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エンドレス・キャンパス  作者: 木眞井啓明
第二部 役  第三章 集
43/65

登場人物)

 岩間いわま 聖美さとみ

  西暦2108年08月13日生まれ/専課学校、基底学部物理科5年生

  性格は、子供っぽい所もあるが、二〇歳に何とか相応しい女性だが、楓に似た所もあり、類は友を呼ぶを表した友人の一人。


 井之上いのうえ 美也みや

  西暦2110年09月10日生まれ/専課学校、基底学部物理科3年生

  几帳面でしっかり者と言う性格が良く表れた、はっきりした物言いする。それでいて、自然にぼけてしまうところがあるという、堅物とは言い難い所もあり、どちらかと言えば、聖美や楓に近い性格であるのかもしれない。


 岸田きしだ 博実ひろみ

  西暦2108年09月21日生まれ/専課学校、基底学部物理科5年生

  山岳地域で育ったせいか、大ざっぱな面が多々ある。その所為か喋り方がぶっきらぼうなところがある。それでいて知的な部分を見せる事も覆い。


 山田やまだ 明子あきこ

  西暦2108年06月21日生まれ/専課学校、基底学部化学科5年生

  性格は、長女であるだけにしっかり者で世話好き。だが、おっとりしているわけではない。その辺は弟を持つが故なのかも知れない。


舞台)

 関甲越かんこうえつエリア

  関東甲信越を短縮したエリアの名称。東西は千葉・神奈川から新潟、南北は群馬・栃木から長野・静岡の一部まであるエリア。


組織・家など)

 ATSUBB専課学校あつびーびーせんかがっこう

  場所は、関甲越エリア、神奈川、厚木にある。基底学部として、化学、物理、自然の学科を持つ専課学校。

「う~。えっとぉ」

──美也と連携。美也と連携。

「はい」

──美也と、何を連携?

「あ~。何やりたい?」

 悩んだ挙げ句、とんちんかんな事を言い出してしまう始末である。それを聞いた美也は、困り果てながら……。

「はい? あのぉ、岩間先輩?」

 困り果てている美也を余所に、上級生としては減点間違いなしの言葉を口にした聖美である。

 聖美の表情は、眉間に皺を寄せてかなり険しくなっている。更には、冷や汗なのか知恵熱の所為なのか定かではないが、顔の汗は半ば滝のようである。

 明子に指摘された事で、何とか美也と連携をしようと奮闘を始めて二日目。未だ上手くいっていないのが伺える。本人曰く“引っ張るタイプではない”とのことで、先が思いやられそうである。

「ぬぬぬ。だぁ~! 無理!」

「ひっ! い、岩間先輩。大声出さないで下さいよぉ」

「あんでよ」

「え~と。周りの事も考えて下さい」

「だってぇ」

「だってじゃありませんよ」

 子供のように半ば膨れて投げ出そうとする聖美、少々困った表情で抑えようとしている美也。攻守逆転した様相を呈してはいるものの、暗く沈みがちな調査にあっては微笑ましい光景である。

「はははは。岩間君、それではどっちが先輩なのかわらないよ」

「ぶ~」

 やや離れた場所にいた上級生から、ちくりとしたお小言が飛んできたのだが、それを聖美は頬を膨らませて応えてしまっている。その光景に、軽い笑い声が広がるのだが、聖美の傍らの美也は顔を伏せ縮こまってしまう有様である。

「もう、それ止めて下さい。恥ずかしいじゃないですか」

「う?」

「あぁ~」

「え~、だってぇ」

「あぁ、またぁ。……そろそろ一〇一にいきますよ」

「えっ? まだ早いんじゃ……。おぉ。美也、引っ張らないでよぉ」

 あまりの恥ずかしさに居心地が悪くなったのであろう美也は、一人ではなく聖美を引き連れてラボを出て行ってしまった。引っ張られている聖美は、いつものことと感じているのであろう、どちらかと言えば美也に引っ張られていることに困惑しているようではあるのだが……。

──む~。美也はどうしたんだろうか? ……そう言えば、恥ずかしいって言ってたような……。なんで?

 一〇一ラボへ向かう中、引っ張られるに任せたまま、上の空で考え事をしている聖美である。

 一〇一ラボの扉が閉じていたため、ブザーを鳴らした美也は扉を開け、聖美を引っ張って中へと入っていった。

「入ります」

「おや? まだ早いよ。どうした?」

「あっ、岸田先輩。い、いえ」

 美也と聖美の入室に気が付いた制御室傍にいた学生に声を掛けられたのだが、歯切れの悪い回答しか出来ない美也がいた。

「ふふふ。何? 手を繋いで入室なんて。……あっ。聖美、また何かやらかした? しょうがないなぁ」

 “岸田”と美也が呼んだ人物。岸田博実。一九歳(もうまもなく二〇歳である)。聖美や薫とは同級であるが、薫とは会話の機会が殆どなく顔見知り程度である。

 ボーイッシュな長さの黒髪で耳を出している。そして、やや釣り目気味で細い部類の目と、やや細面な顔立ちである。加えて、顔に劣らず体の線も細くきゃしゃと言えるが、聖美より高い一七五㎝ほどの背丈がある。それでもそれなりの女性体型はしている。

 顔つきから来る知的な印象とは裏腹に、ややぶっきらぼうな喋り方であるが、美也への接し方からも後輩には優しいようである。

「いえ、そう言う……」

「言わなくても良い。大体想像が付くし」

「はぁ」

「で、いつまでお手々繋いでいるつもり?」

「え、あ……」

 そそくさと握っていた聖美の手を離す美也は顔が赤くなっていた。その一方で、引き連れられてきた聖美は……。

──……むむむむ。何が問題?

 手を離されたことにも気が付かず、美也が言った“恥ずかしい”に悩み続ける聖美であった。

「聖美?」

「岩間、先輩?」

「あ、駄目だわ。何か難しいことでも聖美に言った?」

「え? いえ。そんなことはない筈ですが……」

 美也が困り果てているその間も、聖美は悩み続けているようで、とうとう腕組みをしてしまうほどであった。仕舞いには辺りをウロウロし始める始末である。

「早く来たついでと言っちゃ何だけどこっち手伝って。聖美も、って。……ちょっと何処行ったの」

「今までそこにいた筈ですが……。もう、岩間先輩! 何処ですか」

 一瞬目を離した隙に何処かへ行ってしまう聖美。正に子供のようである。いや、今回は美也とのやり取りに悩んでいたせいもあるのであろう。ウロウロしていたはずが、いつの間にか……。

「ちょっと、聖美、何処登ってるの!」

 いち早く見つけたのは博実である。

 見つけた場所は、何と一〇一ラボの壁面をぐるりと回っている階段であった。しかし、手すりも付いており危ないと言うことはない。ないが、下層は五メートル単位に踊り場が設けられており、実験で使われる柵は開閉可能である。

 考え事をしているためであろうか、博実の声が聞こえていないようで、最初の踊り場まで登り切っていた。そのまま踵を返しており始めた。だが……。

「聖美! 危ない!」

「先輩!」

「は? ……あっ」

 二人の怒鳴り声に聖美が二人の方を向いて、“何よ”という表情をしたのだが、次の瞬間には聖美の意識は途絶えていた。


     *


「うっ。う~。……ふ? ど……こ……」

 シャッとカーテンの滑る音が聞こえたものの、まだ状況把握が出来ていないようである。

「目が覚めたのね、聖美。良かったわぁ」

「先輩。大丈夫ですか?」

「大丈夫だと言ったろう」

「でも」

「脳には異常はない。軽い脳震盪だ。ま、数時間は安静にして貰うが」

「……ここは……。医療室?」

 何が起こったのか未だに理解できていないようで、ぽかんとしたままの聖美がいた。おぼろげに分かってきたのは、ここが医療室であろうと言うことと、何かをしてしまったと言うことである。

「そうよ」

「あんで……こんなとこに……」

「盛大にではないが、一〇一ラボの外周階段から落ちたそうだ」

「へ?」

「本当ですよ」

「美也。担いでも駄目だよぉ。あんであたしが外周階段に?」

「あぁ。やっぱり覚えてないんですね」

「あにが」

 聖美の会話が次第にいつも通りに戻りつつあるのが、ふくれっ面で応えていることからも分かる。

「何処までなら覚えてるの?」

「えっとぉ。一〇二ラボから美也に手引っ張られて一〇一ラボに入って、美也が何に恥ずかしかったのか考えてて、で? どうしたんだっけ?」

「え~。私と岸田先輩が大声出したとき、こっち見たじゃないですか。それ、覚えてないんですか?」

「うん」

「即答ね。完全に心ここにあらずだった訳ね」

「え~。あによそれ」

 聖美は腕組みをして、いつになく真顔になって思い出そうとしたのだが、結局肝心な部分は抜け落ちてていたようである。美也は、落胆ぶりが分かるほどに肩を落としていた。

「それはそうとな。考え事をしているときに、階段はいかんな、階段は」

「そんなこと言われたって……」

「そうね。注意力散漫ね。……まぁでも良く階段上れたわよねぇ」

「山田先輩。そこは感心しないで下さい」

「そうだったわね。ごめんねぇ」

「そうだ。付き添いの方達には話して置いたが、岩間君にも診断結果を話しておこうか」

 明子に美也と、それに医者の小言合戦になってしまい、肝心の怪我の程度を聞いていないことに気が付いた聖美は、ふてくされかけていた表情が一転して真顔となってゴクリとつばを飲み込んだ。

「左足首の軽い捻挫だ」

「はぁ? 骨折とかは?」

「スキャンもしたが異常なしだ。捻ったりしなければいたくないだろう」

「確かに、今は……」

 ぼそりと呟いた聖美は足首を少し捻ってみたところ、痛みに「ひっ!」っと声を上げた。

「ふむ、そう言うことだ。普通には何とか歩けるだろう。だが、くれぐれも走るなよ」

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