」
「キュー!!」
「二人も待ってな。大広間でちゃんと食えるからなー」
そしてフードの下がピコピコ動いて目がキラキラを通り越してギラギラしてる人1人と囀ったり吠えたりしているのが2匹と涎を垂らしている王女1人とマスクにエプロン、三角巾を身に着けた朗らかな少年一人。
皆で大広間へ向かう。
「なんかボク、この格好気に入ったかも!」
「なんかおかあさんって感じだね!」
「きゅー!」
「ねえーかーちゃんー俺、早く食いてーよ!」
「わらわもー!」
「はいはい待っててよーもうすぐだからねー」
そして時刻は3時を回る。王や、そこらの大貴族たちが各席に着く。
「いったいなんじゃ?これ」
「これは我が故郷のスウィーツ、パンケーキでございます」
「ほう・・・聞いたことがないのう。どれ・・・一口・・・」
その瞬間王の動きが止まった。よく見ればダイラ達もだ。あれ?ここの人たちのお口には合わなかったのかな?まあ、いいか。(ウィングはすんごい勢いでがっついている。)
王の持っているフォークが落ちた。大広間に鉄とタイルがぶつかる無機質な音が響く。
「う・・・」
あるえー?毒薬はいれてないんだけどなあ?
「う、うまいぞおおおおお!!!!」
その瞬間せきを切ったように大広間中から歓声が上がる。あれ?そこまで上出来にできたとも思わなかったんだけど?みんなの目線がちょっと怖い。
ウィングとダイラと王女のがっつきがすごい。あっという間に皿が積み上がっていく。開始10分現時点、ダイラ9皿、王女15皿、ウィング33皿。あれ?ウィング?
一方スカイは水のブレスを吐いてます。あーあ、王宮の天井をぶちぬいちゃった。
王族たちはコーラスを歌いだしたよ。あれー?詩っぽい何か作ってる人もいるね。
「大魔術師、ユキに拝礼を!!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「うをおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「にぎやかだなー」
ちなみにボクはスイーツソムリエの資格持ってるからね。おやつだったら対外何でも作れるよ
そんなこんなで王宮遊びの日は終わったのでした。
ちなみに帰りにジョンナが泣きわめいてたけどドーナツあげたら泣き止んだよ。
さてさてやっとなつかしき我が家にやってきました!!!わーい!!!ダイラ君がべろ出してあおむけで寝転がってます。翼ができた分邪魔だなー
ウィングとスカイは唯一あるテーブルの上で爆睡。二人並んで可愛いな。
そしてボクはベッドを作ることにするよ。大きさは、サンタん家のベッドぐらいでぇ、もっふもふのふっかふかにしちゃおう!オー聞くして皆で寝れるようにして・・・よし!
だけどみんな眠っちゃってるから今日はやめようかな?
ダイラの下にはカーペット、ウィングたちに下にはクッションを置いて・・・ボクはこのベッドで寝ようかな。風魔法が中で常に作動していてふっかふかなのだ。
・・・今日はいろんなことがあったな。いろいろあって向こうに1か月泊まることになったし。それにしてももうこの世界に来て13年かあ・・・早いもんだね。ボクはちょっと狂ってる。そんなことはもうとっくに自覚してたさ。9歳でハーバードな時点でもうすでに狂ってたし、あの世界に未練が昭雄君以外なかったたし。
昭雄君は元気にしてるかな。今ボクが眠ったら全部夢オチだった、とかやめてほしいな。ホント。
そういえば勇者たちはどうなっちゃったんだろ?ちょっと不憫だね。今度何か持って行ってやるか。
魔族がいなくなったこの世界は、一時的に平和だ。一時的、というのは魔族のいなくなった今、今度は人間たちの心同士がぶつかり戦争になるだろう。
人間っていうのはいつだって戦ってないと気が済まないのだろうか。元の世界だっていまだにどこかでは戦争があったし、友好的に接しようとしている国でテロが起きたり。
この世界の人間の争いごとにボクはあんまり介入してはならない。それをしては、ボクに力を認めてもらおうだの、力だほしいだの、逆に殺そうというものも出てくるかもしれない。
べつに殺そうとしに来てもボクは叩き潰せば済む話だけど、そうするとその国のリーダーたちに付き合わされている兵士たちがあまりに不憫だ。
白き少年は、その透き通るようなマリンブルーの目を月に向けた。その表情は”憂い”そのものだった。
「ボクは何のためにこの世界に生まれてきたのだろう」
その小さな小さな声は、誰にも届くことはなかった。




