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エンドレス・キャンパス  作者: 木眞井啓明
第二部 役  第三章 集
44/65

登場人物)

 岩間いわま 聖美さとみ

  西暦2108年08月13日生まれ/専課学校、基底学部物理科5年生

  性格は、子供っぽい所もあるが、二〇歳に何とか相応しい女性だが、楓に似た所もあり、類は友を呼ぶを表した友人の一人。


 山田やまだ 明子あきこ

  西暦2108年06月21日生まれ/専課学校、基底学部化学科5年生

  性格は、長女であるだけにしっかり者で世話好き。だが、おっとりしているわけではない。その辺は弟を持つが故なのかも知れない。


 井之上いのうえ 美也みや

  西暦2110年09月10日生まれ/専課学校、基底学部物理科3年生

  几帳面でしっかり者と言う性格が良く表れた、はっきりした物言いする。それでいて、自然にぼけてしまうところがあるという、堅物とは言い難い所もあり、どちらかと言えば、聖美や楓に近い性格であるのかもしれない。


 石本いしもと 正人まさと

  西暦2108年09月16日生まれ/専課学校、基底学部化学科5年生

  何事にも動じないとみられがちであるが、その実、殆どの出来事に関心を示さない。一人であることを望んでいる節もある。


舞台)

 関甲越かんこうえつエリア

  関東甲信越を短縮したエリアの名称。東西は千葉・神奈川から新潟、南北は群馬・栃木から長野・静岡の一部まであるエリア。


組織・家など)

 ATSUBB専課学校あつびーびーせんかがっこう

  場所は、関甲越エリア、神奈川、厚木にある。基底学部として、化学、物理、自然の学科を持つ専課学校。

 聖美が一〇一ラボの外周階段で怪我をして二日。お昼にはもう一時間ほどはあろうかという頃……。

「あ、よっこいしょ。ふぅ~」

「あぁ。それじゃぁ、若者とは言えませんよ」

「いいじゃん。そう言いたい状態なんだからさぁ」

「はいはい」

 左足を気にしているのであろう事が、聖美の疲れた表情からも窺い知れる。方や美也の受け答えが少々素っ気なくも、はたまたあしらっているように聞こえるのは、聖美にあまり深刻に受け止められないようにとの気遣いであろう。

「あ、先輩。これ、怪我した日の実験結果だそうです」

「うっ。それ言わないでよぉ」

「あっ、ごめんなさい。別にそう言う意味で言ったんじゃないんですよ」

 せっかく持ってきたのに、と言いたげな様子がその表情から伺え、嫌みのつもりもないのであろう。そうは言っても聖美にしてみれば、自分でしたことではあっても怪我をしてから日が浅いため気が重くなるようである。

 ここ二日で、美也にお願い事が増えた聖美である。怪我をしたことも手伝って、美也が積極的に聖美をフォローしているためでもある。

「美也。ごめん」

「……突然なんですか? どうしました」

「そんなに驚かなくてもいいじゃん」

「あっ、すいません。突然だったからちょっと……」

「う~。……もういい」

 照れ隠しか、そっぽを向いて自分の作業に戻る聖美は、うつむき加減である。

「……あっ」

「何ですか?」

「……何でもない。よっこいしょと」

「ちょっと先輩? 何処行くんですか」

 声を掛けようとしたのか、途中で止めてしまった聖美は、机に両手をついて徐に立ち上がった。気が付いた美也が問いただすが……。

「……ちょっとね」

「……む。先輩、資料とかいるものがあれば私が取ってきますから、言って下さいよ」

「え~と、大丈夫」

 と言いながらゆっくりと左足を庇いながら歩いて行こうとする聖美に……。

「先輩……」

「ん?」

「……そんなに。いいえ。確かに、私は頼りないかもしれませんが、今の先輩の状態ではもっと使ってもいいと思います」

「……いや……でも。……あ~。分かった分かった」

 濁して終わりにしようとした聖美だが、美也の今にも泣きそうな顔を見て、諸手を挙げて降参したようである。


     *


「やったぁ~。お昼だぁ~」

「元気でましたね、先輩」

「意地悪だよ、美也はぁ。あははは」

「えへへへ。大丈夫です。私もですから」

「あによぉ」

 等などと、調査から一時的に解放された二人は、満面の笑みで食堂へと向かっていた。

「あら。ぼこぼこコンビだわ。石本君、一緒にどう?」

「いや、今日も遠慮しておく」

「そう。それじゃまた後で」

 こちらはこちらで、あくまでさっぱりしていると言って良いのか。正人は未だに明子達と昼食を共にしていない。女性とは問題があるのか、そもそも一人が好きなのか。果たしてどちらなのであろうか。

「あ。明子、さっきの聞こえたよ」

「何がかしらねぇ」

「あのねぇ。ぼこぼこコンビってあに」

「“でこぼこコンビ”なら聞いたことがあったような気がしますが……」

 聞き捨てならないと言いたげな聖美に、美也が正当な突っ込みを入れている三人は、聖美に合わせてゆっくりと食堂へと入っていった。

 ちょうどニュースが流れており三人の耳に届いた。

「……繰り返しお伝えします。本日、西暦二一二八年九月一〇日、一〇時頃、日本におきまして学生の行方不明事件が発生しております。詳細は確認中との事ですが、芸術科の学生が数人消えたとの情報が入っております。詳細は分かり次第お伝えします。

 続きまして……」

 何度かこのニュースが流れていたようで、既に食堂にいた学生達からは、驚きの声は上がってこなかった。一方、今やってきた聖美達は……。

「ふえ~。またあったんだ」

「いやですよ、ホント。対象にはなりたく……」

「美也ちゃん」

「……あっ、ごめんなさい。また……」

 ぼそりと小声で美也に注意する明子だが……。

「……うん。大丈夫。美也、気にしてないよぉ~」

 思い出したのであろう、だが聖美は美也を気遣って、うつむき加減にはなったものの元気な声で応えている。

「もう、駄目じゃない美也ちゃん」

「すいません……」

「明子。まぁ悲しくないなんて言わないけど、それもで明子と美也がいる。だから大丈夫。で、席取っておくからAランチよろしく」

 そう言い残して、聖美はそそくさと空いてる席を探しに向かった。

「大丈夫でしょうか?」

「ま、本人がそう言ってるんだし、大丈夫でしょ。さ、美也ちゃん。ご所望のAランチ買いに行くわよ」

「そ、そうですね。私は何にしようかな」

 落ち込み掛けた美也を元気づけた明子は、揃って昼食を買いにカウンターへと向かった。

「え~と。岩間先輩はAランチ……? あっ、山田先輩。代金どうしましょう」

「あら、忘れていたわね。ちょっと待っててね」

 美也が後ろにいる明子に、振り返って困った表情で問い掛ける。受けた明子は、うっかりしていたかのような受け答えをし、美也を残して列を離れていった。

 しばらくして、やや息を弾ませて戻ってきた明子が……。

「美也ちゃん……お待たせ。聖美の分は……私が代行するから自分の分だけ買っていいわよ」

「はい。すん……ありがとうございます」

 美也の状態に、明子が列の後ろに並ぶ学生に視線を向けると、首で手で何もしていない事を意思表示する。この状況下において、誰もが辛い事を理解しているからこその気遣いでもあるのであろうが、どうやら、それが逆に針のむしろ状態であったようで、半ば涙声になっている美也である。


 無事に昼食にありつけた聖美は特に落ち込んでいる様子を見せず、現状の調査状態やいつまで外出禁止令が続くのかなどを話しながら昼食を平らげていった。

「あ~、食った食った」

「聖美ぃ。その言葉遣いは良くないわよ」

「え~、いいじゃん」

「ふふふ。岩間先輩らしいですけどね」

「あによそれ」

 ピンポーン。

「ふ?」

「あら、何かしらね」

「他の学校で、何か進展でもあったんでしょうか?」

 ピンポーン。

「あにやってんの」

「お昼時ですが、緊急の連絡があります。既にニュースを聞いた方もおられると思いますが、本日一〇時頃学生の行方不明が発生しております」

「あ、さっきニュースで言ってたやつだ」

「しっ!」

「大まかな概要が学生連絡会経由で入りましたので、先行してお知らせします。我が国で行方不明になった学生は一〇人から二〇人との情報です」

「に、二〇人?」

 素っ頓狂な声を上げたのは言うまでもなく聖美である。と同時に、この放送に誰もが耳を疑ったようで食堂内にざわめきが起きた。

「今の内容に驚かれていると思いますが、お静かにお願いします」

 この言葉の後に続いたのは無音だった。動揺が静まるのを待ってでもいるかのようで、後の発表は、更に重要であると言う事なのであろう。

「……今回の行方不明は、日本だけにとどまらず世界各国で同様に発生している模様で、同時発生と言って差し支えないようです。今のところ分かっている専攻は芸術科で、他の科は含まれていないようです。ですが、当校におきましてもこれから校内にいる筈の学生を確認しますので、ご協力をお願いします。詳細は追ってメールでご案内します」

 放送が終わるや再びざわめきだつ食堂内。いや、学校中の至る所で騒然となっている事であろう。中には、恐怖に怯える者もいるであろう。

「……え~と。で、どうする?」

「どうするって言ってもねぇ」

「そうですね」

 三人は割合と落ち着いているように見えるが、明子の言うとおりで、一学生がどうにか出来る範囲を超えているのは確かである。

「おぉ、山田さん。どうする?」

「あのね。どうも出来ないわよ」

「そ、そうか」

 明子に声を掛けてきた同級の男子学生は、半ばパニックになっているようである。一方明子は、何も出来ない事を告げているが、果たして男子学生に何処まで伝わったのか。

「む~」

「聖美。唸って考えたところで既に起こった事よ。何をするって言うのよ」

「おぉ。流石明子」

「そう言えば、そうですね」

「……ニュースをお伝えします」

 食堂内がざわめいている事で最初の部分がかき消えてしまったが、食堂のスタッフが映像に気が付いて音量を上げたようである。

「臨時ニュースをお伝えします」

 食堂内のざわめきをかき消す音量でニュースが流れていた。

「うわっ。五月蠅い」

「本日の学生行方不明ですが、新たな情報が入り、緊急を要すると判断しましたのでお伝えします。

 既にお伝えしております通りに日本で発生しております。ですが、その後の情報によると世界各国で同時に発生している事が分かりました。また、人数は国によってばらつきはありますが、およそ五人から二五人ほどではないかとの事です。このことから、世界各国の人数を合算しますと少なくとも一〇〇人は今回の行方不明にあった公算が高いという事です。

 続きまして、各国の防止体制についてですが、殆どの国で対象となる学生の外出禁止ないしは同等の措置が執られていた模様です……」

 大音量でニュースが流れる中、誰一人として言葉を発せられる者が食堂にはいなかった。世界中の至る所で同時に一〇〇人もの若者が行方不明となった事態である。どのような言葉にすれば良いのか分からないのかもしれない。

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