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エンドレス・キャンパス  作者: 木眞井啓明
第一部 息吹  第七章 混乱
23/65

登場人物)

 岩間いわま 聖美さとみ

  西暦2108年08月13日生まれ/専課学校、基底学部物理科5年生

  性格は、子供っぽい所もあるが、二〇歳に何とか相応しい女性だが、楓に似た所もあり、類は友を呼ぶを表した友人の一人。


 山田やまだ 明子あきこ

  西暦2108年06月21日生まれ/専課学校、基底学部化学科5年生

  性格は、長女であるだけにしっかり者で世話好き。だが、おっとりしているわけではない。その辺は弟を持つが故なのかも知れない。


 井之上いのうえ 美也みや

  西暦2110年09月10日生まれ/専課学校、基底学部物理科3年生

  几帳面でしっかり者と言う性格が良く表れた、はっきりした物言いする。それでいて、自然にぼけてしまうところがあるという、堅物とは言い難い所もあり、どちらかと言えば、聖美や楓に近い性格であるのかもしれない。


 藤本ふじもと かえで

  西暦2108年12月25日生まれ/専課学校、基底学部化学科5年生

  性格は、子供そのものと言える性格である。しかし、それは、喜怒哀楽全てを表現するためであり、20歳として知識・知能が低い訳ではない。


 本藤ほんどう かおり

  西暦2108年12月25日生まれ/専課学校、基底学部物理科5年生

  性格は、母親のように優しく、時には厳しく、しかし、本質としては優しさを多分に持ち合わせている。


舞台)

 関甲越かんこうえつエリア

  関東甲信越を短縮したエリアの名称。東西は千葉・神奈川から新潟、南北は群馬・栃木から長野・静岡の一部まであるエリア。

 厚木あつぎBB

  神奈川県西部、厚木を中心とした企業地区。

  楓達が通う学校も含まれ、関甲越エリアにある企業ブロックの一つ。


組織・家など)

 ATSUBB専課学校あつびーびーせんかがっこう

  場所は、関甲越エリア、神奈川、厚木にある。基底学部として、化学、物理、自然の学科を持つ専課学校。


 地連

  西暦2100年に設立された国際連合に変わる組織で、地球連合の略。

  国の代表という位置付けから、地球国家への脱皮途上の組織である。


 ARCCアーク

  100年ほど前に設立されたアジア圏の警察部門。

  Asia Range Criminal Consultant(アジア圏捜査顧問)と呼ばれる警察部門の略名。

  現在では、規模が縮小され1~5までと、特殊部隊が残るのみである。


メカニカル)

 巨大な物体

  突如地球上空に出現した物体。

  出現の理由はおろか、地球に対して何の影響も与えていない訳すらわからない。

「臨時ニュースをお伝えします」

「ん?」

「世界各国で発生しております事態に対し、日本国内の学校で対応が発表されました。

……まずは基課学校についてですが、全ての学校でお休みとなる休校と発表されました。続きまして専課学校についてです。始めに、学校がお休みとなる休校の学部です。……芸術学部、社会法律学部、文学部……」

 キャスターは冷静に、そして淡々とニュースの内容を読み進めている。

 基課学校が簡素な内容となっているのには理由がある。旧来の区分けで言えば小学校と中学校に当たるため、学部などの考え方がないためである。一方、専課学校はと言えば、基礎となる学部を除くと社会のニーズに合わせた改変や新設などを繰り返してきていることから、多岐に亘っている関係での伝え方となっている訳である。

「……続きまして、講義のみお休みとなる休講の学部です。応用産業学部、基底学部……」

 ニュースは次々と専課学校、各校の対応を伝えている。

「おぉ~。なんか凄い事になってきたねぇ」

「そうかなぁ? でもさ、相変わらず基底学部は休校になんない~」

「それはそうね。物理、化学、数学などは、概ね産業などの基礎になる学問よね。当然、事態に対応するには、基礎の学問も必要になってくる……。楓、聞いているのかしら?」

「……あ、うん。でもさぁ、応用の方が幅広いし、重要だと思うけどなぁ」

「楓ってば、さぼりたいだけだよね」

「聖美、なんて事言うかなぁ」

「……楓?」

「あに?」

「顔が笑ってるよ」

 その後、楓が大あわてで言い訳したのは言うまでもない。

「続けるわよ」

「うん……」

「……いえ、簡潔に終わらせましょう。必要となると考えられる学部は講義をお休みにして、いつでも対応できるようにする、つまりは、待機する意味合いもあって休講になると言うことね。それから、楓の言った応用に類する学部は、当然として事態に対応が可能なのは明らか。加えて、工業関係は、簡易ではあっても物を製造することが可能、との視点から必要な学部に含まれるわね。これで良いかしら? 楓と聖美?」

「何であたしまで……」

「良いわね」

「……は、はい!」

 迫力に負けて返事を返す聖美は、蛇に睨まれたカエル、と言ったところか。

「明子ぉ。それは?」

「どれ?」

「これこれ」

 薫の話に飽きたのか、楓はいつの間にか検索に戻っている始末である。

「楓?」

「ん? あに?」

「何をやっているのかしら?」

「え? 何って、検索じゃん。もう、薫ってば」

「はぁ……。あなたって人は……」

 そんな遣り取りをしている楓達は、再び講義棟の二階にあるコンパートメントに戻っていた。未だに錯綜している情報から、何か得られないかと検索を続けていたのである。しかし、膨大とも言える情報の中から有用な情報を探すのは、相当に骨の折れることではある。そうは言っても、これほどの事態である、情報が欲しいと思うのは当然と言えた。

 楓達が検索と痴話話をしていると「よっ。本藤さん。何か情報は?」開け放たれたコンパートメントの入り口から声がかかる。

「あら。今のところは、これと言った情報は無いわね」

「本藤さんでもだめか……」

「何を言っているのかしら? 私もあなた方と一緒よ」

「あっ……すまん。本藤さんなら何かこう……」

「はぁ……。よろしいかしら? いくら私でも、正確な情報がなければ答えは出ません」

「……そ、そうだね。邪魔したね。何かあったらよろしく!」

──なんて事かしら。全く気がつかない、いえ、気が回らなかったなんて……。検索しているのが私たち以外にも出てくるのは当然ね。……私もある意味、パニックになっていたと言う事かしらね……。

 声を掛けられて初めて周囲に気を回す余裕が生まれた薫が、コンパートメントの外を見ると……。

「あら。随分凄いことになっているわね」

「あにが?」

「外を見てご覧なさい」

「……おぉ! すんごいことになってるぅ」

 一人用のコンパートメントは元々スペースがないため、さほど生徒が群がってはいない。しかし、複数人用のコンパートメントには、生徒達が群がっているところもあった。

「そこじゃないよ」

「えっ? どこよ」

「いい、もう一回言うよ……」

 等と、携帯端末で検索している生徒がいた。どうやらコンパートメントを取り損ね、それならと、自分たちで調べ始めたのであろう生徒達がそこかしこに見受けられる。

「……そう言えば、何でここは群がってない?」

「藤本先輩。それはですね。」

 直ぐ隣のコンパートメントに群がっている外側にいた女生徒が、振り向きざまに声を掛けてきたのである。

「そ、その声は……」

「本藤先輩が、そこに、い・る・か・ら、ですよ」

「美也ちゃん……。まぁ、分からないではない。……けど、薫には聞かせたくないね」

「……そうね。私は偉人でも何でもないのだけれど」

「うわぁ! びっくりしたぁ。背後からいきなり話さないでよぉ」

「あら、ごめんなさい」

「あ。本藤先輩」

 ハートマークでも付きそうな眼差しを薫に向ける、美也と呼ばれた女生徒であった。

「そう言えば美也ちゃん。こっちに加わればいいのに」

「邪魔したくないですから」

「美也ちゃん。そんな必要はないのだけれど?」

「良いんです。まだ若輩者ですから、皆さんで解決して下さい」

 顔を見合わせる薫と楓は、苦笑いをしていた。

──いろんな意味で、絶対勘違いしているよ。この子は……。

「はぁ~」

 楓は疲れたのか、あるいは諸々のことになのか、ため息をついていた。

「薫。外のことはほっといてもいいでしょ。それよりこっちじゃない?」

 助け船とは言えないが、中から明子の声が聞こえてくる。

「……そ、そだね。薫は中に入ってた方が良いかも」

「……何か釈然としないけれど、そのようね」


     *


「だぁ。何で、こんなぶれまくってる動画しかないの!」

「仕方がないわね、所詮は素人ですものね」

「う~ん。これなんかどう?」

「これ? だめねぇ、遠すぎる」

「……あぁ」

 楓達はもちろんのこと、全生徒が検索を続けている。しかし、これと言った情報は未だに見つけられていないようである。更には、ここ数時間のニュースや報道による情報ですら、事態が錯綜していることを物語るに至っており、未だに正確な情報は無いままである。

「最新のニュースをお伝えします。

 世界各国で発生したパニックは、次第に治まりつつあるとの情報が入ってきました。次いで、日本国内についてですが、こちらも次第に治まってきている模様です。……それではARCCの取り纏めた、日本国内における状況です。上空の物体による死傷者についてですが、現時点では入っていないとのことです。一方、誘発されたパニックによる移動の際に、怪我人が出ているとの情報があります……」

「あぁ、ニュースはもういいよぉ」

「そうね」

 悲壮感。いや憔悴と言った方がよいのか。明子も楓も聖美ですら疲れ切った表情をしている。当初の頃より、検索結果に目新しい情報がなくなっていたことも要因の一つと言える。

「もう! こんなんばっかじゃ、何にも分かんない~」

「確かにそうね。地上からで個人の撮影だと、これ以上は無理かしらね。……それと、一つ気になることもあるわね」

「そうよね」

「へっ?」

「へぇ~。楓は分かんないのぉ」

「む。聖美だって分かってないくせに」

「あんですって!」

 苛立ちからであろう言い合いが始まるや否や、ため息をついた薫が咳払いを一つすると、楓と聖美は引き攣った表情で言い合いをやめた。

「……検索する限りにおいては、どこにも声明が出た、あるいはそれに類する書き込みがないのが気になるわね」

「その類いの書き込み、見つからなかったわねぇ」

「おぉ」

「あに言ってんの、そんなの埋もれて見逃してるだけだよ」

「そうかしら?」

「聖美ぃ……。この学校だけで、どれだけの生徒が検索していると思うのよ」

「……あっ。そっか。確かに」

「でもでも」

「……そう。今のところ誰一人、反応を見せていないわね」

「もっと言えば、ニュースの方が早いかもしれないけれどね」

「そうね。……一般論として言えば、誰かが利用してもおかしくない筈よ」

「あ、な~る」

「でもでも」

「そう、逆もまた真と言うことね。これだけの事象をどうやれば起こせるのかしらね。そう言った類の物を誰かが利用したとして、嘘、と思われる、いえ、信じる人はいないでしょう。だから、利用しようと思うことすらない、それほどの事象であると言うこと」

「そこまで人の心理を読んでいる、と言うことね」

「……心理って。明子ぉ、考え過ぎじゃない?」

「もしかしたら、そうなのかもしれない……。だけれど、まだ分かっていないこと、いえ、分かっていることなんて殆どないのだから、いろいろと可能性を考えてしまうのは仕方のないこと」

「う~。なんか難しくなってきたぁ。……でも、結局、誰が、何で?」

「それを知るために、調べているのではないのかしら?」

「……そ、そうなんだけど……」

「臨時ニュースをお伝えします」

「まぁただ。どうせ、ろくでもない……」

 聖美がボリュームを絞り始めると……、「地球連合による、連合軍の出動要請に関する続報です……」

「ボリュームを上げて」

「あ、うん」

「我が国でも、所属の航空部隊が出動した、との情報が入りました。目的は、上空にある物体の調査とのことですが、戦闘機も含まれているとの情報があります」

 “出動要請”というフレーズに聞き入る楓達。いや、他のブースでも固唾をのんだことに違いない。ある意味、緊急事態と捕らえて差し支えないであろうからである。

「……何でそうなる?」

「……いや、戦闘機はないだろう」

「建造物の正体が分からないんだから……」

 コンパートメントの外、検索に直接参加出来ていない生徒達の声が、そこかしこから聞こえてくる。それが次第に口論へと発展しているところも出ているようである。

 一体、どうなってしまうのか……。

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