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エンドレス・キャンパス  作者: 木眞井啓明
第一部 息吹  第三章 憂い
11/65

登場人物)

 人影達

  性格、容姿は分からない。

  只、介入した人影と、元々いた人影は、口調から性格が違うようであること、介入した人影とは、生活の場を異にしている節がある。


舞台)

 不確定な場所

  人影がいる場所。

  特定の場所を示す有益な情報はない。

  何れにしろ、地球上であることは、間違いないと思われる。


 淡い光が移り行く。薄暗く、判然としない場所。その淡い光の中に浮かび上がる人影があった……。二人ほどが対峙していると思われるのが辛うじて判別できる程度であり、表情までは判別できない。

「これは……。余りにも……。余りにも行き過ぎなのでは?」

「何故……。何故、こうなるのか」

 語り合う人影。いや、思いを告げているだけにも聞こえる。何を思い、何を語ろうとしているのか。薄暗い中では、今の表情ですら伺う事は出来ない。

「もう、猶予はないのでは? 発動すべきだと考えるが」

「何故……。何故、安定しないのか……」

 発言と発言。それは、反目しているが故の発言か……。そう取ってしまいたくなる言葉。あるいは、自問しているだけなのか……。

「このままでは問題が多発する。やはり、早急に発動すべきだと考えるが?」

 切迫した状況なのか、一人の人影が同じ言葉を繰り返す。そこには、主張を聞き入れさせる意図が垣間見える。

 各々の言い分が目立つ発言には、そもそも向き合って何かを議論している会話なのか、薄暗いからと言う理由だけではなく言葉からも伺う事が出来ない。

「それは出来ん。発動のしすぎである」

「それが……。それが、宿命であるのかも知れない」

 悲しみを湛えた言葉……。宿命という言葉には重みもまた含まれているようである。その事象が、逃れられないものであると言うことであるのだから……。

「この程度なのか!」

 会話の中で、初めて露わにされた激しい感情。諦めと期待、相反する気持ちが込められた言葉……。語気が強いのは、期待が大きいからなのか……。

「……そんなことはない筈ですよ」

 遠く、それでいて近くから聞こえてくる声……。不意に現れた新たな人影は、穏やかな言い回しで話しかけているようである。

「お前は、ここに来るべきではない」

 介入者を視線で追うこともなく、その言葉からも口調からも、強い拒否の意思が感じ取れる。敵対関係にあるのか、あるいは追放の身にでもなった者であるのか……。

「何故。そんな筈がないのか?」

 拒否を無視してもう一方の人影が投げかける言葉。いや、肯定する意思表示として投げかけられたとも言える。それほどまでに興味を引く言葉であるのか。

「まだ、余地がある筈だからですよ」

「このような状態が何度あった事か……。もう、既に余地などない」

 先ほどより近付いたのか介入者の声は力強く答える。それに釣られたのか、介入の拒否を示していたにもかかわらず言葉を紡ぎ出す。それほどまでに、介入者の言葉に何かがあると言うことなのか……。

「何事も、一夜にして出来るものではないですよ。成熟が穏やかだからです」

「成熟をしているように見ない。することもないだろう」

「未だ、成熟の兆候は確かにない。見えてこない」

 訴え続ける介入者……。何かを護ろうとしているのであろうか? 一体何を……。

 それを真っ向から否定する二つの人影。それでいて、介入者を追い出す行動を取らない人影は何を考えているのか。

「目に見えなければならないのですか?」

「見えなければ、次はない」

 問いに対して発する見放した言葉……。言葉の端々から滲み出る諦め……。もう、長いこと感じていたと言いたいのか、いや、確信してさえいるように見受けられる。

「本当に、見えなければ何も始まらないのですか?」

 介入者は、質問者になっていた。何かを諭しているのか……。いや、質問に対しての答えが、単に質問になっているだけなのかも知れない……。

 返す言葉がないのか、答える要素がないのか。答えない人影達……。

「自身を捨て去ってでも、皆を護りたかった……。未来を紡ぎたかった……」

 ふと、口をついて出たのか。一人の人影が反芻するかのように、思い出したかのように呟く。その呟きは、その場にいる全員に染み込んで行く……。

「何の話か?」

「繋がった未来……。紡ぎ直したした未来……。まだこれからなのかも知れない」

 明らかに質問ではない。何かを思い出し紡いでいるだけのようである。まるで、何かに取り憑かれたかのように……。だからなのか、何かを思い出しているからなのか、もう一人の人影からは返答がない。介入者もまた次の言葉を紡ぎ出さない。

「今は、悩みの時……。そう、悩みの時。己で答えを見つけるまで悩まなければいけない」

「そうなのか。悩みが不安定を生むのか?」

 紡ぎ出され続ける言葉……。心の奥底に眠っていた言葉に、気が付き紡ぎ出されたかのように……。

「どうやらそのようです」

「……ならば、もうしばらくはこのままでいることにする」

 そう結論を出す人影。その言葉に介入者も納得したのか、その場から去って行く……。

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