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エンドレス・キャンパス  作者: 木眞井啓明
第一部 息吹  第八章 圧力
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登場人物)

 森里もりさと 利樹としき

  西暦2101年09月25日生まれ/国土省環境局

  森里家一族の中で、一二を争う穏やかで、優しい心を持っている。

  他人を思いやり、自然が大好きな男である。


 神本かみもと 里子さとこ

  西暦2109年06月20日生まれ/専課学校、社会法律学部社会科4年生

  神本家一族の中でも、きっての穏やかな性格。

  他人を慈しむことに秀でており、里子の傍にいるだけで、穏やかな気持ちになれる程。


組織・家など)

 森里家

  二階建ての住宅と思われる。尚、屋内のみ登場するため詳細は不明。

「誰もいません、か。……あっ。そう言えば、買い物に行くと言っていましたね。……それにしても、家の両親だけなのでしょうかね。未だに夫婦揃って買い物なんて、仲がよろしい事ですけれどね」

 居間のドアを開けながらそう呟く人物がいた。

 日曜日の昼下がりである。そうは言っても、両親の外出にも気がつかないとは、なんと暢気な御仁であろうか。

 “ピンポーン”とチャイムが鳴り、その人物が玄関のドアを開けると、「利樹兄ちゃん。用事は終わった?」と、開口一番に聞く内容がこれである。それほど親密と言えるのかもしれない。

 唐突に、質問された利樹は、「里子ちゃん……。いらっしゃい」と里子がおざなりにした挨拶を返した後……。

「……はい。終わりましたよ」

「それじゃぁ。おじゃましま~す」

 確認もそこそこどころではないにも関わらず、さっさと上がり込んでしまう里子であった。勝手知ったる他人の家、と言ったところであろうか。

「里子ちゃん、まだ良いとは言っていませんよ」

「そう硬いことは言わないでよ、知らない仲じゃないんだし」

「あのですねぇ。……はぁ。仕方ないですねぇ」

 呆れ返るしかない利樹であったが、表情からは怒っているそれではなく、困っていると言ったところのようである。

「利樹兄ちゃん、お昼食べた?」

「いいえ、まだですよ」

「じゃぁ、何か作ろうか? 私もまだだし」

 そう言いながらキッチンに入り物色を始める里子は、冷蔵庫まで開ける始末であるが開けたまま止まってしまったようである。

「里子ちゃん、冷蔵庫を開けたままはいけませんよ」

「う~ん。これは……」

「どうかしましたか?」

「うん、お昼の準備完了してる」

「ん? あぁ~。なるほど」

 合点のいった利樹であったが、里子が一向に動かないことから、「どうしました? 出して下さい、食べますからね」と、そう告げる利樹が見ている傍で、次第に里子の表情が緩んでいくのを目の当たりにしたのである。

「二人分あるよ」

「はい?」

――……あっ。里子ちゃんの来襲を予想していたんですね……。自分の母親とはいえ、洞察力というか何というか……。なるほど、いつものことと言えばそれまでですか。

 思いに耽る利樹であったが、目の前にいる里子は、微笑んで冷蔵庫からお昼を取り出していたのである。そして、食卓に準備を済ませて席に着く二人であった。

「いただきます」

「いっただっきま~す」

 少々遅めの昼ご飯を食べ始める二人は、傍から見れば、仲の良い兄妹と言ったところであろうか。ま、それも、利樹の母の昼食を、おいしそうに頬張る里子がそう見せていると言っても過言ではないであろう。

「利樹兄ちゃん」

「何ですか」

「用事って、え~、今だと……。思い出した! で、どうだったの?」

「そうですね……。結論は出ましたよ、今後どうするかについて。……とは言っても、上からの圧力もありますけれどね」

「そっか……。私も参加できたら良かったな……」

 箸を止め、いつものらしさが消える里子に、利樹は何も言えないでいた。だが、それもほんの少しの間だけであり、箸を動かしていつもの表情に戻って「……ま、こればっかりは、先に生まれた者勝ちって言うのもあるしね。で、今回みたいな事って前にもあったのかなぁ?」と、あっけらかんとした物言いで切り替える里子であった。

「そうですねぇ……。……過去にも、あったらしいとは聞いたことはありますね」

「ふ~ん。その時はどうしたのかなぁ」

「どうでしょうね……。ですが、余り、接点は残しておきたくはないですよ。いろいろ、ありますからね」

 少々重い雰囲気を醸し出す会話となったのだが、里子が納得したのかしていないのか「そっか。難しいね」と言って終わらせることにしたようである。

「えぇ」

 軽く相づちを打った利樹も、この話題を続けるつもりはないようである。

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